投稿元:
レビューを見る
20年近くに前に友人からもらった本。
(私があげた、ルナールの博物誌のお礼に、と言っていた気がする)
少し読んで、へえ、と思い、そのまま時間が経ってしまった。
今回、ふと思い立って再チャレンジ。
年末から少しずつ読んでいたので、3ヶ月くらい掛かったかもしれない。
一編ごとに、ごく短い文で簡潔に纏められている。
昭和初期のものだから、内容はおもに、明治大正、まれに江戸の話もある。
伝わる風習、動物の不思議なエピソード、寺社仏閣、霊体験、身分制度、山にあるもの、人間など、あらゆる物語が記録されている。
本書には、遠野物語および、遠野物語拾遺が収録されている。
内容にも驚くべきことが多いが、何より、その分量に圧倒された。
その昔、みんなが口々に伝え合ってきたことを、佐々木氏を通して、「書き留める」ことは非常に重要だったんだなあとわかる。
すごい仕事量だ。
作者の経歴をみると、80代になってもなお、精力的に講演や執筆、後進の育成、と活動を続けているので恐れ入る。
この時代の80代なんて、今の100歳くらいの感覚では?
読んでいて気に入ったのは、天狗と仲良くなる話、子供や祭りが好きで賑やかな場面には乱入したがる仏像の話など。
あとは拾遺の最後のほうのエピソードで、兵役や旅行で遠くにいった家族の動向を占う術があったことも、電話もテレビもない時代の情を思って身に沁みた。
投稿元:
レビューを見る
それぞれの逸話が独立している上に数が物凄いので、暇つぶしにめちゃくちゃいい〜〜…と思ってたら
予想以上に一個一個面白くて時間溶けました
もっとはよ読めばよかった
投稿元:
レビューを見る
河童、座敷わらし、マヨイガ、隠れ里といった他の作品でもよく使われるモチーフを始め、遠野における妖怪や狐、熊や犬、文化や風習に関する話を集めた説話集。言わずと知れた日本の民俗学の萌芽になった本だが、柳田国男の素朴な文章と相まって説話の一つ一つが短編の話を読んでいるように思えた。
同じ文庫内に収録されている遠野物語拾遺の中にあったオシラサマに関しての比較や由来などの考察がとても興味深かった。私は正直なところ、そこまで響くものは多くなかったが、今でも音楽や物語で使われるモチーフが多く登場する後世への影響力や話の一つ一つに誰が話したかがきちんと記録されていたといった研究として緻密に行われたことなど、読んでいて感心することが多かった。解説にも三人の文豪の異なった批評が載せられていたりと、人により感じ方が違うのも、とても面白かった。
田山花袋は「其の物語についてに就いては、更に心を動かさないが、其物語の背景を塗るのに、飽まで実際を以てした処を面白いとも意味深いとも思つた。」と評し、島崎藤村は「不思議な、しかも活きた眼の前の物語に対すると、ルウラウ・ライフの中に混じて見出される驚異と恐怖とを幽かに知ることが出来るやうな気がする。民族発達の研究的興味から著わされるものであるとしても、猶私は斯の冊子の中に遠い遠い野の声といふやうなものを聞くやうな思ひがする。」と評し、泉鏡花は「此の書は陸中国上閉伊郡に遠野郷とて山深き幽僻地の伝説異聞怪談を土地の人の談話したるを氏が筆にて活かし描けるなり。(中略)又此の物語を読みつゝ感ずる処は其の奇と、ものの妖なるのみにあらず、其の土地の光景、風俗、草木の色などを不言の間に得る事なり」と評した。私の抱いた感想は田山花袋に近いと思う。
投稿元:
レビューを見る
青空文庫8月8日公開分。
高校の読書感想文で読んで以来の再読。
ほぼ初読か。
末尾の歌謡が全く記憶にないのは新版の追加分だからか単に記憶の衰え故か。
高校当時とても読みたかったのは確かだが、読書感想文には不向きな内容で執筆に難儀したのを憶えている。
オシラサマにオクナイサマ、ザシキワラシにマヨヒガに河童に猿の経立(ふったち)……名の羅列だけでテンション上がるのが凄い!
民俗学の古典的名著たる本書に関しては、読みにくさを解消する新仮名でなく歴史的仮名遣いが正解。
読感にはオススメできませんが。
コレデドンドハレ。
投稿元:
レビューを見る
明治はまだ人の寿命が短く(とはいえ兵役や戦災で死ぬことはまれで)生と死が近かった時代。山道に馬の屍体があり「これの皮が欲しいが、取ると狼が付け狙って殺されることになるだろう」と伯父が言うなど狼·熊、化かす狐が身近。殺人の祟りで児が皆ある年限で死ぬといった怨念話も。活字で読んだら怖いが、聞き取り調査で読み書きできない語り手から採取する時は普通の話題(当時録音は困難)。文語記述が簡潔で内容にマッチし、グリム童話や、著者の指摘・対比する今昔物語と訣別して「これは現代の話である」と序文で断定される。民話や民謡は作ろうとして作れるものでなく、個人でない集団の無意識が自ずと形をなしていくのかも知れない
投稿元:
レビューを見る
常野物語「光の帝国」を読み、なるほど元ネタ遠野物語なんだ、タイトル聞いた事あるなァと思ったのがひとつ。
次読んだ本が「始まりの木」で、民俗学の祖柳田國男と遠野物語が物語のキーになっていたのがふたつ。
ここまで連続して登場されると気になるというもの。ご縁を感じて読んでみました。
東北のとある地遠野にてその地に住む人々が体験した話を、柳田國男がまとめあげた物語。
日本に伝わる民話の大元、というのが体感だった。自然に対する敬意だったり、人としての礼儀だったり。
今よりよほど、生活に対する感謝があったんだなぁ。
いつからかなんて分からないけど、近代化の波に呑まれて、だんだんなくなってしまっていただろうと感じる。
この物語が今読めることに感謝。