紙の本
ファンタジー、なのです
2013/09/20 00:13
10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:はにーとーすと - この投稿者のレビュー一覧を見る
21歳の大学生、波瑠(受け)と波瑠が愛している裕也とその9歳の息子、椢(攻め)。
3人の穏やかなプロローグからこのお話は始まります。
この3人での日々は長くは続かず、裕也の不慮の事故からとても切なく、淡々と物語は続きます。
21歳の波瑠と9歳の椢の2人だけの逃避行を綴った波瑠視点、「夏の檻」。
この章は涙なくして読めませんでした。
突然の最愛の人の喪失。
父親を亡くした当事者であり自分も悲しいはずの椢が打ちひしがれている波瑠を必死に支えようと、
精一杯気遣う姿にホロリ。波瑠の持って行き場のない気持ちも然り。
しかし大学生と小学生の逃避行はあっさり終止符を打たれます。それから10年・・・
19歳になった椢視点で新たにお話は進んでいくのでした。
亡き父、裕也と同じ道を歩んでいる椢が10年、一度も会っていない波瑠との細い細いつながりを
大切にする姿になんだか胸が痛くなりました。
そう、ラスト近くまでなんだかとても切なくて痛くて、シリアスにお話が進んでいたのですが、
あれー、最後の最後さらっとファンタジーに移行しちゃいました。
なんだろう、このすっと躱された感じ・・・涙も引っこんじゃいました。
まだ椢の夢オチのほうが説得力があるような気がするのですが。
う、これは評価に悩みますねぇ。全体的な雰囲気は良かったのですよね。
なので今回ちょっと甘くつけさせてもらいました。
ファンタジーが苦手な方にはおススメできないお話かなぁと思います。
電子書籍
あい=愛=哀?
2022/06/05 09:25
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:M★ - この投稿者のレビュー一覧を見る
凪良先生の、「死んでも死んでいない」物語。
あいを平仮名書きしたのは、あい=愛=哀、とかけたからかな?
この作品は、死んだ恋人・裕也が、彼のの息子の中に意思(魂)が宿った、バージョン。
面白おかしくギャグタッチの描写が、逆に悲しみをそそる不思議。
岸本波瑠と、恋人・裕也の9歳の息子・桐島椢の物語。
裕也は、綺麗で可愛らしい年下の恋人と、9才の幼い息子を遺して、海で急死する。
葬式の日から、恋人の息子の言動が変わる、死んだ父親そっくり。
9才の子供の「旅に出よう」の言葉に乘って、波瑠は子連れの旅に出る
・・子供の要望とはいえ、他人から見たら、それは拉致。
当然、訪れる旅の終りは、とても悲惨で最悪な状況。
そして法の裁きによる別離の後、恋人の息子は波瑠を探す。
・・・だけど椢は未成年。
誘拐犯にされて、接触禁止条項を設定されて居たら、また波瑠は追い込まれる。
悪意が無くても、それを犯罪と指摘されたら、波瑠に逃げ道はない。
これは、波瑠を罪人にすると気づかない、幼い子供の無邪気が起こした悲劇。
凪良先生は、悪意のない行動を「罪」と断定されて罪人にされる、冤罪を扱う小説をいくつか書いてます。
本人たちの事情より、周囲の大人が犯罪認定をしたら逃げられない、不条理。
★大事な人が死んで、彼の息子の中に宿る・・でもそれは有り得ない。
波瑠を独り占めしたかった子供の悪意ない嘘だと、波瑠は捉えるべきだけど、
波瑠も寂しさを抱える人だから、縋ってしまったんじゃないかな。
頁数の兼ね合いか、BLに拘ったせいなのか、構成が中途半端で、
伏線回収が十分ではない部分もあって、消化不良を感じる作品ですが、
笑いながら泣かせる文で誤魔化す達人の技、「煙幕構成」にはぐらかされる。
この物語、いつか編集加筆して再刊してほしい。
電子書籍
読みながら涙が溢れました
2018/09/07 16:51
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふる - この投稿者のレビュー一覧を見る
幼い椢が、大好きな父親を亡くした大好きな受けを生かすために、父親が自分の中にいるという演技をする攻め。三人で過ごした幸せな時間を取り戻したかったという思いが切なかった。
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あ~これすっごい感想難しいわ! かなり暗い話ではあるんだけれど、その中でずっと同じ想いを持ち続けている椢の一生懸命さに救われる作品ですよねぇ。よく、波瑠に引き連られることなく大きくなったな~と・・・。 めちゃめちゃいい男なんだけれども!やっぱり祐也はずるいよねぇ、あんなに息子はいい男なんだけれど、祐也のがいいな~。最後のあれは要らないんじゃ?と思いながらもあの台詞で大泣きしちゃいましたからねぇ。 これで心置きなく前に進めるっていう感じの終わり方ですごく良かったです。
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う〜ん。凪良さんだなぁ。
ぐいぐい引き込まれるように読んだんだけれど、凪良さんだった。
もうね、エロシーンとかなくていいと思うよ。
ところで、
手紙っていうアイテム。好きだよね?
アレ若干、あざとさを感じてしまったりもするんだけれど、
今回は実体のない方だったので、手紙以外では伝えようもなかったか……でも、あざといw
私はまだ幸せなことに「大事な人(もの)」との永遠の別れを体験してないし、
生きていくのに精一杯で、消えゆくものに心を向けられないから、そう思っちゃうのかもしれないなぁ……。
とにかく、残った二人が一緒に歩いていけますように。
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良かった、かな。前半から中盤にかけてそれぞれの心情が細かく表現されていたぶん終盤がとても簡単に終わってしまったような気がする。伏線かと思ってたものが結構肩透かしされてしまった感がもったいない。ストーリー的にはすごくよかったし、結末も望んでいたものだったから★5なんだけど、やっぱりなんだかどうも終盤サラッと終わらされたみたいで不完全燃焼気味なので★マイナス1に。
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今回も服役です。
これは、重苦しくなりますね、どうしても。
大切な人と生きて行けるのは幸せではあるのですが、ただでさえマイノリティであるのに、何の陰りも無く前に進めるわけでは無いのが、ハッピーエンドでも悲しい。
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突然愛する人をなくしてしまった波瑠と、なくなった男の息子の椢との10年愛。
ただの惚れた腫れたの話ではありませんでした。深く切ない、魂の再生に涙です。
読み始めは正直、9歳と21歳ってアブナイ!と一瞬引いたんですが。
そういう話じゃなくて安心できました。
でも真面目に、二人の関係って少なくとも9歳の方には恋愛感情がありますから。幼いながらにも一生懸命お父さんと張り合っている椢。いじらしさの中にも男としての矜持がすでに芽生えてるんです。
波瑠がぐらっときて、逃避行しちゃった気持ちがわかります。
でも、あくまでも精神的なプラトニックな絆なんですよね。そこが、ほっとする。そして、苦しいほどどうにもならなくて切ない関係です。
二人にとっての逃避行も、世間にとってはまったく違うものとして奇異な目で見られてしまう、常識の怖さが胸に刺さりました。何にも悪いことなんかしていないのに、うわべだけを見て判断されてしまうのは辛かったですね。
離れ離れになってしまった二人が、その後どんな道を選び、どんな人生を送るのか?すごく興味深くて、夢中で最後まで読みきってしまいました。
二人の間には、裕也という共有できる記憶があるからこそ、互いを求め合い共に生きようと決意できたのだと思えました。裕也なしでは生きていけないとまで思いつめていた波瑠の魂を救ったのは、一途に波瑠を追い求めてきた椢の執着ですね。
椢もまた、波瑠という愛する存在があったから物事に前向きに取り組めている感じがします。
絡みは最後にあっただけですが、萌えました。まったくぐらい経験無しのひとまわり年上の美人、というのは色気がありすぎます。ツボど真ん中でした。
ラストのまとめかたは泣かされた後に、ちょっとベタかなと。でも、引きずるのは良くないので、わかりやすく潔かったです。
小椋ムクセンセは、素晴らしい感性の持ち主ですね。ストーリーの主題を見抜いたイラストで、ぱっと見ただけで切なくなります。表紙なんてテーマそのものですね。
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すごく良かったけど、父ちゃんにもう少し存在感があれば良かったかと。
早々に退場する人だけど、要になる人やしねえ。
あと、エピローグは蛇足。あれがなければ、☆5つかなあ。
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**ピュアでほんわかしていて、少し切ない。凪良節の効いた暖かいお話しでした**
片思いの相手が事故で亡くなり、生きる意味を失ってしまったハルと、その彼の忘れ形見のカイ。
幼いカイは大好きなハルと一緒にいることを望み、どれだけ時を経ても変わらない強い想いでハルを包み込もうとする。
心が置き去りになったままのハル、二人を遺して逝ってしまったユウジ、そしてカイ。
三人の強い絆を感じる愛の物語。
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ちょっと攻め受けの熱量が足りない印象…。死んだ攻めの父親を受けがどう昇華していくかが見処だからでしょうか。
父親が憑依したかのように振る舞う小学生の攻め。その攻めを誘拐したとして非難される受け。
年の差、逃避行、同著の真夜中クロニクルに設定が似ているが比べてしまうと前作の方が面白かった。
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確かにベタなストーリーではあるけれど私は好き。愛する男性の子供と恋に落ちるという設定は、男女の関係だと私見が絡むからかあり得ないと思うけど、男同士だと俄然萌えますw年の差さえもポイント高いです。全体に切なさの漂う作品ですが、破滅への逃避行的な話でなく再生へのスタートになる話でよかった。ムクさんの挿絵も本当内容と合っていて素敵です。
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この作品の前に『まばたきを3回』を読んでいましたので、
正直なところ、
また死ネタかい……
とちょっとお腹いっぱいな感じで読み始めました。
暗く重い話の中で、攻の明るさに救われる感があります。
盛り上がり方も上手だったし、切なくもなりました。
前作は完全にファンタジー属性と思って読んだので、
もの凄く感動できたのですが、こちらに関しては
完全にリアルと思って読み進めておりましたので……
山登りをしてて、もう少しで頂上だって時に、ずるっと
足を滑らして崖下に滑落したような気持ちに……。
あのエピは正直いりませんでした。
携帯を二人で捨てた時に、時間は掛かっても二人で
その穴を埋めて乗り越えていくんだ、と感動していた
ので、ラストで興ざめ。
安直な決着の付け方に、最高に盛り上がってた気持ちが
がく~ん!!! と。
ここまでリアル描写続いて、最後にそれ!? と。
それなら攻が、受と日々を過ごす中で、最近父ちゃんの
気配みたいなのを感じることがなくなった、みたいに
してくれた方がよかったんですけど……。
ラストのがっかり感が尋常でなかったので、★-1で。
このエピさえなければ文句なしに★5でした。
あと余計なことかもしれんですが、初犯略取誘拐罪で
傷害も猥褻な行為も身代金要求もないような状態、そして
罪を全て認めて否認もなにもしてないのに執行猶予無し
実刑4年って……どんな裁判だよ、情状酌量の余地ないの?
とちょっとツッコミたくなります。
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エピローグの裕也の言葉にはずるいと思いつつも泣いた。賛否両論あるようだけど、私はあってよかったと思う。
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逃避行からの10年越しの愛情が実るまでの物語。
丁寧で穏やかな描写は凪の海や朝焼けのようなたおやかさ。濡れ場シーンがなくてもいいし、寧ろ唐突に感じるくらいの人間ドラマとしてとてもいいお話だなぁというのが一読しての感想。
消えない罪と喪失の痛みに囚われて死んだように生きていた波瑠がずっと消える事のない真っ直ぐな愛情を持ち続けたカイの思いに救われた事で生きる力を取り戻し、二人の気持ちが重なり合っていった展開は素直に「良かったね」と思えました。
ラスト間際、駐在さんの温かさにほっと心が休まるような気持ちになりました。
あのやり取りを経て、波瑠は自分の罪をやっと乗り越えられたのかな。
エピローグに関しても、波瑠が裕也を乗り越えて、カイの中に居る裕也ごとではなく、カイ自身そのものを求めてともに生きていけるきっかけになれたのならそれでいいんじゃないかなと素直に思えました。波瑠の選んだ行動が美しくも切ない。
挿絵の二人の感情を穏やかに掬いあげてそっと想像を膨らませてくれるイラストもとても素敵でした。
全体的にいいお話だな、と思いましたが100パーどっぷりのめり込めたかといえばウーン? なので星よっつ。(善し悪しではなく、好みで…)