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紙の本
生きること、死ぬこと、愛すること
2009/03/16 21:16
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kou - この投稿者のレビュー一覧を見る
(あらすじ)
終末期の患者の精神的な救済のために存在する人造遺伝子人間、通称「愛人(アイレン)」。
赤ん坊の頃の宇宙コロニーでの事故がもとで余命幾ばくもない少年・イクルは、意を決して「愛人」の申請をする。そしてイクルのもとにやってきた少女・あいとイクルは、丘の上の家で人生最後の日々を送ることになる。
タイトルと、展開によってはいくらでもやらしくなれそうな設定に敬遠していたのですが、評判がいいので読んでみました。そうしたらば、最初の懸念は杞憂に過ぎず、どこまでも純粋で、かつ哀しく力強い物語でした。
物語は、既に種としての生命力を失いつつあるかに思える人間たちが生きる世界が舞台。
生殖能力は失われ、めざましい新たな芸術や発見もなく、宇宙への進出を果たしたという事実も単なる過去にすぎず、世界は紛争と暴力であふれている。
そんな中、イクルとあいの物語はどこまでも日常で、どこまでもイクルとあいという個人をクローズアップしながら、互いの死への恐怖(愛人の寿命はその目的から十カ月前後とされている)と、初めての恋の喜びとを描いています。
その一方で、過去に見捨てられた宇宙コロニーから突如あらわれて「人間とは何者か?」という問いを人類に突き付けた謎の来訪者「HITO」。そのHITOのキリトと対話した国連の女性・カマロや、その残酷な外側の世界とイクルたちの世界の両方に存在する女性・ハルカの側から描き出される世界は、絶望的なまでの暴力と閉塞感に満ち満ちています。
この2側面の対比バランスが絶妙で、だからこそ素晴らしい読後感をもたらしてくれました。
こういうくらーい世界観って嫌いじゃないのです。むしろイクルとあいの物語だけだったら、まあまあ面白いで終わったと思います。
絶望的な・・・まさに人類の終焉が目前に迫っている時、自分たちの生命が祝福されているなどとは到底信じることができない世界で、呪われた存在のままにそれでも生きることを選択する人々と、しっかりと生きたイクルとあいの姿はやっぱり感動的だったと言っていいのでしょう。
結局あいが愛人として造り替えられる前は何者だったのかとか、人類に呪いをもたらしたものの正体とかははっきりしないままでしたが、それでいいんだろうなと思います。
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