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女の背中に彫られた蜘蛛。
what does it signify?
小説に戦慄を覚えたのは初めてだった。
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もっと早くから読んでれば良かった。
直接的な表現なしにここまで官能的なのは何故だろう…文才に圧倒される!
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ノスタルジックなSMの世界。
露骨な描写はないものの、
読み手の想像力を引き出す文体は、
美しいエロスそのもの。
倒錯の世界は、
本当は誰しもが持っているのかもしれない。
気付かずに一生を終えるか、
気付いて楽しむかは、
自分次第なのだと思った。
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谷崎さんのフェティシズムを
湿度の高い日本語で開放しているような印象。
女体に陶酔して
常に被虐を期待している感じが好き。
「鍵」が読んでみたいです。
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これは純文学小説より、大衆との境だと考える。谷崎氏は理解しつらいキャラなので、異端だと思えば思うほど窺いたくてつい全部目通した。不思議の速さで自分もビックリ。好奇心は一瞬奪われ、読んでる途中精神が吸い込まれ、もはややめようとしてもやめられない状況の中で読み終わった。そしてはっとして、異端の世界がら脱出して、紫霧のように散らかってる後ろを見てうとうとし、意識に戻ったら泣くか笑うか自分は到底どうしょうもない感じでした。まさに地獄天国の混同、谷崎氏の一番魅力的なところであろう。
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メモ:新選名著復刻全集近代文学館刺青籾山書店版(ほるぷ/S55)
刺青/麒麟/少年/幇間/秘密/象/信西
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やはり谷崎はSM小説、いびつな恋愛、性小説を書かせたら天才だと思う。
その意味で、やや長い自叙伝「異端者の悲しみ」などにはそれらが現れていず、ちょっと退屈を感じてしまった。しかし、それ以外の作品は、上記のようなものが様々な形でちりばめられていて、色々な側面から楽しめたような気がする。
刺青は言葉に書かれていない範囲で想像させる作品だと思う。美女の背中に張り付いた女郎蜘蛛が、美女の動きとともに顫動運動する様子を想像したら、強烈なインパクトを感じられた。
谷崎の新潮文庫の本はさほど数が多くないので、谷崎はぜひコンプリートしたい作家の一人である。
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刺青の冒頭は、
>それはまだ人々が「愚」と云う貴い徳を持って居て、世の中が今のように激しき軋み合わない時分であった。
というようにはじまるが、ここにおける「愚」とは、その直後の文章にある
>当時の芝居でも草双紙でも、すべて美しい者は強者であり醜い者は弱者であった。
という文章に代表されるある種の素朴な価値観であろう。それに対して、この小説が書かれた時分にはある種の価値観の逆転や崩壊が起こっていたのだと考えられる。
しかしながら、谷崎はこの一種受け入れがたい価値観を基盤として小説世界を展開させていく。清吉という刺青師は、「光輝ある美女の肌を得て、それへ己れの魂を刺り込む」という「宿願」を持っており、それは小説世界の中で叶えられることとなる。
ある夏の夕べ、清吉が見つけ出した運命の女は、その後四年の歳月を経てその前に姿を現した。ここにおいて清吉が見つけ「られた」女が自ら「やってくる」ことはこの後に逆転する二人の関係性を暗示しているといえよう。
また、刺青を彫る前に行われるプロセス―絵をみせること―はその女の中にある魔性を目覚めさせ、確かめさせる(確かめる)ためのある種の儀式であると思われる。その道具として楊貴妃という絶世の美女であり且つ権力を握っていた女性をアイコンとしたことは象徴的だ。
清吉は女を眠らせ、その背中に蜘蛛をモチーフとした入れ墨を彫っていく。その刺青が彫りあがると、女は目を覚まし、その態度は来たときのおとなしい様子とはうってかわって、高圧的とさえいえるものとなる。このような外面が内面を規定するといった思想は美とは強であり強とは美であるといったような、表裏一体性を示すかのようだ。女は
>美しくさえなるのなら、どんなにでも辛抱してみせましょうよ
という科白を発しているが、この世界において美しくさえなれるのなら、ということはすなわち強くさえなれるのなら、という意味を持つと考えられる。また、刺青を完成させるために多大な痛みを伴うのは、美を得るためにはなんらかの代償が必要であるという価値観を提示するものであろう。また、そのうちには刺青師である清吉も含まれていることは、女が
>お前さんは真先に私の肥料になったんだねえ。
と述べていることからも自明である。ここには彫るものと彫られるものとの主従の逆転が見られ、それは「美とはすなわち強者である」という価値観に基づいたものであろう。また、清吉が蜘蛛というモチーフを選んだのは、それが女の背中に属するものでありながら、他者をそこに引き込むという二重の意味を持つからだと考えられる。
このような主従の逆転は秘密においても見られる。
秘密における「私」は「或る気紛れな考」から新しい環境へと身を投げ出す。この「考」はおそらく日常に厭いたことから生まれたのであろう。「派手な贅沢なそうして平凡な東京」
という表現にも表れているように。
そして「私」は女装をして夜の街へ出かけるようになる。女装をすることによって主人公は、秘密を手に入れたといえる。それは、見つかってしまったら秘密ではなくなるという留保つきのものではあったものの、装いを変えることによって、自分の内実までもが変わったかのように扱われるという異化のはたらきをした。このように表象が実質を規定するというのは、刺青においても見られ、谷崎文学の重要なテーマなのだと考えられる。
しかしながら、それがある女によって見破られてしまう。その女というのは、昔「私」が捨てた女であった。女は私以上に「美しい」、そして「女らしい」姿でわたしの前に姿を見せ、そのことによって「私」の取り繕った表象は惨めったらしいものへと変わってしまった。また、それは女が「私」の正体を見破ったことで決定的なものとなる。秘密は破られたのだ。
しかし話はここで終わらず、次のゲームが始まる。女は「私」の正体を知った上で、自分の素性は隠したまま会おうと持ちかけてくるのだ。主人公はその話に乗り、それから毎晩のように逢瀬を重ねることとなる。ここにおいて女が自分の素性を隠そうとすることは、秘密が破られる前に「私」がしていたことと同じ「異化」であり、それによって自分を魅力的に見せようとしたものだ。しかしながら、そこには内実が伴わない。「私」が女装をしても中身は男性のままであったのと同じように、女には生活があるからだ。その上で、女がそのような振る舞いに及んだのは、「私」の気をひくためで、その点が「私」のした異化とは決定的に異なっている。「私」は「私」のためだけに女装をしたのに対し、女は「私」のために素性を隠したのだ。「私」が女の素性を暴こうとしたのは、「私」が女装を見破られたことに対する意趣返しのようにもとれるが、おそらくそれだけではなく、「私」と女の関係に横たわる「秘密」を暴くことで、それを乗り越えようとしたのだと考えられる。ここにおいて「私」と外界とをつなぐパイプのような役割をしているのだろう。
授業内で秘密についてコメントをした際には、自分探しという単語を使ったが、主人公はまさに自分探しの真っただ中にあり、その手段として、日常と非日常の境目を曖昧にする―異化する―ことをしているのだろう。それは自己を異化すること(女装すること)によって、自身の内部と向き合うことにはじまり、女との関係を異化することによって外部と向き合うことによって完結される。関係性のうちに隠された「秘密」を暴くことは、おそらく「本当の自分」を見出すことであり、異化を否定し、乗り越えることである。最終的に主人公は、女の素性を知り、女を捨てるが、これは当然の帰結であるといえるだろう。
秘密における主従の逆転は刺青の場合とは異なり、単純なヒエラルキーの変化に基づくものではない。ここにおける主従の逆転は、秘密を暴かれる側が暴く側に回ることであり、その結果として、
>私の心はだんだん「秘密」などという手ぬるい淡い快感に満足しなくなって、もッと色彩の濃い、血だらけな歓楽を求めるように傾いて行った。
のである。
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■刺青■
若い刺青師の霊は墨汁の中に溶けて、皮膚に滲んだ。焼酎に交ぜて刺り込む琉球朱の一滴々々は、彼の命のしたたりであった。彼は其処に我が魂の色を見た。
■少年■
さあ今度は私の番だ。私は真っ蒼になって樽へしっかり摑まって見たが、激しい狼の剣幕に気後れがして、「ああもうとても助からない」と観念の眼を閉ずる間もなく引きずり落され、土間へ仰向きに転げたかと思うと、信一は疾風のように私の首ッたまへのしかかって喉笛を喰い切った。「さあもう二人共死骸になったんだからどんな事をされても動いちゃいけないよ。これから骨までしゃぶってやるぞ」 8/17 22:00
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「細雪」の印象が強かったので、
同じ人が書いたのか、最後まで首をかしげながら読んだ。
言葉や文字は、ここまで繊細に使えるということを
改めて思い知らされた。
私が思っていた文学なんか、文学のすみっこ、はじっこの
ほんの一握りなんだ、と。
狂気に満ちた美しい言葉、
それによって描かれた繊細な一瞬の心の動き。
日本語が読めてよかった、としみじみ。
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●刺青●
すべて美しい者は強者であり、醜い者は弱者であった。誰も彼も挙って美しからんと努めた揚句は、天稟の体へ絵の具を注ぎ込む迄になった。
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まさかの三部作(?)の映像化になるとは到底予想だにしないほどの短編ですが!でもこのくらい短いほうがすごくきれいに終わるね~~。
「少年」がこわすぎる人間こわい。でもすきです。谷崎天才。「二人の稚児」もすきです。
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「刺青」「少年」「幇間」「ヒミツ」「異端者の悲しみ」「二人の稚児」「母を恋いうる記」収録。
「刺青」がとても有名で印象的だけれど、「少年」もそれ以上に凄くて、衝撃的でした。
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刺青は谷崎さんの代表作としてよく挙げられる作品。
文章やその情景が美しく、女性に対するフェチズムが非常に見受けられて、読んでて共感を覚える人も多いのでは。
個人的には「秘密」を何度か読み直したと思います。女装もそうだけど、性癖が多いお人だ。谷崎さん。
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谷崎文学の初期の作品7編。
どの作品にも共通している、耽美的でマゾヒスティックな傾向。
しかし、S的・M的と烙印を押してしまう前に、作品の「品格」や文学的な水準の高さを堪能できる短編集。
100年近く前に書かれたのにまったく古臭さを感じない。
特に読後感に鮮やかな美しさが残像として残る『刺青』。
求めていた美しい娘の肌に、刺青を施す時の清吉の抑制された興奮と快楽。
谷崎ワールドの原点といえる作品が散りばめられている。
過去に読了。レビューのため再読。