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カフカは寓話になり切らない寓話、なのだと言う。上手い言い方だと思う。いわく何かの暗喩ではある点において寓話的だが、何の暗喩なのかをはっきりさせない、あるいは人によって異なる解釈を要求する点で不完全だと。
それってリアルな人生だよな、と思った。身の回りのことを自分なりに解釈して飲み込んで生きていかないといけない人生そのものだ。
正確には宗教を捨てた現代人の人生だと言うのが正しいかもしれない。この事象はこう解釈しなさい、という一方的な宗教的倫理観のもとでは異なる解釈というのは基本的に存在しないだろう。その世界では寓話は何の暗喩であるのかが自明であるべきで、何かの暗喩、などというものはありえない。ウサギとカメのレースが何を表しているか。能力が優っていてもサボってはいけない。劣っていてもコツコツ努力すれば成果が出る。他に議論の余地もない。圧倒的に正しい教訓のはずだが、でも実際生きてりゃ例外なんて山ほどあるのもまた事実だ。この点カフカは何らかの解釈を要求はするが、決して何も押し付けない。
なるほどカフカは現代文学の父であるわけだと思った。