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精密な描写は静謐であり、
機微をうがつ描写は濃密である物語。
作品に乗ずる間、豊かな気分に浸るも、
心は微震している。
作者は 2010 年「考える人」夏号での、
村上春樹さんのロングインタビューのインタビュアーだったんだ、
それも最後の仕事として(http://bit.ly/bH3tiM)。
2012 年 第 64 回読売文学賞小説賞受賞作品。
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う~ん、いいなあ。落ち着いたきれいな小説。老いと青春が自然の中で静かに時をきざみ…。繰り返し読みたくなる本です。
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浅間山の見える信州で毎年夏を過ごす自分にとっては最適な読み物でした。
食べ物、夏の家の様子、浅間山すべてをイメージしながら読みました。
読後の清涼感、上質な本を読んだ気分です。
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とても良い小説だった。
描写が美しくて、こんなにも惹き付けられるのにストーリー展開が自然。読後感もすごく爽やかで気持ち良い。
小説を読むとその世界があまりに非日常過ぎたり、作者の魂胆が見え透いてしまい、冷めてしまったり、入り込めないことが多い。けれど、全くそれがない。もちろんその世界は非日常なのだけど、誰もが心にもつ記憶にすーっとシンクロしてくるのだと思う。
こんなに気持ちよくさせてくれた小説は久々だった。
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どんな日でも、誰かがいい台詞を吐いたり、誰かに報告したくなる情景があったりする。そういう細かい言葉を集めておいて練って、いつか束ねて話にできるのが理想だけど、難しい。でもこの小説はその技術を持った人が書いていた。元編集者。
最後の章を、近所の居酒屋で読んでいたら、店主が「その本読みました」と声をかけてきた。店主は元々建築を学んでいたので、図書館のデザインコンペを軸にしたストーリーに興味があったらしい。小説に登場する「先生」によく似た人を知っていて、もう一度建築をやりたくなったと話していた。個人的には、12章と23章。
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とても いい本 を読みました。
そんな感想です。
密かに好評価を得ている本書。建築の内容で、建物(を見るのが)好きな私には奥深く感じました。
新米建築士と先生と呼ばれる建築家の話しです。
戦後の時代、都内のとある設計事務所が夏の間だけ浅間山麓へ移ります。「夏の家」と呼ばれるそこは、避暑地というだけでなく、自然を満喫しながら仕事の効率も上げてくれ、食住を共にすることでチームワークも向上させていきます。そして何よりもこの土地と「夏の家」を愛している先生は楽しんでいるかのよう。自然環境は勿論厳しく、嵐や大雪、すずめ蜂等の生物・・・と不便だからこそ、あらためて建物本来を見つめ直せる建築士たち。
建物は作品ではないという専門家もいるけれど、クライアントの要求に応えるだけではなく、いかに希望に近い形で快適さを求めた上で、設計者の手腕とセンスが問われるもの。だから私は作品だとやっぱり思ってしまいました。ただただクライアントの要求だけを飲んでいる実験的な建物ってないと思います。与えられた時間、向き合い仕上げる建築家の手塩にかけた作品であり成果ではないでしょうか。
脱線しましたが、個人的に最近思っていた建築の世界をいろんな角度から堪能する事もできました。
既製品よりも大工さんや各種の職人に恵まれていた時代がまたイイ。建築家のポリシーや仕事ぶりにも細かく触れられています。クラシック音楽を傍らに先生を中心とした登場人物が丁寧に描かれ、切磋琢磨してできる建物への想いを感じることができました。とても精密で規模の大きい小説で、読み応えを存分に感じた一冊です。
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1982年、大学を卒業した僕(主人公)は北青山の小さな設計事務所に入所し、その夏から秋を浅間山の麓にある事務所の「夏の家」で働き、様々な経験をし、「先生」や「麻里子」をはじめとする周囲の人々と濃密な時間を過ごす…
建築の専門用語や文化に関する言葉が頻出するせいもあるが、これほど余白が少なく描写の多い小説を読んだのは久し振り。
しかしそれを苦に感じさせない程読み応えがあり、集中して読めました。
最後は決してハッピーエンドとは言えないが、こう言う世界、そして働く事に対する考え方もあるのかと思わせてくれ、読後感が清々しい一冊。
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ストーリーをかたづくる、
ディティールがとにかく精緻で静かに描かれています。
心象を伝える時の風景や下地は、
知識の場合、説明になりがちですが
この人の文章は全てが読み手が頭に
世界を浮かべるためのシーンになります。
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私自身が建築学科を卒業して中規模の組織設計事務所に勤務していたので、小説の世界が現実味がありすぎて物語の世界として読めなかったのが残念。
昔のアトリエ事務所の様子がそのまま描かれているだけで、小説としての脚色が何もないのではと思われます。
アスプルンドの建築については大学の講義のような内容にちょっと閉口しました。
静かな世界観は素敵だけど、凝りすぎた料理などはちょっとクドイ。
私としては頑張って最後まで読んだ本です。
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この作者はきっと村上春樹が好きなんだろうなと思った。
アスプルンドの建築の説明が繰り返し出てくるが、建築の素養のない私には分かりにくく、結局Googleで検索しながら見ることになった。実際見ると森の墓地とは、こういうものかと納得する。先生のモデルとなった建築家の別荘も検察することで、ようやくイメージを掴めた気がした。
こういうのをメディアミックスな読み方で面白いと思うか、煩わしいと思うかで評価が分かれそう。
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新潮の名編集者の52歳の処女作ということで、細やかな描写と熟した文章が積み重ねられながら、瑞々しさも兼ね備えた長編。こちらもスローに一歩一歩読み進めて、久しぶりに熟読できたのが良かった。
私のなかで流れる時間が変わった。
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良かった。
小説の世界に浸った。
デビュー作とは驚き。
できれば、出てくる建物の見取り図が欲しかったなあ…
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どうしてもノルウェイの森を思い出してしまうが、建築を題材にしているところが新鮮で、自然や喪失感も感じられる、とても良い本だった。
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ふだん単行本で小説を買うことはあまりないのだけれど、友人の編集者に勧められ、なんどか手に取ることになりそうとの予感もあって購入。予感は的中。
浅間山のふもとにたたずむ、老建築家の「夏の家」こそがこの小説の主人公である。端正な造型を身上とする建築家と、彼を敬愛する個性的な所員たち。大規模なコンペに立ち向かう彼らと、そこにさざ波を起こす魅力的な女性たちの存在。新人としてアトリエに就職した青年の瑞々しい感性によって切り取られた「夏の家」の生涯。
堀江俊幸『雪沼とその周辺』の《静けさ》を愛するひとにぜひ。
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著者のデビュー作となる長編小説。
舞台は1980年代の東京、軽井沢。小説の中の時間と、空間がすがすがしい。