- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
紙の本
メルヘンの世界
2008/12/06 16:24
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
黄色い目の魚 佐藤多佳子 新潮文庫
これは短編集で項目が8つあります。
「りんごの顔」繊細な面が好きになるけれど、うっとおしさもあります。童話のようです。メルヘンです。りんご3個は、父と母と小学校5年生悟(さとる)くんのことを指しています。そして、りんごに顔を書かなければならないのです。両親が離婚しなかったら、父親はもっと長生きできたことでしょう。
「黄色い目の魚」みのりちゃんのかんしゃくもちは、読み手をほっとさせてくれます。彼女は女性版太宰治のようです。みのりちゃんをとおして、作者の悲しみが伝わってきます。自分は今まで他人から怨(うら)まれることをしてこなかっただろうか。してきたということを思い起こさせてくれた作品です。
「からっぽのバスタブ」思考にふける以外の趣味とか楽しみを登場人物は有していないのだろうか。
「サブ・キーパー」タイトルは、サッカーのゴールキーパーの控え選手という意味です。文章が潤滑油をさした歯車の集合体のように円滑に回転していく。すばらしい。
「彼のモチーフ」この本全体をとおしてですが、詩を読んでいるようです。項目は8つに分かれていますが、それぞれ関連があり、この本は1冊の物語です。話のすべては、悟君の亡くなった父親テッセイさんが源(みなもと)となっています。登場人物女性の心理描写が繊細なうえに説得力があり、読み手は納得させられて、彼女たちがかわいそうになります。
「ファザー・コンプレックス」275ページを過ぎました。話が長くなってきたせいか飽きてきました。読み疲れました。世界が狭い。思春期・反抗期のこどもたちについて、彼らの心理描写が続きます。だから「黄色い目の魚」なのです。社会人になれば、もっと広い世界がいっきに広がっていくのに。自由な空間が狭い。登場人物自らが自分で自分の世界を狭くしている。
「オセロゲーム」お互いが「便利さ」だけでつながっているだけ。鎌倉の風景が目に浮かぶ。何をやってもいいとなれば、人間の心は壊れます。閉塞感あり。村田がかわいそうになってくるけれど、こちらの気分が悪くもなる。
「七里ヶ浜」作者は詐欺師ではなかろうかと思いました。文章を使って読者をだましの世界に導きこんで迷わせてくれます。
紙の本
忘れられない頃
2003/05/15 16:30
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ももぴー - この投稿者のレビュー一覧を見る
村田みのりと木島悟の恋が、なんだかとてもいい感じで描かれている。ものすごく真面目でもないけれど、変に大人ぶってもいなくて、随分前にこの時代を通り過ぎてしまった私には、みのりと木島がうらやましく思えた。
みのりは、不器用でとんがっていて、でもそんな自分を曲げることもしたくなくて、かわいそうなくらい、ごつごつしたものを体中にいっぱいくっつけているような女の子。それが、木島に惹かれていくなかで、どんどんごつごつしたものが取れて、丸くなっていって、でもまっすぐな部分は決して無くしてなくて… 何だかそういうのって、いいなあって思った。誰かに媚びることなく、しっかりと自分というものを持ったまま、成長できるってすごい。
みのりは、とんがっていた頃、キライなものがたくさんあったけれど、木島に出会ったことで、好きなものが増えていって、私はそんなみのりに、よかったねえって抱きしめたくなるような、愛おしさを感じた。そんな頃が自分にもあったんだなあって、懐かしくなった。
なんかきらきらしていた頃がホントに懐かしい。
この小説をとおして、私は忘れられない頃があったことを、久しぶりに鮮やかに思いだすことができたような気がする。
紙の本
10代の頃ってしんどかった
2003/02/23 01:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とみきち - この投稿者のレビュー一覧を見る
胸がきゅんとするお話。10代の頃ってすごく大変で、しんどかったことを、大人になっちゃって感受性の鈍ったかつての少年少女にくっきりと思い出させる本。
好き嫌いの感情ははっきりしていて、人に対してとんがった態度しかとれなくて、私って何っていつもぐるぐる考えていて、ちょっとしたことで傷ついて。表現力がないから自分をあらわせなくて、それでまた自己嫌悪で。見透かされたくないから突っ張ってもがいてる。そんな男の子と女の子の日々が描かれている。
何をしてる時が自分は幸せで、誰と一緒にいるとあったかくなれるのか。それが見つかりさえすれば強くなれる、幸せな気持ちになれるってことをこの本は教えてくれる。でも、そう簡単には見つからないっていうことも教えてくれる。
木島悟も村田みのりも、自分の好きなこと、自分の好きな人が見つかって良かった。
見つけた自分の幸せを忘れずに、手放さないように努力して、大人を続けていかなきゃいけないんだって、大人になっちゃった私は強く思った。