つねならぬ状態となった作者が綴る物語。
2011/09/12 16:04
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
粗いなぁ、といった感じ。
星新一作品の味わいは、人物の心理描写などを省いたシンプルさと、絶妙に組み立てられた物語の構成、ユニークな着想、意外な結末などが、高度にバランスされていること。
しかし、本書に収録の作品は、どれも、まとまった形を成しているが、文章や構成に、かなり粗い印象を受ける。
そう思うのは、「できそこない博物館」で紹介されている、作品にならなかったものの、それなりに物語として出来上がっているメモの文章と似ているからだ。そして、そこに共通するのは、思い浮かんだ着想と話の展開を、そのまま文章にしていった、という感じなのだ。
と、思っていると、それを示唆するようなものがあった。
「二月九日の夜、なにかが私に乗り移った。これらの話が、三時間半ほどのあいだに、頭のなかに語られた。……中略……作家生活は長いが、苦しまずにアイデアがひらめくなど、年に一作あるかないかだ。この十四枚のメモは、次の日になっても、書斎の机の上に残っていた。順序は、そのまま。私の文章になったのは、いたしかたあるまい」
これは、本書の最後に収録されている【話】(ささやかれた物語の章)という作品の一部である。
ささやかれた物語の章は、この話を除いて十四話。上の十四枚のメモと重なるし、ささやかれた物語という章のタイトルも意味深だ。きっと、つねならぬ状態になった作者自身を描いたに違いない。
この、なにかが乗り移って話を語り、それを記した文章スタイルが、収録作品全体にも感じられて、先の感想となる。
星新一作品の味わいが薄まって、なんとなく物足りない。
そんな中から、気に入ったものをピックアップ。
【夜空】
UFOを見ていないなんて、おかしいと言う友人。山のペンションに泊まり込み、UFO目撃を試みる。努力するものの、なかなか見えない。
悲哀感が不安に変わり、感情が揺れ動き、やがて、持ってゆきどころのない怒りがこみあげてきたとき、それを見た。
UFOを見た男への、友人の助言が面白い。小咄的。
【古い家】
迫力ある霊が現れるという幽霊屋敷の所有者の元に、コンサルタントをしている男が訪れた。
その男が提示した、その屋敷の利用法とは。
ブラックジョークのたぐいか、それとも迫力ある幽霊の有効活用か。お化け屋敷じゃ芸がない。
【筒】
海岸に流れ着いた太い竹の筒。口を当てて声を出してみると、理解不能な別の言葉が出てきた。使い方は分からない。
ある日、子供が妙なことを口にした「クカロレン、ソラキバツ」。思いついて、竹の筒を当ててみると、理解できる言葉が出てきた。「あすの夜、大津波」と。
この筒があったなら……。
【収録作品】
〈はじまりの物語〉
風の神話、表紙の神話、天空の神話、海の神話、やじうま神話、さざれ神話、ブガン神話、しらけ神話。
〈もしかしての物語〉
花も嵐も、旅情、海の若大将。
〈お寺の昔話〉
天狗、宿屋、古戦場、満月、花、門前町。
〈夢20夜〉
旅館、夜空、背中、老人、スパイ、ヨウカン、船、古い家、社会、花の女、災厄、夜の話、白い粉、風景、ネズミ、福、虫、営業、昔の話、部屋。
〈ささやかれた物語〉
壺、川、緑、雪、鳥、光、海、竹、鏡、筒、水、夜、寺、空、話。
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中学時代、初めて星新一で読書にのめりこんだ。そのきっかけがこの本。いろんな種類の世界の始まりが詰まってますよ。
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中学生のときはピンと来なかったけど、今読むとかなり面白い。ようかんを使った彫刻の話がなぜだかツボにはまった。
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海の下の、奥の奥で眠っている神の夢。大地をうごめき、すべてを食い尽くす不快なブガン。アステカの怪しげな薬草に酔って義経がみる昔日の幻。満月の夜にとらえた人魚を食べてしまった男たちのゆくえ―。天地の創造、人類の誕生など語りつがれてきた物語が、いま奇抜な着想で生れかわる。あなたを空想の小宇宙へ誘う、幻想的で奇妙な味わいの52編のワンダーランド
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天地創造、歴史、古い日本風の世界などを題材にしたショートショート集。
他作品と比べると粒揃い感が少ないが、作者独特の発想力は出ている。
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初、星新一。
ふっと始まってストンと終わらす。
そんな雰囲気のショートショートがごっそり。
自分の中で膨らめて楽しむ、そんな感じ。
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内容(出版社/著者からの内容紹介より)
天地の創造、人類の創世など語りつがれてきた物語が奇抜な着想で生まれ変わる! 幻想的で奇妙な味わいの52編のワンダーランド。
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ショートショート52篇
[ はじまりの物語 ]
風の神話 表紙の神話 天空の神話 海の神話
やじうま神話 さざれ神話 ブガン神話 しらけ神話
[ もしかしての物語 ]
花も嵐も 旅情 海の若大将
[ お寺の昔話 ]
天狗 宿屋 古戦場 満月 花 門前町
[ 夢20夜 ]
旅館 夜空 背中 老人 スパイ
ヨウカン 船 古い家 社会 花の女
災厄 夜の話 白い粉 風景 ネズミ
福 虫 営業 昔の話 部屋
[ ささやかれた物語 ]
壺 川 緑 雪 鳥 光 海 竹 鏡 筒
水 夜 寺 空 話
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最初のカテゴリーで「???」とし、段々と「!!?」になっていく。
そんな不思議で『つねならぬ』話がたくさん入っています。
これも時間があれば一気に読んでしまいたい本です。
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5つのシリーズ、全52話収録。
神話や昔話風に語られたSF風と少し違ったテイストの話。
30行以内の物が多く、極限までそぎ落とされた物語の構成に舌を巻く。
夢20夜のシリーズが特に好きだった。
最終話によると、最後のシリーズは3時間半で書かれたらしく更に驚愕。
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星新一の作品はいつも考えさせられるものばかりだが、この作品もとても感心するものだった。この本はつねならぬ話ばかりが集められていて、だんだん読み進めていくにつれて、どの話も最後がとても考えつかないと思うような終わり方だった。さらにたくさんの話が入っていて、どの話を読んでいても飽きないし、私みたいなあまり本を読まないものでも、読みやすいようになっていた。いつ読んでも飽きないし、このような発想ができるのはすごいことだと感心した。
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民話、神話、伝承、歴史、
…のようなものを集めた
…ような感じのするショートショート集。
前半は、何だか不可思議な、色々な世界の始まり伝承について。
これがまた「想像に任せる」とか「当然である」とかいつも以上に軽妙な語り口やら、当たり前のように犬猫からカンガルーへと進化することを説明してしまったりするのだから「シュール」、そして「ブラック」。
いつも通り読みやすく、何だか目が離せない作品でした。
ただ、他の作品のような「ほうなるほど」はあまり無い。
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「つねならぬ話」4
著者 星新一
出版 新潮社
p52より引用
“「物語作者にたのみ、いい話に仕上げさせましょう。
われわれ貴族は、文化を育てなくては」”
ショートショートの代名詞とも言える著者による、
お伽話短篇集。
創作神話から昔話風味のお話まで、
くすりと面白くピリリと辛い短編が盛り沢山です。
上記の引用は、
ある一話の中で源義経が生死不明になり、
それを偲ぶ恋人・静御前を見ての貴族の一言。
現代的に訳したならば、
ビッグビジネスの臭いがすると言った所でしょうか。
こうして歴史が作られるという部分も、
結構あるのかもしれませんねぇ。
義経=ジンギスカン説は良く聞いた話ですが、
この話ではまた別のルートや経緯が描かれており、
とても面白い説だと思いました。
ーーーーー
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夢物語
予想外の一冊。
ショートショートではあるが、伏線やオチが私には分かりづらかった。
最初の創生神話は神話と考えればまだ納得できるが、夢二十夜は・・・オチ無いんじゃなかろうか。
本当に夢の内容をそのまま書き記したような、荒唐無稽で納得しがたい理屈ばかり(そのあたりも夢っぽい)。
あとがきで、創作の神様が降りてきてガーッと書き上げた、と書かれてるが、まさにその通り。
いつもの正統派ショートショートとは違う味わいだった。
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通勤のお供に。いつもとは違って、SFっぽくないお話が集まっています。いかにもSFというのではなく、一見民話伝承風なお話です。「はじまりの物語」は色んなパターンの創造神話みたいで、知的好奇心が久しぶりに揺さぶられました。「夢20夜」は、どうしてもオチを期待しちゃう私にはあまり合わなかったです。いやオチてるんですけど、あからさまではない感じです。そういうのも星先生の良さの一つなのでしょうけどね。落ち着いて読めた一冊でした。