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紙の本
魁の魅力と対価
2015/09/17 15:10
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投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
八咫烏の子孫ともいわれる十津川郷の庄屋である野崎主計の許を、梅田雲浜とその娘の市乃が訪ねてくる。主計の年の離れた弟である野崎雅楽は、初めて見る郷の外の少女である市乃の危機を助けることになった。
それから半年、大老である井伊直弼の安政の大獄により獄死した梅田雲浜の遺言により、十津川郷に預けられた市乃は、井伊直弼への憎悪と復讐に塗り固められていた。そんな彼女に郷の暮らしを手ほどきし、少しずつ笑顔が取り戻されてきた頃、梅田雲浜の弟子であった吉村寅太郎が、野崎主計の許を訪れる。孝明天皇の大和行幸に先立ち、前侍従の中山忠光を主将として、五条代官所を襲撃しようというのだ。
詔勅と師の復讐という両面から、吉村の天誅組に加わる決意をした主計と、ようやく復讐が果たせることに希望を見いだした市乃に付き添い、雅楽は五条代官所を攻め落とす。しかし直後、京で八月十八日の政変が起こり、薩摩藩と会津藩に追い落とされた長州藩の後ろ盾を失い、天誅組は逆賊となってしまった。
惰弱な中山忠光を支える吉村寅太郎の強烈な魅力に惹き付けられ、瓦解しつつも死路を歩み始める天誅組に対し、兄と市乃を連れて十津川郷へと帰りたい雅楽は、彼らと共に戦場を歩むことになる。
史実を元に、思想的には外部にいた少年の視点から、天誅組の起こりと末路をひもといていく。そこに、身内を殺されたという個別的な恨みが寄り集まり、歴史という大河を紡いでいく構造を明らかにしていくのだ。きっかけは小さくとも、それに勢いがつけばとどめられるものではないのは、昨今のメディアを見ても分からなくはないし、過去の歴史の扇動者たちの存在からもうなずけるだろう。
魁となるものは突端であるため、周囲全てから叩かれる。その間に同時多発的に飛び出せば、その攻撃の手は分散され、そして当たり前のことになっていく。新しいビジネスが起きるときでもこの手のことはよくあることだろう。その犠牲になった天誅組が何を思い、何を残したのか。最後に残るのは、人と人の確かなつながりだけなのかも知れない。
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