紙の本
江戸の暮らしが生き生きと
2020/09/10 23:47
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投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
時は、江戸の文化文政、あるいはもっと下って天保時代。主人公は、神田あたりで小間物屋を商う町人の女房・お葛...というか、お葛がこの日記の書き手である。
当時の小間物屋といったらある種、美容研究家のごとくのようで、当時の化粧法とかスキンケアとかが詳しく書かれ、さらに着物の粋な着方とか、江戸で人気の男衆はどんなひとたちなのかとか。(ちなみに答は、火消し、相撲取りに与力だとある)、流行の読み物は?などから、ハレとケの食事の違いも、日々の暮らしにかかる費用の話までもあって興味深い。通常の時代小説には、とんとお出まさない、いってみれば女性誌的な内容が満載。
例えば、お葛の家は、使用人を含めて5人家族。その、家計を見直すくだりも、食費が5人で月約4500文、湯屋は亭主だけは、日に2回の贅沢で、一人大人10文、子ども6文で1日計42文...みたいで数字つきで描かれいるリアリティ。
そして印象的なのは、江戸の人は、とことんモノを捨てないし、買わない...ということ。
反古紙も灰も、糞尿にいたるまで回収業者がちゃんといて、古着や修理やも事細かにそろっていて頼もしい。欠けた瀬戸物だって、きちんとカケラを拾って継ぎに出す。
糞尿は、近郊の農家が肥料として買ってゆくのだが、その対価は当時大家のふところに入っていたらしく。お葛の住まいの大家の吝嗇家の妻が、「最近、肥えの量少ないが、外で用を足してくるんじゃないだろうね」と、裏店を一軒一軒聞いて歩くくだりがあって笑ってしまった。
ともかく、すべてのモノが完全に近い形で循環しているので、お金は無いが、日々が暢気にすぎてゆく。損料屋というレンタルショップもあるし、火事を出さぬようにと風呂は湯屋、お惣菜は煮売り屋へ。もちろん、そこでのお買い物やレンタルまでもつつましい。
そして、だからか、なるべく働かずに生きてゆこう...なんて怠け者が、結構市民権を持ったりしていいなぁ...などなど。リアルに江戸時代の暮らしを楽しみつつ、なんか、今よりずっと豊かで人間らしいと思ってしまった。
あのまま発展して今に至ればいい感じの日本だったんじゃないの?いったいどこで間違ったのかねぇ...。
少なくとも、すべてのものが資源として循環するその生活が羨ましい。
紙の本
からからと気持ちいい読後感
2017/05/05 14:41
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投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る
積ん読たくさんあるにもかかわらず、ちょっと寄り道。すっこーんとそしてからりと乾いた気持ちいい読後を求めて再読。お葛と旦那とその周りの人々とやっぱ好きだな。お葛さんが旦那にあきれつつもなんだかんだ日記で話題にしているってことは、お葛さんが思う程枯れてないと思うよ笑。旦那が湯屋で喧嘩して、お葛さん一度は怒髪天になるも、でもその原因に筋が通っていると分かった時の褒め言葉「えらいぞ、旦那。日頃の短慮が実を結んだね」こんなこと、普通言えない。お葛さん、嫌かもしれないが似た者夫婦だよ。たった1年の日記じゃ物足りない!
電子書籍
最高に愉快な1冊!読んで損なし!
2016/11/29 01:13
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投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る
面白くて面白くてケタケタ笑いながら読んでしまった。正月から師走まで1年通して書かれた日記。作者は江戸で小間物屋をしているお葛さん。その亭主がとにかく笑える馬鹿。仕事に精を出さず、見栄っ張り、喧嘩っ早く、子供より子供。亭主の馬鹿っぷりに日記でツッコミをいれるお葛さん。言い回しや的確な指摘が最高に洒落ている。ツッコミながらも季節の行事や当時の風習が丁寧に書かれていて、まるで江戸にいるような気分を味わえる。亭主以外の登場人物も一筋縄じゃいかない人ばかり。だものツッコミも磨かれるわけだ。愉快で気分がいい1冊です!
電子書籍
おもしろくてほろり。
2016/01/30 19:25
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投稿者:まちのあかり - この投稿者のレビュー一覧を見る
大好き。最高におもしろいです。文化文政のサザエさんといったところでしょうか。江戸神田で小間物屋を営むお葛(かつ)さんは27歳。一男一女の母。のんきでケンカっぱやい亭主と使用人の清さんと暮らしている。12か月の日記。年中行事や季節の移り変わりが豊かに表現されていて、やはり日本人っていいなぁと感じました。湯屋で子供を叱る話、鉄漿液の入った壺を亭主に跨がせる話など笑った笑った!知的でおおらかでちゃっかり屋。とても魅力的なお葛さんと友達になりたい。この話、プロローグがちょっと意味深なのです。
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江戸時代(中期?)の小間物屋の女房が綴った日記という
設定なのですが、登場人物の感覚や生活感がリアルで、
最近書かれたブログを読んでいるような気持ちになりました。
「もし200年前にブログがあったら」という感じです。
ここに描かれている生活は、世間といえばほぼ町内、とりあえず
暮らせるだけのお金、少ない家財……なのに、楽しげで豊かに
暮らしていて、生活はその人の心がけなのだということを
改めて思いました。
一月から師走までの江戸の市井の生活描写は楽しく、登場人物も
キャラが立っていて落語のような楽しい、読んで元気がでる本です。
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ものすごーーーくおもしろかった! すばらしい! 大好きだ。
江戸時代の小間物屋さんの奥さんが書いた日記。
まるで現代のブログみたい。日々の仕事と暮らし、子どものこと、お出かけ、おいしいもの、季節の行事、ご近所さんとのおしゃべり、そして夫とのけんかや愚痴。口調もブログ日記みたいで読みやすくて。おもしろくて楽しくて笑えて、そしてものすごく深い。
平凡な日常を大事にして楽しく暮らそう、とかしみじみ思う。
ああ、いつまでも読んでいたかった。続編とか出ないかなあ。
それと、関西弁っていいなと思ってたけど、江戸弁もいいなあーと思った。
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神田の小間物屋のちゃきちゃきした女房・お葛さんの日記の体で、歳時記を読んでいるよう。
解説で堀江敏幸さんが書いていらっしゃるように、お江戸八百八町で庶民が季節ごとに楽しみにしていた行事や風物が、それこそ、使うべき言葉をあらかじめリストアップして消しこみながら物語を綴ったように、満遍なく出てくる。(充実の註釈が、簡潔的確でいい!)それをこの物語のお決まりごととして楽しみつつ、いきいきとして
魅力的な登場人物と共に暮らしている気になって、ちょっと元気になりました。
そして、導入の、筆者が住んでいる古い洋館での出来ごと(あやかし…)がとても好き。
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江戸時代の小間物屋の奥さんの日記。
登場人物が、個性豊かで楽しい。
ほのぼのとしつつ、江戸時代の庶民の生活が知れて、充実の一冊。
トラブルメーカーの旦那さんが最高。
息子のやんちゃっぷりもいい笑
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季節の移り変わりとともに生きていた江戸の風俗を知ることができて面白い。
創作の日記だ(ろう)ってわかってはいるけど、江戸の暮らしいいなって思ってしまう。落語の世界に迷い込んだみたい。
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江戸時代の庶民の暮らしの様子が面白かった。
自分の息子の勉強の出来が悪いから、将来医者になるしかない、とか、鮪が下等の魚で犬の餌か肥やし、人の食べ物じゃない、等々、現代のは真逆の価値観にビックリ!!
でも、女性が美しくなりたいという願望は、昔も今も変わらないのよねぇ。
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小間物問屋の女房が日記の形で綴る、江戸時代庶民の一年。
当然ながら今とはまるで違うその頃の生活がよくわかる。
まるで違うけれど、でも、生きている人たちの日々の思いなどは、案外今と変わらないのね・・と思わされる。
ぐーたらでけんかっ早い亭主に愛想をつかし、家計はいつも火の車。子供はやんちゃで手がかかり・・・そんな中で、怒ったり笑ったり、決して深刻にならずに、したたかにさらりと生きていく。
決して、恵まれた状況じゃないけれど、人生は謳歌してるよね。
こんな風に生きてみたいと、素直に思えるのは、現代と江戸時代・・・ほどよい距離感があるからかな。
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これに出てくる男の人は
ダメ男かいい男しかいないのか
と思ってしまうけれど、
女の人も男の人も全員
楽しいという事が大切。
というスタンスが素敵。
キャラクター皆魅力的。
日記形式で、若干物足りなさというか
内容が薄い感じがした。
でも最後まで興味深く読めた。
その時代の詳しい話が出てくるのも良い。
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奇妙なもの音に目を覚ました場面から始まり、見慣れない箱が屋根裏に出現…という始まりだったから、何かオカルト的なオチがつくのかと思っていたら、
『男もすなる日記というものを…』的な、前置きというか、設定の紹介だったようだ。
時代設定は、文化文政から天保のあたり。
一文は約25円に換算。
どの年かは分からないけれど、一月一日から大晦日までの一年間を綴った、江戸時代の自営業(小間物屋)の主婦の日記形式になっている。
木内さんの作品で、今まで自分が読んだものは、少し重いというか、渋いというか、ピカピカに仕上がったものにさっとひとはけ柿渋を塗って汚し塗装をしたような…そういう雰囲気の物が多かった。
けれど、この「日記」は、ひじょうに軽妙洒脱。
現代のよその主婦のブログを、特に大事件が書かれていなくても、「何を食べた」とか「子供が熱を出した」「スイーツ食べ過ぎて体重計が怖い」「ダンナがどうしょうも無い」というような日常を読むだけで面白い…
そういう感じの本なのだ。
そういう日常を、江戸っ子のポンポン威勢のいい話言葉さながらに、会話のやり取りも生き生きとつづっている。
とても面白い。
「わ~、江戸時代の主婦も、今といっしょだな~」
などとつい思ってしまって、いや、これ本当は現代の作家が書いてるんだから、と現実に戻る。
丁寧な脚注付きで、江戸の暮らしの年中行事や一年間が良くわかる。
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1年を通した江戸の庶民の生活をある小間物屋のおかみさんの日記という形で綴った本。江戸風俗の入門書にぴったり。作者もそのつもりで書いたと思う。
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江戸は神田で小さな小間物屋を営む女房が書いた一年の日記という体裁をとった小説です。
本屋でちょっと立ち読みした時は、買おうか買うまいか一瞬悩んだのです。本当に日記と言った感じで、さしたる事も起き無さそうだし、名手・木内さんとは言え面白いのだろうかと。
全くの杞憂でした。
蓄えも無く将来に若干の不安あっても、江戸時代の庶民が一日一日をそれなりに楽しく過ごす様子が見事に描かれていて、全く飽きさせません。時代考証的に正しいのか私には判りませんが、本当に見て来た様に生き生きとしています。男性陣は落語のようだし、女性たちはしっかりしたたかで楽しい。
いやぁ、上手いですね。