紙の本
張り巡らせた伏線とその劇的な回収が見事
2010/09/09 00:15
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る
・“文学少女”見習いの、寂寞。(全320頁)
菜乃ちゃんの親友、瞳ちゃんの、前巻での挑戦的な引きを受けて始まりつつ思わぬ方向に進んだ展開が、次から次へと新たな意味合いを持って読み手を翻弄する見事な物語。「これは本当の三角関係だなぁ」と言える繊細で絶妙な設定を壮絶に描いている。しかも、今回の原典に漂う狂気の世界をトレースしながら、より複雑な想いを重層的に盛り込む凄さもあった。ある意味で独特の耽美も醸しており、これまで以上の古典文学へのオマージュを感じなくもない。それぞれの立場で異なる解釈がすれ違う切なさには『藪の中』(著:芥川龍之介)さえ想起させた。数多の伏線を1つずつきっちり回収していく見事な構成と展開に思わず唸る力作であろう。実は「おマセねぇ、瞳ちゃん」という中1時代の話には儚げな危うさも有するが、瞳ちゃんの大人びた言動で行き過ぎを上手く回避させており、場合によっては激欝にもなり得るところも、菜乃ちゃんの明るい猪突猛進とすっとぼけた言動が程良く緩和している。さらには琴吹さんが何とも言えない存在感で笑わせてくれる。
・ある日のななせ(タイトル+9頁)
前巻の後日談的“夕歌”とのやり取り。自分の居場所というか身の置き場所に苦慮していた琴吹さんの、心葉との距離感を見出したかのような、一種カラッとした雰囲気が良い。
・“文学少女”見習いの、卒業。(タイトル+76頁)
サブタイトルの「サヨナラのための短い物語」が全てを表す卒業式の1コマ。本編の遠子先輩に続いて心葉の卒業も描かれた有意義さと併せて、見事な成長を遂げた菜乃ちゃんが眩しく輝いている。もっと早く出会っていたら違ったのにぃ、という、菜乃ちゃんに感化された琴吹さんが弾けている。
紙の本
さよならの儀式
2010/08/31 06:17
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
長編「“文学少女”見習いの、寂寞。」、掌編「ある日のななせ」、短編「“文学少女”見習いの、卒業。」を収録。
「寂寞」は何故か井上心葉に急接近してきた有人の冬柴瞳の行動の理由を、日坂菜乃が追求して行くお話。その結果として、かつて自殺した一人の少年と、一人の先生が関係していることが分かる。モチーフは「こころ」。
誰かにとってもただ一人の人になりたい一心で行動しただけなのに、状況が少し特殊だったせいで悲しい結果になってしまった出来事と、同じような状況を作られてもその人を信じ続けることで誤解の壁を乗り越えてしまう少女が対比されている気がする。
これは、菜乃が別れの予兆を感じる物語でもあり、心葉にとって過去が過去となっていることを確認した物語でもある。だけど、琴吹ななせは心葉に都合よく使われちゃってる感じがするな。
「卒業」は心葉卒業までの一ヶ月ほどを描いた作品。モチーフは「桜の園」。
最後の思い出作りとお別れの儀式みたいなものだけれど、心葉からの最後のプレゼントは格好良い。いずれななせにも同じものをあげて欲しい。そうじゃないと、記念撮影だけで喜んでいるであろうななせが不憫な気がする。
最後に次巻、次々巻の予告がされている。ああ、時間軸が進むんだね。
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”見習い”最終巻。
この本を読むとよ~く解りますが、このシリーズは
本編(神に挑む作家(下)まで)で読み終えた気になり、
サイドストーリーはいいや、と思ってしまうと、
物語を半分も楽しめないお話なんですよね。
「初戀」の感想で書いた「見習い」は心葉君では、て
あながち間違いでなかった気がします。
菜乃ちゃんも勿論「見習い」なんだけど、それは「文学少女」
以上に、心葉君を前に進ませる存在、て意味な気がしました。
今回のタイトルも、心葉君なら文字通りであり、
菜乃ちゃんなら「子供だった自分(もしくは心葉君に恋していた自分)」
からの卒業な気がします。
あとは「文学少女な編集者」を残すのみですが、これが感涙必至になりそう。
この「見習い」シリーズがあった意味も大きいお話になってるようなので、
楽しみです。
ちなみに今回のお話は、ななせたんファンにもお勧めですね。
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雰囲気ぶち壊しで言うと
「ロリコンとBLとツンデレ」
ちきしょうめ。
時たま出てくる遠子先輩の描写は何故か微笑ましい。
菜乃は本当に可愛いね。
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刊行当初に購入して、それから積ん読していたわけだけれど、この本を読まずにおいて置いたことにすごく勿体無いと感じると共にすごく贅沢なことをしたようにも思う。
個人的には本編文学少女を超えた。
菜乃のがんばりやで友達思いな性格が存分に発揮された3巻でした。
菜乃が瞳を引き止め、そして送り出すシーンは涙が滲んだし、
ラストシーンの告白、それに対する心葉の返答、
なんて、贅沢な片想いだったんだろう。と前向きにまた歩き出す菜乃。
卒業の物語でこんなにあたたかいラスト。
文学少女見習いの卒業。正直星5つで足りないです。
きっと何度も読み返す一冊になりそうです。
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思わず泣いてしまった。ぼろ泣きとかじゃなくて、ほんのり苦くて、だけど心が暖かくなる涙。そんな感じだった。この作品は確かにフィクションらしい起伏はあまりないかもしれない。でも、心がじーんっとするこの感覚、大好きです・・・
外伝の1作目『初戀』はそこまで好きになれなかった。でもこの3作目『卒業』はすごく好き。1、2作目と進んできたからこそだよなぁ、菜乃のささやかな成長が観ていて微笑ましい。心にくる。
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“文学少女”見習いシリーズの最終巻。
内容としてはインパクトに欠けると同時にもう少し深みがあってもいいかなとは思いますが、それでも夏目漱石の「こころ」を題材とし、登場人物なりの解釈を得ているところはいいかなと思います。
私個人としては菜乃への感情移入が非常にしやすかったです。私自身が同じように感じるわけではないのですが、キャラとしてのイメージが終始固まっていたように思います。
しかし、最初から分かっていたことではありますが、最後のシーンはどうしてもたまらない気持ちになってしまいますね。続編も登場するようですし、大人になった菜乃も見てみたいです。
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久々の長編でした。
本編と同じくらい面白かったです。
全体的に暗さと言うか黒さが有るのですが、最後にはすっきり終わります。
終わってしまったことをいつまでも引きずることは必ずしもいけないことではない。そう思えてなりません。
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☆5つじゃ足りないっ!
文学少女シリーズで一番スキかもしれない。
話自体は先がよめる感じだけど、それがまた深く読めていい感じ。
すっごいいい感じに”卒業”が描かれてて泣けた
そしてなにより・・・
相変わらずななせが可愛すぎるっ!
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ドラマティックではあったが、いささか放りっぱなしだった井上くんの立ち直りについて、ここまで書いてあげるのが作者の優しさみたいな巻でした。まだ続くみたいでちょっと不安になりますけどね>半熟作家シリーズ
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見習いシリーズ完結!
今回のネタ本は「こころ」。卒業パートのほうは「桜の園」。
卒業シーンが良すぎる。菜乃がますます好きになった。
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今回のモチーフは夏目漱石の『こころ』とチェーホフの『桜の園』。ヘッセのデミアンも少し引用が。
菜乃ちゃんの成長がみられます。あと、優しさとか。強さとか。
心葉くんが卒業なので、そのあたりのエピソードは少し寂しいけれども、新しい文学少女エピソードがここから始まるのよね。と、いうことで、挿話集も楽しみですが、新エピソードも楽しみ。
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菜乃の視点からみた心葉の成長の話として捉えました。
遠子と離れて、一人で成長していくことを誓った心葉が、少しずつだけれど、自分の過去を客観的に見ることができ、それを他人にも話せるようにまでなったこと、後輩である菜乃のために、ななせにも手伝ってもらいながら遠子先輩のように「事件」に取り組めたことが書かれています。
もちろんこの成長に菜乃が大きく関わったことは事実で、心葉もそれを十分認識しているから、菜乃の物語を書いたのでしょう。色々な事、色々な出会いを自分の小説の糧としていくことが心葉の成長の証で、それが十分にできたときに遠子は心葉の前に帰って来ます。次作を楽しみに待っています。
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文学少女見習い編完結。これは素晴らしい失恋の物語だった。短編だけど、最後の話がとにかく泣けた。……しかしこれで、ななせは一人負け確定だな……
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瞳ちゃんの物語も良かったけどやはりラスト!
真っ直ぐで綺麗でちょっと泣きました。
でもこの涙は前に踏み出す涙。
外伝とはいえ見習いシリーズ、素晴らしいです。