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紙の本
柳生忍群と風魔一族のバトルアクション理屈抜きの面白さ
2002/10/11 14:47
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投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
私が小学生のころの戦国時代の英雄といえば豊臣秀吉と真田幸村であった。身近にころがっていた講談本や漫画によって焼きついた記憶だ。信長ですら秀吉を語るための脇役にしか過ぎず、まして家康は秀吉の努力の成果を掠め取った「タヌキオヤジ」であり悪い人であった。真田幸村はすなわち真田十勇士であり、その家康をさんざん苦しめる一騎当千のコンバットチーム、奇想天外なバトルアクションで少年の血をわかせたものだ。
この図式を一転させたのが今から30年も前になるのか、山岡荘八の『徳川家康』だったのだろう。吉川英治の『新書太閤記』は読んだが、これには手が出なかった。戦後の混乱期から日本の再出発は、家康を手本にすべしとばかりに、山岡家康は政治家、大企業の経営者の座右の書としてもてはやされた。当時、ホヤホヤ社会人としてはそういう傾向の書は敬遠し、少なくとも楽しい小説とは思えなかったからである。山岡家康の精神は「元和偃武」にあるのだそうだ。家康の生涯における権謀術数は元和元年大阪夏の陣を最後に太平の世を築くためであったとする歴史観である。
文芸春秋で北上次郎が「平成の時代小説ベスト35」の冒頭に隆慶一郎を紹介していた。読んでみたいと思っていたところである。
『影武者徳川家康』は関が原の戦いで武田忍者の生き残りに暗殺された家康に替わって、影武者であった世良田二郎三郎という「漂泊の自由民」がそのまま、秀忠と15年にわたる暗闘を繰り広げながら、太平の世、民の自由のユートピア実現、結果として「元和偃武」をめざし邁進する破天荒な虚構世界を描いて圧巻である。脇役の魅力的な人物造形に加え、家康の周辺にある数々のエピソードを巧みにちりばめ、大長編ながら飽きることがない。
さらに、これはまちがいなく冒険小説である。秀忠配下の柳生忍群対二郎三郎を信奉する風魔一族との趣向を凝らした壮絶な戦いの場面だけでも充分に読み応えがある。
紙の本
奇想
2002/04/21 08:15
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投稿者:真 - この投稿者のレビュー一覧を見る
天下分け目の関ヶ原。西軍の島左近が放った忍者・六郎が、家康を仕留めた。徳川家康は暗殺されていた……!? いまここで家康の死がバレると東軍に勝ち目はない。そう判断した東軍の代表者たちは、家康の影武者だったはずの世良田二郎三郎を、家康本人に仕立て上げた。見事な采配で家康本人に成りすまし、東軍を勝利に導く世良田二郎三郎だったが、それは以後十数年もつづく暗闘のはじまりにすぎなかった……
もちろんこの「徳川家康暗殺」というのは作者の創造。この「奇想」ともいうべきアイディアで、上・中・下巻あわせて1500ページにも及ぶ大長編を仕上げている。
事実と虚構が巧みに入り混じった話となっていて、歴史の知識のない人間(俺のような)にとっては、どこまでがホントなのかわからない。秀忠がモロ悪役になっているのは、作者の創造だってわかるけど、それ以外の部分はうっかり騙されそうなほど巧みにウソをついている。この「ウソ」で本書「影武者徳川家康」の物語は構築されていく。まだ上巻だが、わくわくさせる展開の目白押し。