すっごっく面白いぞ!
2013/04/19 01:26
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投稿者:北方守備隊員 - この投稿者のレビュー一覧を見る
読んでいて、ワクワクする本だった。
カブトムシとクワガタの研究成果の本。
カブトムシとクワガタは人気のある昆虫なのに、その生態に関する本は見たことが無い。
単純な飼育法の本ならあるが、野生のカブトムシに踏み込んだ内容のものは無い。
何でだろうと思っていたら、実は研究されていなかったのだそうだ。
そもそも欧米にはカブトムシやクワガタは居ないのだそうだ。
これも知らなかった。
第1章はカブトムシとクワガタの紹介と研究が遅れている話。
筆者の研究方法などの導入。
第2章はカブトムシの戦いについて
カブトムシのオスが樹液を吸っている餌場に別のオスが来ると戦いが始まる。
この「闘争行動」の行われ方を説明。
始めに角を突き合わせて、お互いの力量を確認。
ここで勝負が付くことが多い。
互角と判断した場合は、取っ組み合いへ進展。
相手を追い出すか、投げ飛ばすことで勝負が付く。
始めの角を突き合わせでは、角の大きいほうが勝つ。
しかし、取っ組み合いになれば身体の大きいほうが勝つ。
ほかの動物の「誇示行動」に相当するのが角の突合せになっているようだ。
カブトムシの身体の大きさと角の長さを比較して、身体の小さいカブトムシは、角が長くなっていることを紹介。身体と角で成長資源のトレードオフが行われていることを示す。
カブトムシの身体の大きさは、幼虫のときのエサの環境で決まる。
成虫になってからは、どんなに樹液を舐めても成長しない。
確かに、成虫は脱皮しないからね、ちょっと意外な盲点だった。
従って、腐葉土が豊かでない場所に卵を産み付けられた幼虫は、身体を大きくしないで角を長くする方向へ向かうのだそうだ。
第3章はクワガタ
クワガタはカブトムシと違って、種類がたくさん。
そういえば、カブトムシって、カブトムシしか居ない。これも気づかなかった(苦笑)
そして、関東ではノコギリクワガタの方がミヤマクワガタより多く、関西では逆なのだそうだ。更に、九州ではもう一回逆転して関東と同じになる。
クワガタの戦いもカブトムシと同じ。
出会って、顎を広げてディスプレイ行動。それで終わらなければ取っ組み合い。
身体の大きさでは小さいノコギリクワガタだが、顎広げでは顎が長いために有利。
で、取っ組み合いになると、身体の小さいノコギリクワガタが不利なはずだが、ノコギリクワガタのほうが身体の大きさに明らかな違いがなければ勝率が高い。
その理由が、面白かった。
第4章は小さな身体のものが、生き残る戦術の紹介。
第5章は、カブトムシの飛び方について
ここでは飛行中のカブトムシがフクロウに食べられていることを発見した話が出てくる。
第6章はカブトムシとクワガタの交尾の話
性淘汰を生き抜く生物の話はいつも、考えさせられておもしろい。
第7章は外国のカブトムシの話
カブトムシは樹液を舐めるという餌のとり方をすると言われているが、かつては自分で樹皮をはがしているのかもしれないという、驚くべき見解が紹介される。
カブトムシの良く知られたブラシ状の口の上にクリペウスという硬くなったところがあり、それを使って樹皮を削って溢れてくる樹液をなめていることを筆者が発見する。
まだ詳しくは研究中なのだそうだが、驚きだった。
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幼い頃にカブトムシやクワガタを捕まえてワクワクした経験なら、誰しも持っているものだろう。そんな昆虫界ではメジャーな両雄も、研究対象としては非常にマイナーな存在であるそうだ。理由は海外(特に西欧)で、全くと言っていいほど生息していないからである。
本書は、そんな知っているようで知らない昆虫たちの生態を、進化論的な見地から解き明かした一冊だ。
カブトムシが角をぶつけ合い、メスを取り合う ― 実によく見かける光景である。これなどまさに、同性内淘汰という進化の産物の一例とも言えるだろう。そんなカブトムシの闘争行動に着目した著者は、124例ものオス同士の喧嘩を観察し、ある法則の存在を導き出す。
意外にも思えるのだが、序盤の角を突き合わせた時点でどちらかが逃げ出し、勝負がついててしまうことが大半であるという。投げ飛ばしのイメージが強いカブトムシだが、約58%のケースにおいては取っ組み合いの段階まで行かないのだ。そしてもう一つ重要なのは、必ずしも身体の大きい方が勝つとは限らないということである。
それなら決め手となっているのは、一体何なのか?それは、角のサイズ差による影響が最も大きかったのだ。彼らはディスプレイと呼ばれる角の大きさの誇示で、お互いの力量を測る。つまり、カブトムシの角は、相手を突き飛ばすことよりも、相手のサイズを測る「ものさし」としての役割の方が大きかったということなのだ。
同様の調査は、クワガタのケースでも行われている。こちらの観察総数は281対戦。例えばミヤマクワガタとノコギリクワガタを戦わせた場合、ほとんどのケースにおいてノコギリクワガタに軍配が上がる。これは、勝負の決め手が大顎の長さで決まるため、角が湾曲しているノコギリクワガタの方が有利であるということに要因があるそうだ。
しかし、それだけでは終わらない。著者は、角のサイズが小さいものや、大顎の長さが短いものたちにだって、生存し続けているにはワケがあるはずと考え始めるのだ。ここからが、生物学者としての真骨頂である。こうして、弱者独特の繁殖戦略を次々に見つけ出していく。闘争戦術で勝てないもの達の代替戦術とは、一体どのようなものなのか?
まえがきには「本当の自由研究は、大人になってから」と書かれている。それを愚直なまでに実践した研究成果の数々。夏休みが来る前に、読み終えたい一冊だ。
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カブトムシやクワガタはヨーロッパではまったく身近な存在ではないそうで、世界でも研究はあまり進んでいないそうです。ノコギリクワガタとミヤマクワガタではどっちが強いか(技の種類の違い)とか、カブトムシの角は、喧嘩用というよりは抑止力だったりだとか。この辺は、子ども心が残っていると、なんとなくわかる気もするのですが、メスのほうが捕食されやすいとか、では誰が捕食しているのか、などなど。
すっかり忘れていたけど、僕はやっぱりノーマルなカブトムシが一番好きだなあ。
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最新の生態学の知見から論理だてられたカブトムシ・クワガタムシの研究報告
平易で臨場感あふれる文章で最後まで一気に読めました。それぞれの摂食や繁殖、闘争といった行動生物学的な実験観察を通して、彼らの生態が明らかにされています。
また、他の生物学的な著書でも恣意的に記載されるような内容(適応進化の説明)も、きちんと選択による進化と説明されていたので、すっきりと読むことができました。
次々と新しい実験結果・観察結果が出てくることにワクワクする内容でした!畑違いとなりますが、自分の研究へ向けたやる気が満ち溢れてくる良書でした!
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京大大学院で動物学を学んだ元昆虫少年による一冊。京都の雑木林でのフィールドワークが元になっている。以下はへえーと思ったこと。
▽カブトムシやクワガタを愛でるのは日本独自の文化である。欧米の甲虫研究ばフンコロガシなど▽ノコギリクワガタとミヤマクワガタが戦うと上からの刺激に反応できるノコギリが勝つ▽関東に多いノコギリが関西に多いミヤマを侵食している▽カブトムシなどの小型の個体は、大型個体に比べて餌場に登場する時間をずらしている▽カブトムシのオスは餌場に来たメスに最初は優しいが、交尾ができると餌場から投げ飛ばす。このためメスはなかなか交尾に応じない▽これに対しノコギリは終始紳士的で、交尾が終わってもメスを守るような動作をする▽タイワントネリコという木にカブトムシが集まってくる。口先で樹皮を傷つけて樹液が出るため▽沖縄では雑木林で樹液は出ていない。クワガタの餌場も異なる。
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小中学生にも読めるカブトムシとクワガタの行動生態研究紹介エッセイ。ミヤマVSノコギリの決まり手と勝率や、カブトとクワガタの生殖行動の違い、大型のカブトと小型のカブトの生存戦略の違いなど、直接何かの役に立つとはいえない研究結果がどれも興味深く面白い。それ以上でもそれ以下でもない一冊。