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紙の本
ちょっとアンフェアかな
2017/01/20 00:36
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投稿者:kissho - この投稿者のレビュー一覧を見る
名著「ハサミ男」の衝撃度には及ばないでしょうが、叙述ミステリーとしては中々デキの良い作品だと思います。殺人事件の真相の部分については、仏語がチンプンカンプンなので、唯々そうなんだと、こちらの推理が入り込む余地は全くありませんでしたが(トリックも別に驚くようなものでもないですし)、どのみち、この作品の本筋ではないでしょう。ただ、ある1点についてはアンフェアな気がします。作者自身も、作中で登場人物にフェアじゃないと言わせてますから、少しは後ろめたかったのかもしれませんね。前半で気付いた聡明な方にとってはフェアなんでしょうが。
紙の本
名探偵の推理に瑕疵はあるのか
2016/02/16 14:41
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あずきとぎ - この投稿者のレビュー一覧を見る
十四年前、梵貝荘(ぼんばいそう)と呼ばれる法螺貝様の館で起こった奇妙な殺人。
事件は居合わせた名探偵水城優臣によって解決した。
しかし、これは作家鮎井郁介の著したミステリ小説であった。
物語は、この「梵貝荘事件」を中心に進められる。
本作は、三章に分かれている。
第一章では、第二章以降に登場するある人物=「ぼく」の日常が描かれる。
時折、梵貝荘での過去の記憶が頭をよぎる。
そして、日々過ごしていく中で、ある事件が起こるのだが、先に記した「梵貝荘事件」は、第二章で描かれることになる。
この第一章は、言うなれば少し長いプロローグのような役割を果たしている。
第二章では、現在(作品発表年の2001年)と十四年前(1987年)のパートが、交互に描かれる。
探偵石動戯作(いするぎぎさく)は、十四年前の「梵貝荘事件」の再調査を依頼される。
依頼者によれば、鮎井の発表した一連の作品(水城優臣シリーズ)はすべて実際に起こった事件であり、探偵水城も実在するという。
そして、シリーズ最後の作品と銘打たれて雑誌に連載されたにも関わらず「梵貝荘事件」が書籍化されないのは、水城の推理に誤りがあったからではないかというのだ。
水城優臣シリーズの熱心な愛読者であり、名探偵水城に憧れていた石動は、「梵貝荘事件」の再調査を引き受けることにした。
以下、石動が事件関係者と面会し事情を尋ねる再調査の様子と、過去の「梵貝荘事件」の顛末が並行して描かれていく。
梵貝荘に人々が集い、殺人が起こり、探偵水城優臣が見事な推理でこれを解決する一部始終である。
第三章は、事件の解決編である。
果たして、水城の推理に見落としはあったのか。
そして、明かされるいくつかの真実。
この最後に明かされる著者の仕掛けたトリックについては、Amazonのレビューなどを見ると評価が分かれるらしい。
奇想天外なトリックが隠されていると、過大な期待を抱いていた読者には、ちょっと物足りない結末なのかも知れない。
作品途中の(ミステリに付き物の)ミスリードについても、「ちょっと強引なところがあるかな」と僕も思う。
最後の場面の描写も、TVのサスペンスドラマのラストシーンのように、微笑ましく穏やかなものになっている。
しかし、ここで、もう一度第一章を読み直してもらいたい。
初読時とは、印象がまったく変わる筈だ。
先に、第一章はプロローグのようだ、と書いたが、作品を最後まで読み通した後に再読すると、実はエピローグも兼ねていたことが分かる。
こうして読むと、読後に何ともいえない感動が、胸に広がる。
これこそが、著者殊能将之の仕掛けた最大のトリックではないだろうか。
僕は、素直に感動した。
そして、とても切ない気持ちになり、それを数日間引きづった。