投稿元:
レビューを見る
たまたま本屋で目にとまった本。『アタエル』はいろいろ悪い想像をしてしまって心臓に悪いレベル。しかもあたってるし…。女性の外に出ない鬱屈さと陰湿さを文字にしたらこんな感じと言っていい話かも。後に『タベル』を持ってきたのは確信的ですね。『メグル』でほっとした雰囲気になり読後感は爽やかです。推理ものというよりも季節のめぐりに人生をなぞらえる、テーマ性をもった短編。光あふれる表紙もこの小説によくあっています。
投稿元:
レビューを見る
H大学の学生部に貼りだされる不思議なバイトの紹介。大学女性職員に勧められたバイトをする学生たちの姿を描いた連作短編。
ファンタジーであり、ホラーでありミステリー。各話ごとに作品のジャンルが変わる何とも不思議な作品。しかし、ホラーやファンタジー要素が思わぬ形でバイトをした学生たちに影響を与える、という点があり、そうした意外性と結末が分かってからの暖かさが非常に雰囲気のいい作品でした。
美しさという点では最終話の「メグル」が印象的。毎年庭の手入れのバイトを依頼する女性の真実が分かってからの切なさ。そして登場人物たちの優しさと最後の彼女の言葉と思いがとても綺麗です。
この短編集では味わいの違う「アタエル」もなかなか強烈な作品。学生たちにバイトを進める女性職員は「あなたは行くべきよ、断らないでね」と毎回学生に声をかけるのですが、この短編に限っては「あなたは行くべきじゃないわ、後悔しないでね」と声をかけます。
作品全体の雰囲気の不気味さ、そして結末に思わず背筋が凍りました。この学生はちゃんと注意を聞けよ、と思わずにいられなかったです(苦笑)。
そうした短編もあるものの全体的には読後気持ちが少し明るくなる短編集でした。
投稿元:
レビューを見る
不思議なおねえさんが仲介する、不思議な短期バイトの連作。ややSF要素あり。
全5作は、各話の主人公、仕事内容、結末とテイスト、テーマらしきもの…等々が異なり、全体は絶妙なバランス感を保っていた。
バラエティを揃える連作短編の構成としては、教科書的な出来。各話は、「必須」とまでいえないが、「必要」といえる感じ。
もう少しページかけて、例えば主人公の感情推移をゆっくり重厚にしてくれれば、もっと印象に残ると思う。
一番好きなのは「モドル」か。
3-
投稿元:
レビューを見る
2016.3.7(月)読了。
.
乾ルカさん2冊目。
.
「あなたは行くべきよ。断らないでね」
と無表情だけど美しい女性職員に紹介されて受けるアルバイト。
どれも普通ではない。
半信半疑だったり、断ればよかったと思ったり、行ってみて不思議だったり、大切な気持ちを取り戻してみたり。
.
乾さんならではの物語なんだなーと実感。
.
もっと乾さん読みたいな。
短編集でしたが、中でも『タベル』がお気に入り。
投稿元:
レビューを見る
連続性のある、短編集。分かりやすく言うなら、世にも奇妙な物語。
学生にアルバイトを斡旋する大学の奨学係。
ロクなバイトないんだよね。だけど…
「あなたは行くべきよ。」
「断らないでね。」
奨学係の職員である、少々怪しげな女性、ユウキさんに導かれるように…。
この1冊の中には、5話が納められているのだけれど、いくらでも物語は生まれてきそうな話し。
イメージ的には、土曜の21時から、ジャニーズの若手で連ドラいけそう。みたいな話し。
つまり、ものすごーく複雑でもなければ、ものすごーく感動するわけでもないし、ものすごーく涙をそそる話しでもないけど、少しミステリー、少しホラー、少しヒューマン、少しホット。
一人ひとりの〝僕〟が抱えるそれぞれの悩みや問題を半ば強引に行くことになったアルバイトによって、救われたり、再生や解決してくれる物語。
2016.0214
今年の4冊目
投稿元:
レビューを見る
H大学学生部では、学生へアルバイトや家庭教師を斡旋する求人の仕事もしている。
その中には、ちょっと奇妙な仕事も混ざっていて・・・
「ヒカレル」「モドル」「アタエル」「タベル」「メグル」の5つの短編集ですが、全てに共通して登場するのが奨学係唯一の女性職員である悠木さん。
ちょっぴりホラーで、ふんわり心温まるのは乾さんの作風なんですね。
最初の「ヒカレル」はいい話ながら結構怖くて、ドキドキしながら読みました。
亡くなった後に、生きている人をあの世に引っ張っていってしまうという「引く手」。それを阻止するために、一晩死者の手を握って添い寝をしてください。
そんなアルバイト、想像するだけで怖すぎてもう・・・。
おまけに斡旋する悠木さんには、「あなたは行くべきよ。断らないでね」なんて言われるし。
結果的にはいい話ではあるんですが、とてつもなく怖かったです。
振り返ってみると、どれもこれも温かさを交えつつも、奇妙で怖い。
それでいて最後を美しい余韻で終わらせているのがさすがです。春を心待ちにさせてくれる表題作でもある「メグル」は、怖いながらもよかったですね。
いつでも季節は巡り、美しい花が咲いて気持ちのいい日が訪れる。そう意識することで、なんとも心が晴れやかになるものですね。
「タベル」で佐藤さんがあるものを失って、不思議な力を得たように、悠木さんも失ったものの代償として不思議な力を授かったのかもしれませんね。
人と想いを繋ぐ、繋ぎ手のような力を。
読み進めていくにつれて、少しずつ悠木さんの過去や人柄が見えてくるのもよかったですね。
ちょっと怖いけど、また読みたくなる短編集でした。
投稿元:
レビューを見る
バイトを斡旋する奨学係の謎の女性。「あなたは行くべきよ。断らないでね」と無理やりバイトを押し付けてしまう。不思議なバイトのお話。
投稿元:
レビューを見る
読んでいるうちに、著者が匂わせてくるこの先のストーリーが頭の中でうっすら形作られていくのだが、分かっていても先に待っている答えが見たくて、読み進めるスピードがどんどん早くなるような本だった。その感覚は5つのストーリーすべてに共通していたが、その原動力は話によって様々。ある話では怖いもの見たさでもあったし、ある話ではハッピーエンドを疑わず逸る気持ちでもあった。
生きることや死ぬことについて考えずにはいられない。
物語のキーパーソンである悠木さん目線の話が無いのにも関わらず、彼女が学生に斡旋するアルバイトを通じて、彼女の人物像が見えてくる。きっとどの学生よりもドラマティックな経験をしていると思うが、これくらい客観的に見ている方がミステリアスで良いのかもしれない。同じ物語を、彼女目線で見たらどんな話になるのだろうと想像すると楽しい。
投稿元:
レビューを見る
北海道とおぼしき大学の学生部、学生にアルバイトの斡旋をおこなう奨学係。求人情報に期待してやってきた学生もいれば、ふらりと立ち寄っただけの学生も。それに応対する女性職員は整った顔立ちながら無表情で不気味。必要最小限のことしか話さない。けれど、彼女に「あなたは行くべき。断らないで」と言われると、なぜか誰もが引き受けてしまう。
こうしてアルバイトをすることになった5人の学生を描く連作短編集。ただ1人、彼女から奨められなかったのに職を求めた学生の章のみ、異色のホラー仕立て。それ以外はファンタジー風もありリアル風もあり。いくつかの章で涙が溢れました。
万人受けはしないかもしれないけれど、人との繋がりを大切に思わずにはいられない物語。私はとても好きです。
投稿元:
レビューを見る
舞台が北大でなんか親近感が湧くし、なんとも言えない感情にさせられる短編ばかり。
ふっと不思議な国に迷い込んだかと思ったら、突然血生臭い匂いがしたり、側と思えば青春真っ盛りだったり、人情み溢れてみたり。
それぞれの過去を背負って、未来の扉を開くそのそれぞれの瞬間がたまらなく刺激的な本。
面白い。
短編だけど一冊通して出てくる人がまた謎で、笑うセールスマンの綺麗で無口な女バージョン的存在。
各所に札幌の某所がでてきて、それまた読んでて面白かった!!!!
投稿元:
レビューを見る
初乾ルカ作品です。日常の謎というより世にも奇妙な物語に近いでしょうか。大学学生部女子職員から半ば強制的に与えられるアルバイト。確かに学生たちは選ばれていて、その仕事を通してそれぞれ何かを得て自分と向き合い変わっていきます。どのお仕事の終わり方も綺麗です。最初の一編がすごく怖かったのでびっくりしましたが、これも読み終わってみると決して怖いだけじゃなかった。むしろ唯一悠木さんが勧めなかった「アタエル」の後味が怖くて苦かったです。(でもこういうのも好きですけど。)好みはやはり「モドル」と「タベル」かな。
投稿元:
レビューを見る
最後の三瀬さんの言葉が良いなぁと思ったけれど、なんだかいまいち最後までスッキリ感がなかった。
悠木さんについて最後の章でもっと詳しく書かれると思っていたのだけど…。
投稿元:
レビューを見る
現実と非現実が混ざり合う不思議なアルバイトを斡旋してくれるH大奨学係のユウキさん
ユウキさんから「あなたは行くべきよ。断らないでね」と言われたバイトに行くとなぜか少しだけ人生が前に進むきっかけが与えられる。逆もまた然りなので、やっぱりユウキさんの言うことは聞いとくべき…
投稿元:
レビューを見る
「あなたは行くべきだわ。断らないでね。」
言われた当事者も、読者も、その場は流してしまってもあとで「何だったんだろう、どうして?」と考えることになる。
このひとこと(反対のフレーズもありましたが)があるから、この小説が面白くなっている。
運命を変えるような、仕事(アルバイト)。
それを取り持つ窓口女性。
いろいろと謎があって、つながっていきます。
表紙の絵はどこかすぐわかる有名な場所ですね。
思わず手に取りました。
手袋ははめませんよね。
投稿元:
レビューを見る
「あなたは行くべきよ。断らないでね」無表情ながら美しく、奇妙な迫力を持つH大学学生部の女性職員から、突然に声をかけられた学生たち。店舗商品の入れ替え作業や庭の手入れなど、簡単に思える仕事を、彼女が名指しで紹介してくるのはなぜだろう―。アルバイト先に足を運んだ学生たちに何がもたらされるのか、厄介事なのか、それとも奇蹟なのか?美しい余韻を残す連作集。