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不連続殺人事件に次ぐ坂口安吾。
「白痴」と「戦争と一人の女」が非常によかった。
「戦争と一人の女」のヒロインは「白痴」のオサヨのように思える。特に、「戦争と一人の女」のヒロインが戦争の美しさについて滔々と語る部分は鬼気迫る。「けれども私には地上の広茫たる劫火だけが全心的な満足を与えてくれるのである」
坂口安吾のデカダンは僕と妙に波長が合う。推理小説は別としてもっと読みたいと思う。
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「あちらこちら命がけ」の姿勢を体現して生きた安吾。
『白痴』に描かれた執拗なほどの「精神と肉体の安易な馴れ合い」を否定する姿勢に、その強さを感じられる。
美しい作品群の中でも「青鬼の褌を洗う女」に特に心惹かれた。
最後の一文に「なつかしいのだろう」とある。
これはきっと、冒頭にある「母に似てきた」と関連している。
強いエゴイズムを持って自分を利用しようとする母に、強い嫌悪感を抱いていたサチ子。
そんな彼女を「ある瞬間に美しかったり、醜かったりする」と受け止め、自分の生き方を理解したからこそ「なつかしい」と感じることができたのではないか。
自分の心に向き合わずに生きていることに気づかされ、心が痛い。
自分もそんな風に、人を受け入れてみたい。
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1946年、終戦翌年に発表された作品。
映画「白痴」を観る前に読みました。
戦時中の日本。
文化映画の演出家である伊沢は、芸術を志しながらも、実際には凡庸さ、言葉の上だけの"自我"や"個性"が氾濫の中に身を置いています。
一歩先の僅かな給与を貰えるかどうかを恐れ、胸に抱く大志も、そうしたチッポケな現実の前で崩壊せざるを得ない現実に疲れる伊沢は、住処に潜り込んできた白痴の女に安らぎます。
白痴は、豚のように、自らが切り刻まれても気付かない。物事を考えるのではなく、ただ通すだけ。
逃げ惑う中、最初は置き去りにしようとした白痴を連れ、彼は大衆とは別に逃げようとします。
大衆に飲み込まれそうになる白痴を掴まえ、逃げる伊沢。
戦争という虚無の切ない愛情は、全てを破壊する。
その先に何かがあると思い、希望を持とうとやっていたが、死体は人も豚も何もかもが同じようにしか見えなかった。
明日への希望など持ち合わせていなかった。
だから、白痴を捨てようにも、捨てるほどの気力も無い。
出来るだけ遠くに歩こう。
ただ、心の中に混沌とした虚無が漂っている中、背中に降り注ぐ太陽を待ちながら。
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短編集、どれも戦時中〜戦後の話です。通底するテーマ(?)は、(主に性的な)退廃の虚無感と、一抹の感傷という感じだと思います。
全編通して、精神的な営みは冷めた目で捉えられていて、虫のような暮らしぶりが描かれるんだけど、たまに、ちらっと、希望というか精神的な救いみたいなものが垣間見えるのです。でもその感傷に安住することは無いので、また虚無感へと帰っていってしまいます。
ロマンチシズムの否定というか、醒めていようという努力は、近代芸術で共通してるかと思いますが、感傷を捨てきれない人もいる訳で、そういう葛藤の中で生まれた作品もまた味わい深いと思います。この作品も個人的にはそういう印象でした。
作品によって結構文の感じが違って、飽きずに読めました。
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・4年ほど前に買ってから一通りは目を通したけどもう一回読み返したいと思っている本
・以前に買った本に引用されてる台詞がとても気に入ったので買ってみた
・短編集だったけど当時はラノベばっかりの私には辛かった
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初めて読んだ頃は「太宰の文章より読みにくい」としか思わなかったが、あれから個人的に色々あってか、今読むととても面白い。男は肉欲を求めるだけの女を軽蔑するが、しかし結局はそのような女と一緒にいる。欲望を赤裸々に書いた作品群。
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表題『白痴』を含めた全7編の短編集。
精神を介さない男女の肉欲。互いに溺れることのない一瞬の関係。人と深く繋がりたくないのに、人と繋がらないと自分というものが見出せない荒唐さ。
不器用だけど人間くさい、様々な生き方がここに凝縮されています。
~収録作~
『いずこへ』『白痴』『母の上京』『外套と青空』『私は海をだきしめていたい』『戦争と一人の女』『青鬼の褌を洗う女』
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敗戦直前男女を描いた短編小説です。戦時中という不安定な世界での無常感とむなしさを感じました。短いので本が苦手な人にもオススメです。
九州大学
ニックネーム:山本五朗
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舞台が戦争の時代なのでその描写が克明にされているのですが、怖くないんですよね。とってもリアルな表現で臨場感たっぷりなのに、震え上がるようなことはない。そんな最中にも貞操観念とかそういうことばかり考えているのですか、というツッコミを入れてしまえるくだけた文章でした。
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戦中、戦後を舞台にした短編集。そんなふうにいうと暗い話かと思われるかもしれないが、それだけではないのが面白いところ。短編ごとに違う人物の主観で語られていくのだが、境遇も違えば考え方もそれぞれで、興味深い。
男だけじゃなく、女の行動の裏側(理由とか)の描写が秀逸で驚いた。特に最後の話「青鬼の褌を洗う女」は、たぶん傍から見たらいけ好かない女であろう主人公を、そちら側から描くことによって憎みきれない人物として存在させている気がする。好きとか嫌いとかではなくて、そういう人もいるんだなと思わせるような。
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表題作を含む7つの短編集。
「私はそのころ耳を澄ますようにして生きていた。」
「匂いって何だろう?」など、どの話も出だしの文章が特にかっこいい。
『青鬼の褌を洗う女』が好き。
希望がなくても生きていかなければならない人間臭さはわかるんだけど、
現実と理想のギャップにもっとじたばたしている方が私は好みだ。
お屠蘇気分で読んでいたので、きちんと読み取れなかったかも。
またいつか読み返してみようと思う。
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戦後の退廃美。廃れた穏やかさが漂う。どの文もセンスがある。
私は海を抱きしめていたいがイチオシ。
私の冷たい心が、女の虚しい激情を冷然と見すくめていた。
なんとも哀れで癖になる。もう一度じっくり読むことにする。
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青空文庫で『白痴』と『青鬼の褌を洗う女』のみ読了。 『白痴』は正直よくわからなかった。 『青鬼のー』はミステリーとかとは違う満足感。この作品に限ったことではないが、坂口さんの文章のリズムが好き。
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『全てがなんて退屈なんだろう、だけど、何故、なつかしい』
坂口安吾を読む女に碌な人はいないので目安にすればいいと思う。太宰治好きは自己顕示欲の強い女、芥川龍之介が好きな女は頭でっかちなだけの無知なのであしからず。そもそも、本を読んでるような女は表面は涼しそうな顔していても大概地雷なので、避けて通ったほうが良い。
坂口安吾はアウトローだったのか。私には分からないけれど、彼の言う堕落論は常に私の傍でトグロを巻いている。それは、見ているだけで痛々しく醜く、苦しくて辛いものだ。
彼はいずこへ。
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ぐっさりやられた、好き。体と頭、行動と思考の流れ。「あべこべに」なってしまう絶対的孤独感と強烈な理想主義はあまりに身近で同族嫌悪を感じるほど親しみがある苦しさ。それにすら冷たい視線を浴びせてひっくり返ってしまうところも。今回好きなのは<白痴><私は海をだきしめていたい><青鬼の褌を洗う女>。特に<青鬼を~>は(現実的な事柄はともかく)母娘関係の苦しさが「まさにソレです!」と。受動的に選択していると、戦争に対するスタンスや見方がこういう姿勢の作品というのを手に取る機会が無いので新鮮でもあった。