紙の本
不思議と読ませる力のある作品。
2015/09/03 21:55
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投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
〈供述〉のパートではストーカーがひたすら自分の論理を自己中心的に展開する、一歩まちがえば読むのも辟易する文章の羅列、〈列日〉のパートでは堅物の検事がストーカーの論を聞きながら徐々に心理的に引きずられていく内容。内容だけ見ると好みではないのだが、意外にも読まされた。それは、語り手の心理に肉薄した文章によるのだと思う。
ストーカーの鳥越には全く罪悪感がなく、どころか自分が裏切られたと憤っている。その様はわがままな子どものようで、実際鳥越は精神的に大人になれていないのだろう。にも関わらず、検事として業績を積み重ねてきた荒城はなぜかその心理に引きずられてしまう。きっかけはいくつかあるが、根本的には荒城自身にぽっかりと空いた空洞があったから。それまで気づかなかったのに、何かの拍子で空洞に気づいてしまう、気づいてしまった以上はもはやそれは無視できるものではない――という人間真理を作者は鮮やかに描いている。
うまいと思ったのは、その空洞を琥珀の中に閉じ込められている〈気泡=グリッター〉に喩えているところ。埋めようとしても埋めようとしても手の届かないものを喩えるのに適していて、なおかつ琥珀のきらめきも脳裏に浮かんで、描写として美しくも怖ろしい。
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殺人事件の被疑者と彼を担当する検察官の物語。心理サスペンスって事になってますけど、被疑者の心理描写も検察官が被疑者に影響されていく様の描写も弱すぎで物足りず、とてもサスペンスとは呼べません。
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色んなジャンルを書く作家、平山瑞穂、今回は検事物です。
2つの目線で話は進み、主人公の検事荒木倫高の不倫?物語。
鳥越昇の供述による話でつながっていきます。
ラストは若干う~~~んと感じてしまうが、やっぱり物理的な距離があるとキモチも離れるでしょう…。
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被疑者の供述と検事の物語が交互に語られる構成はなかなか面白かったけど、ちょっと湊かなえっぽい印象。
それなりに一気に読みましたが、いかんせん共感ポイントがないのでのめり込み様がないのが残念。
後味悪し。
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人ってぽっかりと穴が空いてて、その穴の深さとか、どうやったら埋まるか、とか人それぞれよねー、って友達と話してたことがある。ショッピングで80%埋まる人もいれば、30%くらいしか埋まらない人もいる。
そういうのがこの検察官と鳥越の共有できる部分だったのかなぁ。
分かるようで分からない、現実的なようで、非現実な感じがする。
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殺人犯の鳥越昇を取り調べている検事の荒城倫高.昇の自己撞着的な発言に何か共感を覚えて、しゃべらせるままにしている.倫高を取り巻く女性との関係が述べられているが、女性のお喋りのように結論がすっきりしないのがやや不満だ.
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ストーカーの心理がわかる小説!? ストーカーって\イヤだ絶対別れない!/って感情的になって話が通じないのかと思ったら、自分の中ではきちんと論理的に筋が通ってるのに相手がそれを理解してくれない…って考え方になるのね。あくまで自分の中で…であってこれ彼女にしてみたらそりゃおかしくなるよ…。長文メール攻撃とか耐えられない…。しかも彼女は彼女、妻は妻って身勝手すぎて腹が立つ!!!!男ってやつはなんて身勝手なんだ!!!!ちょっと男子!本当にこんな風に思うのか読んで感想聞かせてくれ!!でもなーだから別れても俺のこと好きだろうとか勘違いするのかなー。
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ストーカー男の独白と、それに影響されていく検事のお話が交互に出てきて、これが結構面白い。検事のイメージが読み始めと読み終わりだとだいぶ変わってしまった。すこーしずつ変わっていって、気づけばすっかり侵食されている感じ。でも、理路整然とした文章で、ストーカーの嫌らしさがあんまり出ないかなと思った。
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先日この作者の作品が気に入ったので借りてきてみたけど、うーん、いまいちおもしろくなかった。
読みながら、これはどういうラストが待ってるんだろうと興味を持ったが、ああこんな感じなのね…っていう、ちょっとがっかり感。
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初めて手に取った作家さんの本。
読んでる途中これを女性作家さんが書いたのは凄いなと感心してしまったけど、読み終えて調べたら男性でした。
やはり、男性でないと書けないような内容だなと思います。
浮気、不倫、ストーカーをし、果てに殺人まで犯してしまった被疑者の男の供述と、それを聞く検事。
被疑者の男の身勝手な考え方、偏執的な語り口による自己正当化が不愉快だけど、引き込まれるものがありました。相手の女性はもっと取るべき態度があったようにも思いますが、被疑者目線だとこうなってしまうのかな。
検事は栄転を控え、受け持ったこの被疑者の話に多少なり自分の過去を重ね、そして感化されていきます。
男性には少なからずこういった感情があるものなのだろうか。
内容が内容だけに不快感や嫌悪感を感じる人も多いかもしれませんが、女性として心理状態が興味深かったです。
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*栄転を目前にした検察官が最後に手がけた事件は、社内不倫の果ての殺人だった。故意なのか、それとも事故なのか。「検事さんにだけは本当のことを知ってもらいたい」と、恋の始まりから終わりまでをねっとり語る被告の言葉が、真面目な官吏のおだやかな毎日を少しずつむしばんでいく。思わず我が身を振り返る心理サスペンス長編*
可もなく、不可もなく。ストーカーってこうなのね、と淡々と読み進んだ感じ。題名は巧いと思った。
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容疑者と検事の重なる部分が巧妙に書かれている。人間の中にある欲望というものは立場関係なくみんなにあるものなのかもしれない。
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斬新なストーリー展開。読んでいてざわつくテーマだけど面白かった!
彼も彼女も甘いんだよ、と思うけど、その甘さ加減も一種のコミュニケーションだとは知ってる。でも本でも現実でも、やっぱ好きになれないですこういうの。
心の中の絶対に埋められない空白。
埋められないことがわかっていながら、埋めたいという衝動を常にかき立てるうつろな裂け目。
そういうものに気づいたとき、どう対処するのが正解なんだろうね。
と、ネタバレしない程度の感想を言いましたが、個人的に、すごく称賛したいところは、不倫相手となった女性のずるさをものすごく丁寧に書いてるところ!
そしてそのずるさは、不倫・浮気をした男性の言い分(言い訳ではない)を緻密に書くからこそ浮き彫りになるもので。
不義理をした人やそれに荷担した人、ついでにストーカーしそうになったことある人にぜひ読んでほしい。これを読んで、そういう人たちの気持ちがわかった気がした。わかっていいことではないかもしれないけど。