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一般よりも一足先に『終戦』を知ってしまった青年たちの物語。特種情報部で通信兵として訓練を受けていた主人公たちは、敗戦とともに所属していた部隊が解散となり、それぞれ郷里への帰路につく。そこで目にし、感じた世界とは…。著者の叔父の体験記を基に小説化されたようで、従来の戦争ものとは一線を画すような空気感が不思議で、淡々とした主人公たちの姿が、逆にリアルな「あのとき」を伝えているような気もする
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軍人でありながら、前線とは程遠く、どこかのどかさすら感じる主人公。
しかし、それも戦争の切り取られた日常のひとつ。
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約2時間ほどでさらっと読んでしまえる程の簡明な文章だが、しっかりと心に残るもののある作品。玉音放送が鳴っている時、とっくに敗戦を知り、何も残らぬ故郷広島へ行く青年の姿はただただ空虚な様に感じられる。しかし彼は、終戦を迎えることでようやく「銃を撃たない兵士」という身分から解放され、自分を縛る家族と別れ、地に足を着けられた心地がしたのではないだろうか?
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日本が降伏したことを世間より早く知った情報兵の話。
すべてが淡々と進んでいく。実話をもとにした内容。
あとがきが印象的でした。
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<渦中にいなかった者として生きていくということ>
「その日」とは玉音放送があるはずの日である。
すべての国民が終戦を玉音放送で知ったのではない。立場によってそれより早く、知り得る者もいた。
その日の数日前、通信隊に属していた主人公は、敗戦の事実を知らされる。そして、任務の性質上、軍隊手帳をはじめとするすべてを焼却処分して、隊を離れて帰郷するよう命じられる。
彼の故郷は広島。新型爆弾によって壊滅状態となったことを彼は伝え聞いていた。
その日、8月15日、東京駅を早朝に発車する列車に彼は乗る。故郷を目指して。
彼はまだ訓練中だった。戦地で戦ったわけでもないし、敵の暗号を傍受して手柄を立てたわけでもない。
身の回りに起こっていながら、どこか余所事のように戦争は始まり、そして終わった。
兵役に取られるまで、そしてその後の回想を挟みながら、列車は進む。
不幸にして、蜘蛛の巣に掛かったのである。
中央に掛かったものは、惨劇に見舞われる。端に掛かったものは、惨劇の一部始終を見つめつつ、巣の震えを身に刻む。
もがいた末、辛くもそこから逃れた後も、傷ついた羽と、自分の悲劇ではない悲劇を身のうちに抱えつつ、その後を生きる。
渦中にいた痛みに決して敵うことはないけれど、それでも痛みとともに生きていく。
これはそういう物語なのかもしれない。
彼の乗った列車は、廃墟と化した故郷に到着する。
彼は瓦礫を踏んで歩き出す。
残された者はそうして生き続けていくしかない。
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西川美和さんの本はいつも行間に熱い何かを秘めているので、読みやすいばかりでなく心に長く残るものが多いのです。これもそうですね。
第二次世界大戦の終息を淡々と一兵卒の視線で。
奇しくも大震災と重なってのご執筆ということで付されたあとがきにも感銘を受けました。
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著者の伯父の戦争体験を小説にしたもの。
全体的にふわふわした感じは、著者の小説の特徴か。
映画監督としての「西川美和」は一流だが、小説はどうかな。
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とてもよかったのだけど、よすぎて感想が書けない・・。
また落ち着いたら書くことにします。
西川美和さん、映画監督としても、小説家としても、なんという人なんだろう!
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中江有里さんの本で知って、借りてみたこの本。
読み終わって登録しようとしたら、すでに「読みたい」本として登録されていた。
過去の私よ、いつの間に!
戦争の話ですが、あまり悲惨さを感じません。
でも確かにあの時代、こんな風に時を過ごした人もいるんだろうなあと思いました。
限りなく運のいい人なんだと思うけど。
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読みやすいんだけど、じっくりゆっくり読まないともったいない。
あとがきも含めて素晴らしかったです。
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そうか、表紙はモールス信号か。なんと打っているのだろう?
「オホサカ ヨイトコ イチドハ オイデ」だと合わない。
→濁音が二つあるのでその通りだ。
小説を完結した作品ととらえると、あとがきは蛇足のように思う。
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タイトルの「その日」とは、昭和20年(1945)8月15日のこと。通信隊に所属していた「ぼく」は、玉音放送が出る前にいち早く敗戦を告げられ、隊は解散し、すべての証拠を焼き尽くして、故郷広島へ帰るために列車に乗っていた。
著者の伯父の手記が元となっている。
通信兵として東京で訓練を受けていた19歳の少年からみた戦争。故郷・広島に新型爆弾が落とされたということも、どうやら戦争が終わったらしいことも、すべて現実味がなく、当事者意識を持てないでいる。
ただ何か、とてつもなく恐ろしいことが、自分の遠くで起こっているという感覚。
訓練していても、切迫感のないことが、焦りにつながる。
そうした心情がとてもリアルに伝わり、共感できた。
短かい作品だが心に強い余韻を残す。
あとがきも含めて、一つの作品という気がする。
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私にはだめでした。
読みとれなかっただけかもしれないけれど、「鬼気迫る」ものも「入魂」も分からなかった。
あとがきからも、何も見えなかった。
しばらくしてから再読すれば何か違うのかな。
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終戦をいち早く知らされ故郷へ帰る通信兵の話。
途中ファンタジー寄りなのかと思ったがさにあらず
終始淡々とした展開&ラスト。
でも現実ってこんなものかも。
とあとがきを読んだら
著者の叔父の体験記を基にしたらしい。
【図書館・初読・9/26読了】
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所謂「マッチョ」ではない自分にとっては勇気付けられるような一冊。「弱者が弱者として生きる」ことを描いた小説、なんてことが斎藤美奈子女史の書評に書いてあったが、それがこの本を手にとったきっかけ。戦争というとどこかセンセーショナルな書き方が(良くも悪くも)されがちだけど、終始淡々としたような主人公の心情は逆にリアル。そんなリアルな戦争を生き抜いた主人公にささやかな希望が見えるような終わり方はとても気持ちがいい。