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また全般的におしゃれすぎ!80年代にそんな食にこだわっている人おらんて、トツッコミいれながらも楽しんだ。
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大学を卒業し、憧れの建築家の元で働くことになった主人公。毎年夏の恒例で、事務所を浅間山の麓の別荘に移し、公共事業の図書館の設計のコンペに向けて活気付く所員達。話の前半はほぼ、建築に関する薀蓄に使われ、なかなか読み進めることができませんでしたが、中盤に差し掛かり、主人公と所員の、そして所長の密やかな恋愛が静かに展開されていきます。やがて、人も建物も役割を果たし、次の世代へと継がれる…自然描写が美しく、すこし儚い気持ちにさせてくれる、とても清涼感のある作品でした。
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すばらしかった。言葉のひとつ一つが醸し出す空気、想像力のちからを借りて立ち上がる建築や軽井沢の空気。聴こえてくる音楽や、鳥の声。花。紅茶の匂い。五感を使いながら、ゆっくりと読んだ本だった。
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やっと手に入れた一冊、読めて良かった!。流れる時の中のひと夏…"夏の家"での出来事をクローズアップしながらも、村井設計事務所で働く人々の人生観・価値観を粛々と完結させる。とにかく、閑寂の上に上品で美しい描写と表現。煌めく一語一語がしっとりと沁み入ってくる♪。
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軽井沢もライトの建築もロスコの絵画も。大好きなモノ盛り沢山で心地よい空気感のこのお話しの中に入り込みたい気分。せめて村井設計事務所に勤めたい。なんて言ったら、建築学科を出ている同僚に給料安いよ!と夢を壊されました。うん、やっぱり夢のような世界。小説で浸りましょう。
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物語の筋や展開を追うというよりも、本の中を静かに流れている豊かな時の流れに心をひたす…という小説。
新潮社に長年務め、業界内では名編集者として有名だった著者の実質的なデビュー作でもある。
確かに描写のそこかしこに異常なほど書き込まれている部分と、そうでない部分がある。特に著者自身が好きなのであろうものごとについて特にそれが顕著だ。なるべく著者のこだわりについていこうとするものの、私自身の浅学さもあり、門戸外のことがらについて、いまいち乗りきれない部分があったのは否めない。
しかしながら、そんな点を差し引いても本書は大変な力作であり、素晴らしいデビュー作であることに変わりはない。
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「夏の家」では、先生がいちばんの早起きだった。--という書き出しで始まる物語に、その瞬間から引き込まれていた。浅間山の麓にある山荘。夏の間、軽井沢の別荘地にあるその山荘に事務所機能を移すのが習わしである設計事務所に入所した、「ぼく」の目線で語られる静謐で、甘美な物語。
美しい言葉で語られる軽井沢の自然の美しさ。山荘での静かな喜びに溢れる時間。
ぐいぐい先へ先へと読み進めるような小説ではない。むしろ、丁寧に選ばれた言葉を反芻し、美しい情景を思い浮かべ、そこに身を委ねながら、一頁一頁をゆっくりと読んで行きたくなるような作品。
まだ読み終わりたくない、そんな気分にさせてくれる甘美で、喜びに溢れた読書だった。
長い年月を経て、一人、またひとり去っていくそのありようが、自然なことでありながら、哀しくて、寂しくて胸が震える。いま、こんな作品に出合えたことがうれしい。
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「考える人」という季刊誌が好きだった。準備号から始まる定期購読を申し込み、その分厚く少しばかり変わった組み合わせの文章の並ぶ雑誌が届くのをいつも楽しみにしていた。ジュンパ・ラヒリの翻訳が載り、養老孟司の随筆が載り、橋本治の古典芸能への考察が載り。中でも建築家中村好文の住宅に関する文章が好きだった。その延長で「ひとりよがりのものさし」という写真集のようなエッセイ集を手に入れ、長生郡まで足を運んだりもした。その雑誌の初代編集長が本を出版したことは知っていたが、題名から勝手にイタリアを舞台にした小説なのかと想像したまま今まで手に取らずにいた。天邪鬼な性格故の食わず嫌いの典型である。
ふとしたことで書棚に置かれた本を取り読んでみて唸ってしまった。これは中村好文をモデルにした小説じゃないか。思わずかつて連載されていた別荘造りの様子を伝える文章と写真やスケッチがよみがえる。なるほど火山というのは信州の山のことだったのか。主人公たち世代の若者が、雑誌連載の中に登場したスタッフと思しき若者たちと重なる。
登場人物の中の下の名前で呼ばれる若い二人の女性は、主人公にとって親密な関係の人物であることは冒頭から容易に想像がつく。それが分かっていながら最後まで物語を繋ぐところに、面白さもあるが、あざとさのようなもの、単純な思考の男のメンタリティーが臭う。嘘臭いと言えば嘘臭い。それでもそうあって欲しいと願う気持ちは解らないでもない。ただそこに留まっていては何処にも進んで行かないことを、この歳になると自覚しているだけ。
考えてみると、松家仁之が編集長を辞めた頃から読み残す頁が増え、定期購読をしなくなったのは、相性のようなものがあったからなのかもしれない。緻密さと大胆な嘘を程良く混ぜ合わせた小説は、嫌いではない。
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送別会の嵐をくぐり抜け、生まれた地への引っ越しもなんとか終わりまた読書を始められた。
昨日は飛行機の中で読み始めた松家仁之氏の作品「火山のふもと」を読了。作者のデビュー作であった故か読売文学賞と言う地味な賞を取っただけで知名度もあがらず世の中にあまり知られていないと思われる本だ。
僕も実はあまり期待をせずに読み始めたが、読み進めて行くうちに上品な文章で表現される浅間山麓の別荘地近辺の鮮やかな自然、著者は設計事務所に勤めた経験があるのではと思わせるくらいに微に入り細にいりかつ優しい目線で描かれた建築設計のコンペに参加する設計事務所で働く人たちの日々の様子、懇切丁寧に語られる主人公が憧れる設計事務所の所長が過去の設計た建物や作り付け家具のシャープな姿など小説の中での様々なものの描写の美しさにまず圧倒された。
もう一つ秀逸だなあと思ったのが、小説全体を構成する時間軸のコントロールだ。主人公が設計事務所に入社するくだりから、残念な所長の病気によりコンペには参考出品となりその後事務所をたたむ事になるあたりまでは非常にゆっくりとした時間の経過でもって描かれ、それにより人間関係の濃密さが協調され、その後の主人公の今の姿を描きながら語られるコンペに関わった人たちのその後の人生模様はとてもとても簡素に、時間の経過もものすごく速いテンポで描かれて、そのテンポは主人公のそれらを振り返るときの枯れた視点を感じさせるという時の流れを操る凄技を駆使している。
もちろんちょっとほろ苦い恋愛あり、事務所内のとても微妙な先輩後輩の切磋琢磨する人間関係や事務所の所長の病気により突然変わってしまうそれぞれの人間模様の描き方も大きな魅力だ。
主人公の学生時代から壮年までが描かれる訳だから結構なページ数となっているのだが、まず多くの人が途中で読むのをやめられられなくなるのは間違いなしだ。したがって平日のしごとに差し支えないよう週末での読書をお勧めします。
そんな処女作なのに隙のない名品を読むBGMに選んだのがもう飽きるほど聞いたが決して飽きない名盤Bill Evansの"Waltz for Debby"だ。何度聞いても素晴らしい。
https://www.youtube.com/watch?v=RbTEgBEaEM4&t=3462s
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何年も前に何かで紹介されていてずっと読みたいと思いながら日々がすぎていた。
設計という自分と全く知らない分野。こんなふうに仕事をするんだという新しい世界を知りました。そういう知識があったら建築物を見る目も変わってくるのでしょう。村井先生の設計した図書館に行ってみたかったです。
静かで、落ち着いた、そしてなんとも言えない余韻も…。
そして人はいつ何が起こるかわからないということが強く心に残る。
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図書館でふと目について、ネットで見たら好評価のようなので借りてみました。
建築家を主人公に丁寧に端正に語られる静かな物語。
ストーリーに大きな展開があるわけでは無いのですが、一言一言を選び抜いてじっくり書かれた様子がうかがえます。そんなところは、ちょっと堀江敏幸を想い浮かべます。
建築設計の話が詳しく出てくるので、松家さんも業界の関係者かと思って調べたら、新潮社の人なのですね。退職後のデビュー作、大したものです。
小説らしい小説です。
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東京に出張の際に読もうと決めてた一冊。たぶん吉村順三がモデルとなったと思われる先生と、駆け出しの所員のぼく。「夏の家」は私には無かったけど、同じように何かを学び生み出すことに必死だった新人時代を思い出しながら読んだ。大好きな一冊になった。感涙。
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静かな小説。
建築事務所が避暑に軽井沢の別荘でみんなで仕事をするという設定、しかも昭和の50年代。
自分が学生時代の話だけれど、確かにテニスがブームになったりはあったけど、こんなに静かな世界だったのかな。
特にクライマックスもなく、淡々とストーリーがすぎ、そして過去と流れていく。
ゆったりと山の中を思い描きながら夜に読むのがおすすめです。
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建築事務所に入所した夏。
先生と先輩たちと過ごした夏の家での出来事。
国立現代図書館のコンペ
先生の姪の麻里子と先輩、雪子の2人の女性。
モダンでありながら親密で、生活のある建物を作った村井先生の思想、永く残り、住まわれるためにある建築。
ものづくりについての細やかなディテール。
軽井沢の奥にある別荘、夏の家の風景の美しさ。
魅力的な女性。
静かで正統派。好き。
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物語の中の登場人物が追い求めるディテールの美しさ。それがそのまま具現化して一冊の書籍になっている。これってすごいや。建築家吉村順三、中村好文をモデルにしてるであろうこの作品。彼らの作品と共に後世に残したい一冊だ。