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『姉さんは、ブルジョワだ。俺は社会矛盾と闘っとるんだ。姉さんはいま、いったいなにと闘っとるんだ?』
『恋をすると、未来を待たなくなるね。時間が止まればいいのに』
『い、いじめられるほうにも、原因があるって』
『そんなこと、あるもんか。それは大人のいいわけだ。そんなこと言うセンコーは、人間の屑だぜ』
『甘えるなよ、毛鞠。現実を見ろ』
『あのころは、楽しかったね。毛鞠ちゃん。わたし、ずっと続けばいいと思ってたよ。ほんとだよ』
『まだなにも終わっちゃいない。時間は過ぎ去ったけど、なんだって取り戻せるさ。チョーコ、目を覚ませ』
『いつだってそうさ。おばあちゃん。いつだって、それなりにサ、難儀な時代なんだよ』
『おれたちの暮らしている世界の常識が、どこでも常識というわけじゃないと思うと、気が楽にならないかい…』
『自分にできないことは、むりをしてもできないから。できるだけのことをやるよ。そうすることでしか、ぼくは輝けないと思う』
『なんていうかさ…。やりたいことがみつからない。いや、それ以前にね、やりたいことをみつけるのに必要な情熱が、まったくもってみつからないって感じ。』
『叫び出したいほど、ほんとうは不安だ。だけど、なにを叫ぶ?』
『むくれるなよ。ただ、べつの視点の意見をはさんでみただけ。せっかく男と女なんだから』
『なんだってそうさ。始めることと、続けることが、だから、すごくたいへんなんだ』
『そんなのいいよ。ユタカがユタカでいれば、それだけで。ユタカを好きな人たちは、ずっとあなたのそばにいるよ。でしょ』
『ようこそ。ようこそ。ビューティーワールドへ。悩み多きこのせかいへ。』
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千里眼の祖母、ヤンキーで漫画家の母、そして、何もない私…。
旧家に生きる親子三代の女たちを描いた傑作長編。
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製鉄一族の旧家、赤朽葉家。現代のわたしの視点で祖母、母の時代を振り返る物語。独特な雰囲気、最終章でやっと推理小説ぽくなるが、これは推理小説?ではないかな。
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久々に来ました。
小川洋子の「薬指の標本」
梨木香歩の「家守綺譚」
恩田陸の「三月は深き紅の淵を」
これらの本と同じ様になんの気なしに読み始め、やる事があっても、どうしても読む手を止められない、一生手元に置きたいと思える本。
捨て子で、文字も読めず、地球が丸い事も知らない万葉の「足りている」という言葉が「足りてない」心に響いて離れない。
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戦後、高度成長期、そして現在。
三つの時代を生きたとある家の、三代の女性の年代記。
と書くと、まるで某テレビ連続小説で扱うような、少し古びた、強い女性を謳う小説のような気もするが、この親子孫三代の女性は、どこかしら風変わりである。
千里眼の奥様と呼ばれた祖母、伝説のレディースにして漫画家の母、そして何者でもない「わたし」。
入り口は古き良き昭和の時代の空気を感じ、現在につながる長い時を辿っていくのだろうと予感していたのに、出口はミステリーを読んだ読後感。
3つの章をそれぞれ、違う小説に仕立てた手法は面白かった。
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一気に読んだ。3世代の女性のそれぞれの生き方。
蹴鞠は私よりも少し上で、私はそれを少しあこがれて見ていた終わりの世代。瞳子は私より少し下だけどかなり近い感じ。
それぞれに、自分の思い出と重なる部分があり、思わず自分自身をも振り返ってしまった。
地方の、都会ではないけどその影響はもろに受けるその中で、親やその上の世代が必死で生きてきたのを見つつ、どう受け取っていいのか受け取る資質があるのか途方にくれる「私」たち。
「家」という存在が希薄になりながらも、まだあり、意識せずにはいられない「私」たち。
女性の生き方はこの3代でかなり変化した。でもきっと、男性もその影で変化しその変化に戸惑ってきたのかも・・・そんなことを感じる本でした。
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今まで読んだ桜庭作品と少しだけ色合いが変わって、アジェンデを読んだ時の熱っぽい錆朱の空気を感じた。旧家の三代の女たちの物語に、戦後の日本の歩みと、人の価値観の移ろいが絡まる。
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祖母、母、娘の三代にわたる大河小説ともいうべき作品。ミステリー仕立てで書かれているが、静かな土地の空気や、時代の流れに呼応する物語が美しい。しかし、語り手の自分(娘)のところからは謎解きになってしまって、前二人までの物語の良さが薄くなってしまい残念。
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ようこそ。ビューティフルワールドへ。
鳥取を舞台にした、激動の時代のうねりを生き抜く女三代の壮大な大河小説。
いわば、桜庭版『百年の孤独』。
こんなコピーだと取っ付きにくそうですが、ライトノベル出身の桜庭さんらしく、読みやすいです。
ちなみにジャンルは厳密にはミステリーですが、ミステリーはオマケみたいなものです。
文学的な価値はさておき、日本を舞台にし、第三部では同時代人を主人公にしているところ、あるいは読みやすさという点で、むしろ『百年の孤独』よりも共感できました。
「こうしてようやくたどりついた、現代。語り手であるわたし、赤朽葉瞳子自身には、語るべき新しい物語はなにもない。ほんとうに、なにひとつ、ない。」
語るべき新しい物語はなにもない。
この言葉が、神話の時代と巨と虚の時代を抜けた、いわば、なにもない時代を生きるぼくたちの世代観を象徴しているようにしか思えないのです。
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バックグラウンドに描かれる古き良き昭和が、女性3世代の現実離れした物語に絶妙にマッチしていて楽しめた。
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ミステリーとしての評価は?だが、3代にわたる歴史的背景と女性たちの生涯についてはとてもよく書かれていると思う。ある意味奇想天外なキャラクタだが、しっかりひき込まれる。
万葉と毛毬のキャラが強すぎて、瞳子がかすみ、どうしても尻すぼみに見えるのはしょうがないのかな。
[BOOKデータベースより]
“辺境の人”に置き忘れられた幼子。この子は村の若夫婦に引き取られ、長じて製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれ輿入れし、赤朽葉家の“千里眼奥様”と呼ばれることになる。これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。―千里眼の祖母、漫画家の母、そして何者でもないわたし。旧家に生きる三代の女たち、そして彼女たちを取り巻く一族の姿を鮮やかに描き上げた稀代の雄編。第60回日本推理作家協会賞受賞。
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三世代にわたるミステリーストーリー。
スピード感っていう表現は見合わないけれど、三世代の時間軸が明確かつ自然。
一気に読み切れるスピード感ある作品でした。
桜庭作品らしい、ユニークなキャラクターの名前がすごく良かった!
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三代の女を通し描かれる大河ミステリ
ミステリ要素は微妙だけど。
最初の人は古風で趣があり、二代目の人はエネルギッシュで激しい気質です。また三代目もそのどちらとも異なり鬱々とした印象で、どれも違った良さがありました。(作品的に)
重ねて描くようですが謎解きの部分は余計なのでは。それが全体的に中途半端な不明確さを出してしまっていると思います。
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桜庭一樹は今までにも何冊か読んできたけど、これはすごい。この一冊で完全に私の中の桜庭一樹の位置が二段階アップ。
サンカへの興味が再燃。
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読み応えあり。
とにかく活字が小さくて、1頁にぎっしり文字が詰まっていて・・・ってことではなくて、
昔語りでは、とにかく面白い人が沢山出てきてあんなことやこんなことをいろいろやってくれて楽しい。
3代目ともなるとそんな輝きが希薄になって小さくなって消えてゆく。