紙の本
相性が悪いって言うか、誰がどう褒めようと、賛同できない作家がいる。基本的には甘さで売る作家ってのは苦手なんだよね
2003/12/26 20:19
8人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「本の雑誌」との相性が悪くなったのは、何時の頃からだろう。多分、月刊誌になって執筆人の入れ替えがあったころだから10年近くまえのことだ。といっても、その存在はあまりに大きく、無視することはおろか、立ち読みしないで居ることは全く出来ない。読み落しを拾うのは、やはりこの雑誌からが一番多いのも事実。
なぜ、相性が悪くなったのか。実は、北上次郎の一押しの作家に共感できないことが増えてきたからだ。北上が冒険小説の新世紀をぶち上げている頃は、どれを読んでも肯くことばかりだった。こんな人を旦那にもったら、楽しい家庭ができるだろうなあ(実際は、会話もない、本だけの生活かもしれないけれど)と思ったりもした。
先日、私自身の不明を告白した宮本昌孝、隆慶一郎あたりは、北上次郎と評価はかわらない。しかし、真保裕一『奇跡の人』、乙川優三郎『喜知次』、藤田宜永『愛の領分』、町田康『夫婦茶碗』、大沢在昌『新宿鮫』あたりからどうしても納得が出来なくなった。そして佐藤多佳子『しゃべれどもしゃべれども』。
その「本の雑誌」が、再び佐藤多佳子を褒めた。それが今回取り上げる『黄色い目の魚』。宮本昌孝『ふたり道三』同様、頭を下げるのは、またまた私のほうなのだろうか。気にしながら、読み始めた。
小学校五年生の少年が、両親が離婚して7年会わなかった父に呼び出されて「りんごの顔」。小学校一年のとき描いた三角の黄色い目をした太った魚。それを漫画に使った叔父の所に出入りする中学生の姪「黄色い目の魚」。美術の時間に、自分のことを描くことになった同級生に惹かれていく私「からっぽのバスタブ」。元キャプテンのキーパーが頑張ってくれていたおかげで一度も試合に出たことがなかった少年の苦いデビュー「サブ・キーパー」。同級生の彼が連れて行ってくれたのは、叔父が表紙のモデルにしている女性が居るお店だった「彼のモチーフ」。十五歳の妹が家出をした。子連れの四十男と一緒になるといって「ファザー・コンプレックス」。自分のことを好きだと思っていた同級生が見せる奇妙な気後れの陰にあるもの「オセロ・ゲーム」。相手を傷付けることをわかっていて、告白した少年の苦悩「七里ヶ浜」。作品の生まれた背景を佐藤が語る「十年後〜あとがきにかえて〜」
うわー、やっぱりだめだ、と思った。もう、これは相性なんだろうなあ。最初の、テッセイと悟の再会のところで、違和感が喉元から溢れ出す。冗談じゃあない、私だったら、絶対に合わせない。しかも、何だろう、この如何にも子供の言葉ですよ、という流行語の取り入れ方は。おまけに、悟の言動が絶対に小学五年生のものではない。イライラして夫に聞いたら、これは男だったら絶対に描かない少年の姿だと言った。珍しく同感。
途中は飛ばすけれど、最後の甘さはなんだろう。結局、男はやり得? おいおい女を舐めるんじゃあないよ、と思ったが、よく考えなくても佐藤多佳子は女だから、きっと彼女にはこれが正しい愛の姿なのだろう。だから『神様がくれた指』だって、ああいう終わり方をする。でも、それが私には我慢できない。
早速、この本を娘に読ませ、「いやな奴だろ、テッセイ。それから悟」といったら、「うーん、でも、みのりは好きだよ」といいだした。なに、あんたはあんな男を許す女になりたいのか!とこみ上げる怒りを、ぐっと飲み込み、もしかして状況を読みきれないのは自分だけなのかと、急に気にし始めた。でも私は嫌いだね、簡単に男に身を開く似鳥も含めて、絶対に。ふむふむ。
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揺れる思春期・自分の内と外を築き上げる思春期。
そんな時の舟に乗り揺られている高校生の 村田みのり と 木島悟。
それぞれ と ふたり の物語。
大人の目にはどうでもいいことに映るのに たまらなく切ないこと とか
大勢の中で自分だけが浮いているような居心地の悪さ とか
only one でいたいのに one of them になってしまう情けなさ とか
ある人の前でだけ 消えてなくなりそうになる自分 とか。
不安定だけど限りなくパワーを秘めたあやうく確固とした思春期が
どのページにもある。
じゎりと沁み出すように涙が浮かんだ。
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店頭ポップに惹かれて図書館で探した本。変に今風に擦れていないけど、どこかアンバランスな高校生の話ってのはすごく好きです。いかにも!的なのはダメだけど。
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やっぱり良いよ。『黄色い目の魚』本当に好き。なんだか取り残されて、なんだか悲しい、強くなろうとして必死、でも友達を知るんだわ、っていう少女の話だったけど、それが長編になって帰ってきて、みのりは高校生にもなった。やっぱりすれてる男の子木島君とであって、通ちゃんへの愛とはちょっとちがう愛を知って、なんだかいろんな日常が過ぎて。私は彼らみたいにはなれない。だけど、みているだけならできる。悲しいけれど、そんな冷静な、強い人間にはなれない。だけど、好きだなぁ。こういう人たち。
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だいすきな一冊。読みきりでここまで素敵にはまったのは初めてです。2人の関係はあたしの理想の恋愛。甘いだけじゃなくて、大切で守りたいからこそすれ違ってしまう気持ちとか。
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すこし人付き合いが苦手なみのりと、似顔絵描きの木島は共に高校生。
木島の描いた「息が詰まるくらいにヤなところばかりが似てる」クラスメイトの似顔絵に「私も人のヤなとこばっかり見えてしまって、そんな自分がムカつくくらいくらいキライなのに、そんな自分を必死で隠そうとしているのに、堂々と絵にしやがって!」とキレルみのり。
そんな木島も「マジになるのって、こわくない?自分の限界とか見えちゃいそうで。」と本気で物事と向き合うことから逃げていた。
そんな二人が関わり合ってお互いに成長していく物語。
言葉にできない感情をうまくとらえていて。
みのりも木島も自分の心にまっすぐ正直で。
わたしにも世界と折り合いをつけられずに、戸惑っていた時代が確かにありましたね。
年齢を重ねて、大分汚れてきてしまったわたしには、まぶしくうつりました。
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絵を描くこととサッカーが好きな高校生木島と、絵とおじさんの通ちゃんだけが好きな高校生みのり。
ひょんなことからみのりが木島のモチーフになって、木島はみのりを追いかける事になります。まっすぐだからゆえに様々な事に悩むけど、その度にお互いの存在に励まされて、あたしが今まで読んだ中でいちばん好きでいちばん忘れられない本。
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よかった!!二人の視点でストーリーが展開。前半はイマイチだったけど、読み進めていくうちにハルるハマる!
(2005.3.18読了)
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マジになるのって、こわくない?自分の限界とか見えちゃいそうで。<木島悟、16歳>世界で最高の場所は、叔父の通ちゃんのアトリエ。ずっと、ここに居られたらいいと思ってた。キライなものを、みんな閉め出して…。<村田みのり、16歳>鎌倉、葉山を舞台に木島とみのり、ふたりの語りで綴られるまっすぐな気持ちと揺れる想い。等身大の高校生の姿を描く。
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青春小説の決定版。
これは、ほんまに惹かれる。
こんな風に嫉妬したなぁって感じ。もんもんしてるときにお勧め
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模試の問題で出ていて引き込まれ、思わず探してしまった本。淡々とした日常なのに全く飽きが来なくて、さらっと読めてしまう。読みながらまるで自分もそこに居るかのような錯覚を受けるほどに、読み手を惹き込む力を持っていると感じた。一風変わった考え方とまっすぐな姿勢がすごく好き。2人のその後がどうなるのか気になる。
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模試の問題文として出会い、惹かれるものがあって読んでみて、そして大好きになった本。主人公達の繊細な心の動きにハッとさせられたり、ドキドキしたり、涙が出そうになったり。青春は切ないけど、失うものばかりじゃない。とりあえず初めて進研模試に感謝。南無。
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「絵」という、二人の共通項をを通してつづられる、みのりと木島、16歳ふたりの物語。
幼い頃にいなくなった父親の影を引きずって、「絵」にも、部活動のサッカーにも、いまひとつ本気になりきれない木島。
好きなのは「絵」と、絵描きであるおじさんだけ。好きも嫌いもはっきりしすぎていて、親とも友達とも、うまくやっていけず浮いてしまうみのり。
似顔絵が得意な木島なのに、みのりの顔だけ、上手く描くことができない・・・
切なくて懐かしい。
私にもこんな時代があったなぁと思い出す。
何もかも上手くはできなかった、やたらじたばたしていた16の頃。
もう16歳ではない大人のための物語だと思います。
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ときめいた、の一言でしょうか。こんなにまっすぐに心の中に落ちてきた恋愛ってないです。恥かしいほどに、一生懸命で、愛しい。
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母親がいらんから持っていきと帰り際に渡された本。
黄色い目の魚の章がよかったが、あとは蛇足な感じがする青春恋愛小説。
お近くの図書館にあるなら読んでみてもいいかも。