紙の本
食事から振り返るサッカー日本代表
2011/06/11 23:32
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:木の葉燃朗 - この投稿者のレビュー一覧を見る
サッカーのアフリカW杯以降、サッカーに関する興味深い本が多く刊行されている。もしもW杯の日本代表の戦跡が芳しくなかったら、このような状況もなかっただろうと想像できる。
この本も、そうした興味深い本の一冊。著者は、福島県にあるトレーニング施設「Jヴィレッジ」の総料理長を務め、2004年以降、サッカー日本代表の専属シェフとして、ドイツ、南アフリカの2回のW杯を含め、海外遠征に帯同している。
本を読むと、海外遠征での食事に対するイメージが大きく変わる。私は、海外では現地の不慣れな料理が出て、それを栄養と考えて無理にでも食べられる選手が日本代表にふさわしい、というイメージを持っていた。それは単なる想像ではなく、かつて(1990年代前半くらいまで)のサッカーに関する記事や本では、そうしたエピソードが紹介されているのを読んだ記憶がある。しかし、実は1995年のW杯フランス大会の予選から1998年の本大会まで、その後も断続的に日本代表の海外遠征には原則としてシェフが帯同している。理由は、主として衛生管理にあるらしい。そして著者は、2004年のドイツW杯予選の際にシェフに就任した。
海外では、食材も日本と同じものが入手できるとは限らない(それゆえ、日本から多くの食材を輸送することもある)。その限られた条件の中で、著者は様々な工夫を凝らして料理を提供している。そこにあるのは、栄養面だけでなく、いかに食事でストレスを和らげるかという思い。例えば著者がシェフに就任後始めたのが「ライブクッキング」。これは、選手の目の前でパスタや肉を調理して提供する方式。これにより、同じ料理でも選手たちの食欲が増し、また著者が選手やスタッフとコミュニケーションを取ることができるという効果もあったという。
他にも、寿司やラーメンなど、遠征では食べる機会のない料理をあえて出すことで、選手たちの気持ちを盛り上げたり、切り替えたりする効果があったという。南アフリカW杯直前のスイス合宿でラーメンを出した時には、何か月も笑顔を見たことのなかった岡田監督が笑ったというエピソードも紹介されていた。
どんな食材を、どのように食べるか。これは精神面に大きな影響を与えるのだと思う。自分の普段の食生活についても、ちゃんと考えたくなる。
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世界最高峰の舞台と言われるサッカーW杯。南アフリカ大会における日本代表ベスト16入りの快挙は記憶に新しいが、その躍進を「食」の面から支えたのが、本書の著者・西 芳照氏である。本書は、ジーコ、オシム、岡田、ザッケローニの時代まで、七年間にわたってサッカー日本代表の海外遠征シェフを勤めている男の奮戦記である。
国と国の威信をかけた戦いとなれば、その裏側も壮絶である。衛生管理、食事づくりの手際、現地スタッフとの協力体制、食事会場設定、食材の手配、周到に準備しても想像がつかないことの連続である。例えば、試合のたびにアウェイの洗礼を受けた重慶でのアジアカップの時のこと。厨房がせまく、ホテル内のレストランとの共有だったためスタッフがひしめき合い、裏側でもアウェイ戦を強いられていたそうだ。また、イランのような異文化環境では、イスラム教徒の断食月と試合が重なり、市場が食材の手配が難航したこともあったという。
本書を読んで改めて痛感するのが、食事とコミュニケーションの関わりの深さである。ワールドカップの遠征は事前合宿もふくめると約一カ月。ホテルから外に出られる機会も少なく、緊張感の続く毎日だ。そのため、食事会場での空気は、チームの状態を大きく左右することもある。実際にドイツ大会の時は、スタメン選手とサブ選手は、それぞれが別々のテーブルに固まっており、壁を感じることもあったそうだ。
西氏が食事会場を盛り上げるために編み出したのが「ライブ・クッキング」である。選手たちの目の前で、彼らの注文を聞いてからパスタやうどんをゆでたり、肉を焼いたりするものだ。調理自体をエンタテイメントとして楽しんでもらえるほか、選手との交流の場としても有効に機能したそうである。
直近の南アフリカ大会では、チーム全体として高地順化が大きなテーマであった。もちろん食の面でも同様である。そのため、「鉄分補充」「糖質補給」「抗酸化物質の摂取」ということを念頭に入れて、メニューが考案されたそうだ。その際の具体的なメニューも、本書に掲載されている。しかし、一番の問題は、おいしいごはんが炊けるか?ということであった。標高の高い地域では、気圧が下がるため沸点も低くなり、炊いたごはんの食感が悪くなってしまうのだ。
そこで活躍したのが圧力鍋。圧力鍋は標高で沸点が左右されないため、ふんわり、しっとり、ねっとりした「正しい日本のごはん」を炊くことができたそうだ。日本代表の活躍の要因は、意外にこんなところに潜んでいたのかもしれない。
「世界を驚かすサッカー」、そんな標語を掲げて勝ち進んだ日本代表。その裏側にある「勝つための食事学」には、日本人でも驚かされることが多いだろう。
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タイトルからも分かるとおり、サッカー日本代表をこれまで7年間にわたって
支えてきた専属シェフである著者の初めての本。
ドラマティックにするための、事実を誇大に表現するような記述は一切無い。
初めて日本代表の遠征に帯同を依頼されてから、アジアカップやW杯を
選手や監督、サポートスタッフと共に頑張ってきた日々を淡々と紹介する内容。
サッカー好きには、日本代表の舞台裏を「食」の観点から知ることができて面白い。
料理に関心がある人には、スポーツ選手を相手にすることの大変さや
やり甲斐を知ることができてきっとタメになるだろう。
淡々と、と書いたけど、事実には物語を超える力もありまして。
思わず胸が熱くなってジーンと来る部分がある。
南アフリカW杯やカタールでのアジアカップで熱狂の日々を
送った方には特にそうだと思う。
違った角度でサッカーを見ることが出来る上に、
巻末には西流最強レシピまで付いてる嬉しい一冊。
なお、著者は福島の方ということで、この本を書き上げて出版する直前に
震災に遭っている。そんなこともあってか、この本の印税はすべて義援金
として使われるとのことです。ご本人もきっと大変だろうに。
初めてこのように本という形を残したというのに、報酬を受け取らないなんて。
著者(出版社も?)の心意気には、ただただ感心させられるばかり。
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サッカーが、好きですか、帯同シェフがいるとは、この本を読むまで知らなかった。
いろんな裏話が読めて楽しかった。あと、圧力鍋の話が、良かったです。
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マレーシアまでの飛行機で読んでいた代表専属シェフを取り上げた一冊。
完全に裏方のスタッフは取り上げられる機会がほとんどないので、このような機会で仕事内容を伝えるのはいいきっかけだと思うのです。
スポーツマンは食にも気を遣ってます。
よし、気を遣おう。
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料理からみたサッカー日本代表の裏舞台と味わうもよろし、
料理人としての職の記録として味わうもよろし。
巻末のレシピを味わうのもよろし。
『料理は世界共通のコミュニケーションツールである』
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そうなのだ、ウキウキ楽しく旅行に行くわけではない。
おいしいものを見つければラッキー、珍しいものを食べてみたい、とか、はずれてもそれはそれで思い出、とか、楽しく巡る時間や気持ちの余裕があるわけじゃない。
環境のまるで違う土地へ行き、プレッシャーとストレスの中、勝たねばならない試合を闘ってくるのだ。
国の代表としてベストのパフォーマンスをするために、コンディションを整えなければならない。
代表が海外遠征でどんな食事をしているのだろう、なんて、そういえば考えてみたことがなかった。ただ漠然と、ちゃんと用意された、何かおいしいものを食べているのかな…と思っていたくらいで。
スポーツ選手として、普段から食事は大事なはずだけれど、ひと月やふた月近くになる長丁場、なおのこと食事はとても大事になってくる。おなかを壊したり体調を崩したりしてはいいプレーは出来ないし、食事でリラックスすることも必要だ。
シェフを帯同するのは当然とも言える。
その帯同シェフ・西さんのエッセイで垣間見る、苦労とやりがい。
そうだよねえ、すべての食材を日本から持っていくにはお金もかかる、現地で調達出来るものは極力して、知恵と工夫でおいしくバランスのとれた食事を用意する。そのためには事前に調べたり、何を持っていくか考え、現場では困難にも対処し。。。
自分の料理で、選手の体重を減らさせない!ベストのパフォーマンスを出させてあげたい!という、24番目のメンバーとしての熱意と誇りが、みしみし伝わってくる。
追記
イングランド代表が試合後のスタッフルームで暖かい料理を食べていたこと、セルティックが試合の終わった帰りのバスのなかで暖かいパスタを出すことなどに、さすがサッカー先進国と感じました。(根性だけでは勝てません、経験と理論に基づいた準備とケアと積み重ね。)
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サッカー関連の本。選手の日常的な一面が見られる。
サッカーの本としてではなく、食事の楽しさが感じられる部分や、料理の工夫の部分が個人的には面白かった。選手たちがリラックスできるように、楽しく食事ができるように、そんな気配りがよかった。
遠征を通じて、料理が様々な国の人とつながる力になる。自国の文化を深く知っていることが、国際的につながる力になると感じました。
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サッカー日本代表の舞台裏が垣間見えて興味深い。料理そのものよりも食材調達についてがおもしろかった。イングランドだとさらに大所帯だそうで、多人数競技の遠征や大会はこれは、金がかかるなと変に感心した。
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2011/7/30読了。
サッカー日本代表という表に立って活躍する人の裏には、それ以上に沢山の人が働いているということを実感できる1冊。
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年間も日本代表の専属シェフとして料理を振舞っているようで、配慮、気配り、技術など日本を背負う人だなぁと思う箇所ばかり。陰で徹する人は目立たないが感謝される人生を送っている。料理の他にも「日本代表」の裏にはさまざま目立たない仕事をこなしている人がいる。旅行会社、スケジュールの調整などの総務、ホテル、医者、健康管理、洗濯、飲み物、清掃、戦術。上を目指す人にとって、メディアのバッシングは心を痛めるときもあるようだが、いちいち気にしては身が持たないので「最善の事をする」ということに徹していた。事前の準備など、戦いを勝つために活動で学んだことを改めて確認する感じで読みました。上で活躍する人は謙虚で驕りがない。料理は世界共通。世界で活躍する人物は努力を惜しんでいない。この著作の印税を全額東日本大震災の福島県南相馬市に寄付する西さん。また以前読んだ永友もそうだ。スポーツ選手のこうした動きは素晴らしいと思う。
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南極料理人の本もそうだったけど、限られた状況で料理を工夫する才は近い性格からくるのだろうか。語り口が似ている。
各国で食材の調達できる状況が多種多様で興味深く読んだ。
南アフリカは中国系の進出で意外と調味料があるとか、東南アジア圏は厳しいとか。
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2010年の南アフリカサッカーW杯日本代表の専属シェフが記した本。
作家じゃないから、内容はそれなりだけど、縁の下の力持ちが組織を支える構図がよくわかる。
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サッカーファンのためのワールドカップ、アジアカップの舞台裏を、厨房からレポートしたファン垂涎の一冊。
あの舞台裏にこんなことがあったとは、これまで一度も語られてきたことのないことなので、とっても面白い。たぶん、もういっかい読み直さないと・・・
ワールドカップの南アフリカ大会が好成績だった裏には、食事が良かったというのも大きな要素だったのかも。
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サッカー日本代表が身近に感じられる一冊。料理人西さんの細やかな気配りとこだわりがステキだし、悪口が一切ないところもいい!レシピつき。ペペロンチーノは作ってみました。