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はるか彼方の中国内陸部から黄砂に乗って空を飛び、日本海をも越えて日本にやって来る様々な微生物が発見されているという。その中には納豆菌すら混じっており、能登半島上空三千メートルで採取された納豆菌に近似した菌を使い「そらなっとう」として商品化され金沢で売りだし中だそうだ。
納豆と言えば日本の伝統食。藁に繁殖する菌が大豆を発酵させできるのが納豆で、納豆製造にはそうした納豆菌を大事にしていると言うのが一般的な理解。それがあろうことか納豆菌は中国の奥地、タクラマカン砂漠から舞い上がった黄砂に乗ってはるばると数千キロも離れた日本にやってきているのか?そんな空飛ぶ納豆菌の謎に迫り納豆の起源は日本ではなく中国にあるのか?という話を想像していたら期待は大外れ。わずかに本書の最後の部分で触れられているだけであった。
本書は黄砂が日本に降ることは判っていたがそれが何処まで拡散しているのかという研究に端を発し、空中のホコリ=エアロゾルの拡散そしてそれへの微生物の付着という事等を調べている金沢大学教授の本である。微生物すらがエアロゾルに付着して上空の気流に乗って地球規模で拡散しているというのは比較的新しい発見だそうで、残念ながら納豆の起源に迫る研究はまだまだ先のようだ。
題名がなかなか目を引くのでついつい魅かれて買ってしまったが納豆研究本ではない。念のため。
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中国奥地のタクラマカン砂漠は東側だけが口を開けており風が吹き込むと上空に向けて砂を巻き上げる。他にもゴビ砂漠や黄土高原などからも砂が飛ぶ、これが黄砂だが一般的なイメージと違い黄砂は常に吹いている。タクマラカンの黄砂は地上6Km付近を遥か遠く太平洋を越え例えばグリーンランドまで飛び、地上2Kmの黄砂は主に黄土高原からのものだそうだ。春にくるのはゴビ砂漠の黄砂で地表付近を飛んでいる。
黄砂は表面にいろんな物をくっつけて運ぶ。例えば酸性雨の原因となる硫黄酸化物や窒素酸化物などで敦煌上空に比べると日本上空の黄砂は明らかに硫黄濃度が高い、意外な副作用は黄砂のおかげで酸性雨の酸性度が思ったより低くなるらしい。黄砂の主成分は鉄でこれが海に落ちると重要なミネラル源となり植物性プランクトンを育てる。黄砂にくっついた窒素酸化物もプランクトンの餌となる。また化学ではある意味常識だが表面や界面はいろんな反応の場となる。黄砂表面で窒素酸化物と化石燃料の燃えかすが反応して発がん性物質ができるという紹介が有ったがこれはニトロベンゼンのような化合物ができるのだろう。
題名には関係ないオゾンホールの発生の話が興味深い、フロンなどは対流によって成層圏まで運ばれすぐにオゾンと反応するかと思っていたらそうではないらしい。まずフロンが紫外線で分解され塩素ラジカルができると最初に窒素酸化物(NOXこれもよく出る悪役だが)に取り込まれる。この時点では不活性物質となりオゾンとは反応しない。南極の冬は非常に寒く水蒸気や硝酸(NOXからできる)が凍り極成層圏雲という雲が発生する。この雲は小さな氷が集まってできた物でその表面には硝酸が凍ったために一度取り込まれた塩素がはじき出されて溜まってくる。そして春先になると雲が消え塩素はガスとして漂い分解してオゾンと反応して破壊しオゾンホールが形成される。南極に比べ暖かい北極圏ではこの雲の発生が長続きしないため、取り込まれた塩素はそのままでオゾンホールは発生しないそうだ。へーっ。
そして空飛ぶ納豆菌、黄砂は窒素酸化物以外に菌なども運ぶ。タクマラカン砂漠の黄砂からも納豆菌が見つかり、金沢大学ではいろんな場所から採取した納豆菌でメーカーと協力して納豆を作り市販を始めるらしい。黄砂に菌がついて飛んでくると聞くと心配になるかもしれないが能登上空3000mのそら納豆は評判がいいらしい。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1600G_W2A810C1CR0000/
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黄砂や微生物や菌など、大気の中に存在する浮遊する粒子をエアロゾルというらしい。
それらは地上を這うのみならず、成層圏にまで達しジェット気流に乗って世界を飛び回っているそうな。
大半は何をしているんだかわからないけれど、中には環境や健康に悪影響を及ぼしたり、逆に大気汚染を緩和したりするものもある。
漠然と抱いていたイメージよりずっと空気は有機的でアクティブだ。
酸素や窒素だけでなく、多様な「その他」があって空気らしい空気が作られている。
「海は生命のスープ」ってのを連想した。
学校で教わる「空気」からくるイメージが妙に無機的でクリーンで、それに慣れた身は浮遊するものどもを過剰に恐れてしまう。
その辺も、水道から出てくる清い水しか飲めない、海やプールや風呂に顔をつけるのもためらってしまう感覚と近いかもしれない。
黄砂は空に浮かぶ大地のかけら。(ロマンチックな表現だ)
ひとつひとつは小さいけれど表面積を合計すると陸地くらいになる。
黄砂の表面には微生物がくっついていることもある。紫外線よけにも餌にもなる便利な乗り物。
それでも高度上空の条件は過酷だから、軽くて強い微生物だけが生きて空を渡れる。
先端の研究はどんどん細分化していくし進化するから、興味のある人には当然のことも知らない人は驚くほど知らない。
私は知らない側だから単純に楽しい。このシリーズは知ることは面白いと思わせてくれる。
そのものの知識もさることながら研究風景や思い出話も面白い。
たまに横の方にある用語解説(?)は、たとえば「砂塵の長距離輸送」について(p51)なのに「長距離輸送っていうとバスやトラックを浮かべるよね」みたいなどうでもいいことが書いてある。
いやそれ関係ないだろって思うんだけど、こういう関係ないことも大事にできるから研究向きなんだろうな。
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黄砂、細菌がくっつくのに適した?
黄砂、化学成分、海に栄養、他の大陸へ物質運ぶ。
黄砂の表面積は、地球表面の10から20%に相当。
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エアロバイオゾルという言葉を初めて知って、研究をするということは何をすることなのかの片鱗を覗きみれたかな。
タイトルの割に納豆ネタが少なくて残念。笑