紙の本
人生を見直す旅
2024/01/10 20:11
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投稿者:DB - この投稿者のレビュー一覧を見る
原田マハといえば美術系の話を書く人というイメージでしたが、この短編集では「旅」をテーマに語られていく。
共通するのはもうすぐ不惑の年を前に、旅先でこれまでのキャリアや人生を振り返り明日へ向かっていく女性の姿を描いているところだ。
表題作の「さいはての彼女」は、沖縄の高級リゾートでリフレッシュする予定だった女社長がなぜか女満別空港へ降り立った。
さらに予約されていたレンタカーはいつものBMWではなくて傷だらけのポンコツ車。
優雅なリゾートが吹っ飛んだ腹いせに車に八つ当たりをしていると、そこへ通りかかった女性ライダーに声をかけられる。
ナギという名前の女性が乗るのはハーレー・ダビッドソン、「サイハテ」という銘をつけられたルビー色のバイクだ。
ナギに誘われるままにタンデムでツーリングし、網走の回転寿司で満腹になるまで寿司を食べ、海に沈む夕日を見て知床から羅臼へ。
温泉やカフェによる度にナギのバイク仲間が笑顔で声をかけてくれる旅を経て、女社長は何を感じたのだろうか。
ハーレーは無理だがアメリカンで北の大地を爆走してみたくなった。
母親の急病でいつもの旅友達が急遽来れなくなりひとり旅になってしまった女性の話も出てきます。
大企業でバリキャリだったはずがふとしたきっかけから転落してしまった主人公です。
就活中の時に「旅に出よう」と声をかけてきた友人との過去を振り返りながらの旅行だが、高級宿でも自分が自分であるために胸を張る姿は大人の貫禄だった。
同じく仕事で躓き一カ月の有休をとって釧路にやってきた女性も、旅先で振り返るのは自分の人生だった。
タンチョウヅルを見ているうちに雪に埋まって雪ダルマになりかけるというエピソードは笑っていいものかわからないが、タンチョウヅルの求愛行動が見れる二月は観光のハイシーズンだそうです。
行ってみたい気もするが雪が五センチ積もると交通機関が麻痺する土地に生まれ育っているだけに雪国の旅は気を付けたい。
最後の「風を止めないで」は、最初に登場するナギが北海道をツーリングしている間に甲府で留守番しているナギの母の話だった。
広告代理店に勤める男がナギを訪ねてきて、ナギをハーレーのキャンペーンガールにしたいという話を持ち込んできた。
ナギの母は初めて会う男に亡き夫との共通点を見てしまい心が揺れる。
どの話も人生を振り返るような時期に旅に出て何かを得るような話だった。
何も考えずに旅を楽しめるのは若いうちだけなのかと思ったりもしたが、人生を見つめ直すきっかけをくれる旅ができればいいと思う。
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4本の短編からなる「さいはての彼女」、
タイトルになっているにもなっている
「さいはての彼女」と「風を止めないで」が
特に面白かった。そこに出てくる
ナギちゃんがほんとにまっすぐで、なんか
自分ももっと素直にそして一日一日を
全力で生きようと思っちゃいました。
そこに出てくるスズカさんが言う
「最悪の事態に直面したとき、一時間後に
立ち直っている自分を想像できるか。
それができる人は一年後、十年後、
必ず成功する人です」って言葉が染みた!
ほんとに大変な事態に直面した時、その時の
自分にこの言葉を言ってあげたいです。
そのほかの「旅をあきらめた友と、
その母への手紙」で出てくるナガラの言葉、
「・・・・人生を、もっと足掻こう。」
ほんとにそう!生きているといろんなことに
直面するしいろんなものを諦めたり失ったり
するけど一度きりの人生、足掻いて足掻いて
楽しんだっていいんだって思いました。
「冬空のクレーン」に出てくる志保が、
同じことでもその中で見るものといったん
離れて外から見ることで色んなものが
見えてくる。こんなふうにいったん離れて
自分を見つめ直すっての必要ですね。
裏表紙に書いてあった
「人は何度でも立ち上がれる。」
ほんとにそう思えるいい話ばかりでした。
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現実はなかなかこんなスムーズにいかないな~と思う一方、立ち止まった背中をポンと押してくれる言葉が出てきて爽やかで前向きな気持ちになる。
各話の登場人物が何かに気づき何かを掴んでいく姿に、終始心地よい風を感じることができた。
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初・原田マハ。先日から名前をよく見かけるようになって、手を出して見ました。
いやー、気持ち良い小説でした。
4つの短編で出来ています。それぞれどこか失意を抱えた(それほど若くない)女性が主人公で、彼女たちが旅先での善良な人々との出会いを通して再生して行く物語です(最後の一篇は違いますが・・)。
登場人物達は皆心地よいのですが、何と言って最初と最後の短編に脇役として登場するハーレーダビッドソン乗りの凪という若い女の子が素晴らしい。前向きで清潔感があってひたすら心地良い。
説明的でなく、様々なしぐさや言動を通し、人物を描いて行く原田さんの上手さも見事です。
また次も読んでみようと思います。
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「挫折」は言い過ぎだろうか。
うーん、「ちょっと行き詰まった」女性たちが旅を通して再生するお話。
短編集。あ、最後はちょっと違うかな。
でも、旅はしないけど、再生という点では共通してるし、構成上必要な
ものですね。(読み始めの時は、蛇足かもと思ったんだけど)
ありきたりな設定、ありきたりな展開。
それでも、この一冊を素直に楽しむことが出来ました。
そのへんは作家さんの力ということなんでしょうか。
あまり劇的な展開はないけれど、読み終えた時にすーっと心が晴れる。
そんな一冊でした。
俺が読んでてそう思うんだから、女性が読んだら余計にそうかもね。
どれかひとつ好きなのを選ぶなら『冬空のクレーン』かな。
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私は、この手の本は苦手な方で、読むこと自体が珍しく、多分今後も好きじゃない。この本は、彼女の本だから紐解いて、すっごく面白いわけじゃないけど一気読み、読後の今、素直な気持ちで受け入れてる。これこそ、相性の成せる業。
原田マハ、好きな作家認定。
意外と再読しちゃうかも。
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風を感じたい!
なんだか そんな風に思った。
なにかに 躓いても また起きればいいんだよなぁ。。。
なんて そんなことを うっすら感じた。
でもさ 言うは易し、、、、だよね。
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出てくる女の人たち、なんか好きになっちゃうなー。
『楽園のカンヴァス』のあとに読むと、少しライトに感じたけど、じわっと後から思い出すシーンがいくつかある。
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原田マハさんの小説はいつもやさしい。
人の生き方はリセットできるのか。旅を通して人と触れ合い、普段の生活では感じなかった気持ちと感覚にふれる。旅の終わりに爽やかな風がふく心がほぐれる短編集。旅にでたくなった。
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キャリアウーマンが仕事に疲れて旅に出る。そんな短篇集。
仕事や人間関係から逃げ出した先には、彼女たちを癒す出来事が待ち受けている!
頑張る女性を応援する、力が湧く物語。
そして、女性の一人旅もいいもんだ!と思わせる!
2014.9.27
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今日ご紹介させていただくのは原田マハさんの「さいはての彼女」という一冊。
4つの短編で構成された短編集ですがどの話もとても素敵な内容です。、
鈴木涼香は六本木ヒルズに本社を構える会社の社長。
25才で起業した涼香は30代半ばの現在まで結婚を考えることもなく、
時には恋人に裏切られながらもただひたすら会社を大きくしてきた。
そんな涼香が夏休みの休暇に選んだのは沖縄だったが、
あと数日で辞める予定の秘書が手配した便に乗り込んだところ、
到着したのは北海道の女満別空港。
手配を間違ったのかわざとなのか、
場所も違えば手配していたレンタカーも軽自動車。
悔しさと怒りで道端に車を停めて荒れる涼香の前に現れたのは、
小さな身体で大きなハーレーを乗りこなす少女。
少女と出会ったことで涼香の休暇は意外な方向に向かっていく。
(「さいはての彼女」より)
このほか、働く女性が主人公となっている物語3編入っていますが、
どの物語も主人公が「私」という一人称の視点で書かれていて、
どの物語も読み終わったときに爽やかな感動を得られます。
また、どの物語も仕事や生活で疲れた女性が旅に出て、
そこで出会った人々や出来事によって心の疲れが徐々にほぐれて行くという設定。
物語が旅を中心に描かれていて風景描写も素晴らしいため、
「こんな旅が出来たら楽しいだろうな」という気分にもなるんですよ。
原田マハさんの作品には「本日は、お日柄もよく」で出会い、
「旅や、おかえり」では爽やかな感動を得させてもらいました。
女性を主人公とした作品ばかりですが、
主人公以外の登場人物もやさしさにあふれた人が多く、
そういうことも読み終わったときの爽快さにつながっているんだと思います。
この物語は頑張って働いている女性の方にこそ読んで欲しい一冊ですし、
これからは働こうという中高生にも読んで欲しい一冊です。
働くということや人生で大切なものは何なのかということなどが、
優しく温かい物語の中に込められていると思います。
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旅のお供に連れて行った本。
いろんな想いをもって、旅に出る女たちのものがたり。
日常から離れて観る景色、出会いは、
思いがけない心の動きを与えてくれる。
ふだんには、発見できないことも、
新鮮な心の目が開いて、嬉しい出会いを差し出してくれたり・・・。
一人旅は、自分とむきあう格好のチャンスだと思う。
それが、どんなに輝いていて、日常にもどったときに
自分に力を与えてくれるのか、
ワクワクとおしえてくれる、素敵な短編集だった。
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妙齢かつ、人生の落とし穴にはまったバリキャリタイプの女性たちが、一風変わった旅と出会いを通じて、力を取り戻して行く短編集。
風のような女ハーレー乗りの凪、タンチョウヅルの集まる村とタンチョウレンジャー、普段の生活では出会うこともない革命的で、気持ちのいい存在たちとの出会いで、それまでの自分のアイデンティティーをぶち壊して、清々しく身軽になって帰っていく主人公たちがいい。
どっか、とんでもないところに旅に出たくなります。
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泣ける本です。
挫折から立ち直るまでのお話だが、実にいい。
とにかく読んでみる価値のある本。
楽園のカンヴァスを読むのが楽しみになりました。
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仕事ばかりしている女性にそっと手渡したい。
肩の力が抜けて楽になれる雰囲気をもった話だった。
旅に出て、ちょっと違う日常を過ごすことって、自分をリセットするのに必要なんだろうな。
旅する時間が欲しいわ。