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紙の本
出発点の原風景
2004/01/15 09:35
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投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本作は作者のデビュー作らしい。そこには後年の作品にはない特質があれこれ窺えて興味深かった。
一つには「濃さ」である。作者の後年の量産ぶりはすごい。それでも面白いからもっとすごいのだが、しかし面白くても薄いものもある。だが、デビュー当時、長年修行した純文学をついに断念して娯楽小説を書いた作者が搾り出した作品には、そこに至る思いが詰まっていて、それが一つには濃さとして現れているように思う。これは必ずしもほめているわけではない。もっと力の抜けた、すっきりした作品のほうが「斬れる」場合もあるからであり、事実後年はだんだんそうなっていくと思う。ここではプロットも複雑で、作品としての焦点が多すぎるような気がする。だがそれを破綻なくまとめ上げてゆく力量はさすがである。
もう一つは、この作品は嫌味なまでに紋切り型であるということだ。これは逆に、必ずしもけなしているのではない。ここにも純文学と決別して娯楽に入らざるを得なかった、おそらくある種の地獄を見たであろう作者の思いが窺えると思う。いわば自虐的に、これでもかこれでもかと娯楽的要素を組み入れる。そして己の可能性を試すかのように、それらをひたすら研ぎ澄ましてみる。
そうしたある種の自虐というのは、主人公の人間像にも反映しているように見える。己の中の異質性(ここでは暴力性)を苦さをもって認識し、それを解き放つことを快とする主人公と、娯楽性を思いがけず発見し、ある種の苦さを抱えながらもその道に邁進する作者とは重なって見える。だから主人公は、単にハードボイルドだからという以上に、いつになく狂暴であると感じられる。主人公は自分をコントロールできず、あるいはしようとせずに華麗なる滅びの道を行くが、作者の場合にはそれが可能性として新たな世界へ開けていくであろう。
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