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最初から半分ほどまでは、至極軽い世話物だったが、半分過ぎて人の心理のゆくたてが描かれ始めたら、面白い世話物になった。のんびり読むのにちょうど良いくらいの良作
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表の顔と裏の顔。二つの顔を巧い具合に使い分ける江戸は長屋の人情もの。
すりに泥棒に美人局に文書偽造、と揃いも揃って裏稼業持ちの住人たちの中に、ひょんなことからお人好しの正真正銘"善人"が紛れ込んだことから様々な騒動を巻き起こす。
唯一の"善人"加助は長屋にとって福の神なのか、はたまた貧乏神なのか、悪事を止めるストッパーなのか。
根っからの"善人"ってのはほんと始末に負えない。タイミングも容量も悪く、真面目で思い込んだら一直線。巻き込まれた方は溜まったもんじゃない。また間違ってないだけに文句も言いにくい。
悪人ぶってる住人たちも、ナンダカンダ文句を言いつつもすっかり加助のペースに振り回され、いつの間にやら善いことをする羽目に…というより、やっぱりみんな根は善人。表の人以上にしがらみや義理人情に厚い。だからこその"善人"長屋なのだ。
江戸っ子らしいテンポの良さと胸アツの人情もの。やっぱり江戸の長屋物語は面白い。
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軽快、爽快、江戸人情長屋。
事前の情報なしで、読み始めて、善人の集合住宅と思っていたら、最初の数ページで、裏切って(まあ、そうでもないんだけど)NICEタイトル。
裏稼業を持っている(表もちゃんとある)、住民達の長屋。そこに、正真正銘の善人が紛れ込んでしまう。設定だけでも、面白そうな感じでしょ。ドラマの時代物を見ているような気楽さとテンポの良さ。
「犀の子守歌」は、性同一性障害について扱うのだけれど、なるほど、どんな時代にもどんなお家柄でも、現実的に起こりえた話だなって。今まで、あまり考えた事がなかったので、新鮮でちょっと衝撃を受けてしまった。
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悪党が住む善人長屋に、超お人好しの本物の善人が住んだことから厄介事の嵐!
一つ一つのエピソードは短くて読みやすい。
それに悪党と言っても悪人じゃないのがいい。
それぞれの事情があり、長屋全体で助け合って暮らしてるのが優しい気持ちになる。
本物の善人、加助さんのお話もまた苦渋も入った納得の結末だった。
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2023.6.3 読了。
善い人ばかりが住むと評判の通称「善人長屋」こと千鳥長屋に住む住人たちは、故買屋、情報屋、美人局など様々な裏稼業を持っていた。ある日堅気の加助が住人として住まうようになり、根っからの善人である加助は次から次へと人助けが必要とする者を持ち込み長屋の住人たちは問題解決に巻き込まれていく。
☆3.7くらい。
「善人長屋」に住む住人たちに加助が加わったことでなんとも憎めない悪党たちの人情時代小説になっていた。悪党と言っても(江戸の制度では重罪になるが)それぞれが自分の志を持ち、悪党の技術を持って更なる悪党たちを懲らしめる、というような「銭形平次」っぽい物語だった。
善人長屋の住人たちも悪事に手を染めなければならなかった致し方ない理由もあってもっとその辺りのストーリーを深掘りしてほしかった。
個人的には「源平蛍」と「犀の子守歌」が好きだった。
根っからの善人でいざこざを巻き起こす加助にも善人にならなければならない哀しい胸の内を抱えていたことがラストでひっくり返されるように明かされるのも、明るく幸せなだけで終わらせない人生の深さみたいなものが描かれていてそこもまた良かった。
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善人長屋の差配と店子たちは、みんな裏稼業を持つ悪党たち。とはいえ、それなりの信条も情もあって、根っからの悪党というわけではない。むしろみんな良いキャラで好感が持てる。彼らが人助けをする羽目になるのだが、そのために裏稼業の特殊スキルを使うのが面白い。チームプレーも良い。
テレビドラマ化もされたようだが、たしかにキャラが立っているのでドラマ化しやすそうだと思った。続編も出ているので読みたい。
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住人全員が小悪党、故に慎ましやかに生活に気を配っているというのに、何故か根っからの善人が問題ばっかり持ち込むようになるという( ^ω^ )
各話ハッピーエンドでダレそうな所を最後にちょっと苦々しい展開を持ってきてあって流石でした
善人が善人たる所以にもぞっとさせられたり
長屋の住人達同様、加助の幸せを願わずにはいられません
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設定が絶妙。
本棚のカテゴリを「時代もの」としたが、ミステリーとしても面白く、人情ものだけれど、起こっていることは案外と社会派な題材だったりして、さらっと読めるけれどなかなか深い一冊だった。
特に、最後に「善人」加助の物語を知ることで、作品全体の深みが一層増す構成は秀逸。
続編を読みたい。
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表紙の絵が、物語をいい感じに表している!
こんな雰囲気の9つの連作短編。
「善人長屋」と呼ばれている長屋に住むのは
実は裏稼業を営んでいる連中ばかり。
裏の顔を隠すため
表ではなるべく模範的に生きているわけ。
ところが、手違いでそこに
本物の善人・加助が住み着いてしまい
困った人を連れてきては
「ここなら助けてくれる」とやるもんだから…。
差配(大家)は盗品転売を生業とする儀右衛門。
その娘のお縫ちゃんは、家業も長屋も嫌。
けれど、もめごとをおさめるために力を貸す
美人局の兄弟や詐欺師の夫婦など
店子たちの姿を見ているうちに
だんだん意識が変わっていくのです。
持ち込まれるもめごとと解決のしかたに
ちょっとミステリ要素があって
そこもおもしろかった!
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金春屋ゴメス以来の西條奈加 さん。
市井の人情モノ。
秋の夜長に 渋いお茶と ちょっと甘いものを
嗜みながら 一章ずつ 惜しみながら読みたい一冊
゛悪党゛たちが 繰り広げる゛善行゛の物語
一編一編のストーリーに破綻が全くないのは
ストーリーテラーとしての筆者の腕の見せ所
心ささぶられ
心ほっこりさせられます
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母親がドラマを観ていたけれどわたしは観ていなかったので事前情報ほぼ無しで読み始めたけれど、相変わらず西條さんの時代物は素敵だなぁと。ちょっと加助さんが自分にはくどかったけど、そういった読者の気持ちを他の登場人物が代弁してくれるあたりよかったです。