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紙の本
丹念な取材による力作
2012/07/02 23:43
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つぶて - この投稿者のレビュー一覧を見る
黒岩比佐子さんのデビュー作である。ろうあのアマチュア・カメラマン井上孝治の生い立ちやその業績の数々が、彼を取り巻いていた多くの友人たちや彼を支えた家族への丹念な取材によって丁寧に描かれている。著者は、要所で井上孝治の写真のもつ特徴へとフォーカスを合わせ、その魅力を伝えることにも怠りはない。
第九章、撮られてから三十数年ぶりにブリキ缶に入った「想い出の街」のネガが発見される顛末が、この本のハイライトといえようか。自分を信じてコツコツと続けてきたことが、後になって日の目を見る。その喜びは、井上孝治にとってたとえようのないものだったはずだ。
井上孝治の写真集『想い出の街』も、本書と共に開いてみてほしい。昭和三十一年ごろの、福岡の街で暮らす人々と、子供たちの生きいきとした姿が写しとられてい、理屈ぬきにすばらしい。
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