紙の本
救いはどこに?
2007/04/08 20:27
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投稿者:あん - この投稿者のレビュー一覧を見る
今更ですが、初めて読みました。話自体は昔から何となぁく聞き知っていましたが、チェコで「カフカの家」を観るまでは特に興味もなくここまで来ました。
大人になったし、そろそろ読もうかと。
予想より読むことは容易く、意外でした。
それだけに、グレーゴルの立場に立って読み進めてしまうので、より辛かった。
家族の為にあくせく働いてきて、ある朝突然虫になってしまって、家族中から疎まれる…こんな虚しいことってない。
カフカ自身は否定していたようだけれど、やはりカフカ自身の投影な気がして仕方ありません。
紙の本
単センサーの物語
2005/09/22 09:03
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投稿者:佐伯シリル - この投稿者のレビュー一覧を見る
三年前にロシアで映画化されたカフカの『変身』が、いま日本で公開されている。監督は演劇界で活躍しているワレーリイ・フォーキンだ。サテュリコン劇場で上演された舞台版の映画化なのだろうか。
さっそくシネマ版『変身』のオフィシャルサイトへ飛んでみたのだが、メイエルホリドのスコアブック脚本スタイルを採用しているところからすると、見せ場である変身のシーンはどうやら舞台版と同じ手法であるらしい。ネタばらしを控えたいので、ここでは一言、役者の演技力にかかっているとだけ言っておこう。
ブランショの『カフカ論』だったか、彼によるアンソロジーの小論集だったか、記憶が定かでないのだが、カフカ世界をトーキー映画(おもに初期のコメディ)になぞらえて語っている論文がある。ドタバタ劇の登場人物たちの思考と動きはその目的性に対して極めて単一的であり反復的であるといった内容だ。
そもそもパントマイムの意味伝達の力は単一性と反復性によって支えられているのだから、そうならざるをえないのだが、言葉を換えればその思考と動きは「虫」っぽいとも言えよう。
技師Kは城に辿り着くことしか考えていないし、グレゴールは会社へ行くことしか考えていない。そうして、行く手を遮られた虫のように、壁にぶつかってひっくり返り、同じところを堂々回りしている。
カフカの描く世界にはメタな問いがない。グレゴールは「会社とは何か」「そもそもなぜ会社へ行かなければならないのか」など考えない。Kにとって城と測量の仕事は問うべからざるものであり、メタからの見直しのない回避不可能な絶対性の何物かなのであって、それを考えたり期待したりするのは読者だけである。
グレゴールは最後に死んでしまうが、メタのない物語に終わりを与えるにはとりあえず死んでもらうしかないわけで、筆を置くためのカフカの方便であって、それが終点でもなければ結論でもないだろう。終わりを探したいなら、カフカの物語は始まりの段階で、すでに終わっているのだ。
紙の本
読者が完成させる小説
2023/07/04 11:26
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投稿者:ブラウン - この投稿者のレビュー一覧を見る
起きたら虫になっていた主人公グレーゴルの視点で、日常が淡々と紡がれていく。整然と出来事を書き綴っているようで、時折、寄り道というか脱線というか、筆が迷っているような文章から、突然にして正気に戻る。あたかもグレーゴルの心の浮沈を表しているように鬱々と語られる物語は、作者が認めるように、決して出来の良いものではない。
しかし、滅多にないことだが、このように欠けた作品は鑑賞者の想像力を刺激してやまない妖術的な魅力を湛えることがあり、本作も例に漏れずその類の怪作だ。他の読者がどう感じたかよりも、これを手に取ったあなた自身がどう感じ、想像力をどう働かせ、本作の欠点をどう埋めるかが重要な作品なので、少しでも気になった方は早めに手を伸ばされることをお勧めする。
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理不尽。理不尽。普段の生活にいきなり入り込んできたシュールなファンタジー。朝起きたら大きな無視に変身しちゃいました。ファンタジーだけど笑い事じゃない。体が大きいから家の中を歩くのも一苦労。家族からはネグレクトされる。(ネグレクトの使い方がまちがっているが、それ以外にうまい表現がわからない)リンゴか何かが背中にめり込んでしまうところが一番せつなかったです。ああ、嫌だな。後味が悪い。一度読んだらきっと、忘れられないでしょう。
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もんのすっごい現実を冷静に淡々と描写するあたりにカフカの偉大さを感じてしまう。クールだねえ。もしかしたら神?
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カフカの代表作ですよねえ多分。この薄っぺらい本に出会わなかったら僕は活字を読んでいないかもしれない。とにかく変!変な話!起きたら蟲になってたってええーー???一体コレはなにかの象徴なのか?それとも単なる悪夢なのか?カフカの面白いところは、カフカを読んであれやこれやと考える人を眺めるところにある。
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会社勤めをしていたフツーの男がある日目覚めると虫(多分甲殻類)に変身していた!さあどうしましょ?というお話。
虫に変身してしまった男の視点から、家族や会社の上司がパニックに陥る様子が冷静に描かれていてすごくリアルです。
食べ物の好みや行動パターンが人間から虫のそれへと変わっていく様子がなんとも物悲しくユーモラス。
彼の世話を妹が引き受けたり、病弱な父親が息子に代わって働きに出ることにより、家族内の力関係が変わってゆくというのもありそうなこと。
「ありえない」シチュエーションでめちゃめちゃ「ありえる」描写をしてます。
このカフカという人、公務員する傍ら趣味で小説を書いていたんだとか。
死ぬ間際に友達に「くだらない雑文だから捨ててくれ」と言ったのに、友達が約束を守らなかったため、死後は誰もが知る偉大な作家になってしまいましたとさ。
「能ある鷹は爪隠す」どころじゃないよなあ。(04.5.12記)
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朝をおきたら虫だったでおなじみのカフカの変身。
サラリーマンの悲しい性を感じずにはいられなかった。
それにしてもこの淡々とした描写は絶妙。というより
かなり好き。終わりの残酷さもなんとも絶妙。
短編なのでカフカワールドを感じるにはかなり
お手ごろ。
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目が覚めたら虫になっていた。
有名で奇妙な小説。
確か、球技大会の前日に、午前四時くらいまでマドレーヌを焼きながら読んでいた。
最後の両親と妹が列車に乗るところが印象的だった。
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何だか悪夢を見ているような話です。読んでいると吸い込まれていくようで、読んでいるのか、夢を見ているのか解からなくなる感じ。。。
面白いです。
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起きたら虫になってるってあれだよね。
読んだときは全然すごいって思わなかったけど、今読めば違うのかな。
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大学の時に授業で原書を読んだ。アンチョコ用に読んだこの訳書も淡々としてるけど、それはさほど原書と変わりなく。にしても、、、気持悪いほど恐ろしい。読み返すことはないだろうけど、印象にはものすごく残っている作品。
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悲劇です。主人公がある日突然、巨大な虫に変わってしまった、という設定です。あまりにも細かい描写。そして息が詰まるほどすごくはらはらする小説です。20世紀の落ち着かない社会とカフカ自身の思い通りに行かない生活の中で、このような思いつめた小説を書くにいたったのはある程度は認められますが、それにしても残酷すぎます。最も残酷なのは、主人公のグレゴールが虫に変身してしまったその直後に自分の運命を自然に受け止めてしまっていること、そして虫に変身しても人間の理性を持ち続けてしまっていることだと思います。
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先日、とある雑誌で平野啓一郎のインタヴュー記事を読んでいて、「日蝕」が読みたくなり(というより何で今まで読んでいなかったのか?教科書の文化史年表にも載っているのにな。まあ村上龍が積ん読になっている時点であれなのだが)どーせならカフカも読んでおこうと。そういうわけなのだが。つか、日蝕読むんだったら三島由紀夫よんどけって、この辺はどーでもいい。
まぁこの作品には特に書く事はないです。いや、書こうと思えばいくらでも書けるんだけど、この作品を語るにはもっとカフカを知る必要がある、と。巻末の解説だけじゃ漠然としかわからないから。
主人公ザムザは必ずしもカフカ自身ではなく決して告白ではない、としかしある意味では秘密漏洩である。とカフカは語っている。孤独を怖れる一方で孤独を渇望していたカフカが象徴する巨大な昆虫とは。是非研究してみたいものだ。
面白かったのは、昆虫になったザムザが初めは立ったり喋ったりしていたのに暫くすると全く人間らしく振る舞うという事をしなくなった(またその理由を考えない)のと、ザムザ自身も家族も昆虫になった原因を考えようとしないところであって、この世界では昆虫になる事は恐ろしいことだけども珍しいことではない、ということだ。
中途半端だが今回はここで終わることにする。
2004/11/17 (Wed)
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僕は女性にしつこくするんですけど、しつこくされた女性の向ける、僕への蔑んだ視線を感じるとザムザもこんな気持ちだったのかなぁと思って天井を這って回ろうかと思います。