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紙の本
裏『漫画道』。
2004/07/05 21:45
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投稿者:ソネアキラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
先週オンエアしていた『BS漫画夜話』の月曜日が藤子不二夫Aの『漫画道』だった。トキワ荘を舞台にした手塚治虫と若き漫画家たちの成長物語で、ここまで純だとかえってうらやましいとも思える作品なのだが、その中で裏『漫画道』として取り上げていたのが、この本だ。
こちらは主に盟友赤塚不二雄との出会いから別離まで書かれている。作者の文体はなかなか硬質で、理系の人かと思わせるのだが、実はSFものでもあったのだ。
長谷は赤塚のブレーン、アイデアマンとして、また、プロデューサーとして黒子的な役割を果たしていた。雑誌でいえば、副編集長、会社でいえばNO.2の専務といったとこだろうか。労多くして功少ないポジジョンでもある。
あの一時代を築いた赤塚ギャグは、長谷や『ダメおやじ』の古谷光敏らのサポートがあってこそのものだった。
長谷は調整能力やバランス感覚に長けていたのだろう。いい意味で常識人であったがゆえに、漫画家としては名を成すことはできなかった。違うだろうか。
個人的なことをいえば、長谷のパロディ漫画は、さほど面白いと思ったことはない。書き溜めた未発表の小説があると睨んでいるのだが。
漫画界のみにとどまらず、星新一、筒井康隆、SF同人誌『宇宙塵』同人とのつきあい、かすかに覚えている絶頂期の赤塚が発刊した『マンガNO.1』。山下洋輔、タモリなどなど、サブカルチャーのうねりの中にいた。目撃者(当事者でもあるが)ならではの作者の記述が、なかなか。
トキワ荘前時代前のつげ義春のこと、永嶋慎二との交流、『COM』で連載中止となった石森章太郎の実験作『ジュン』。それは、手塚治虫のジェラシーによるものであることを改めて知ることとなった。
手塚が勃興しつつあった劇画や後年大友克洋に対してライバル視していたことは、最後まで現役バリバリの漫画家だった証である。赤塚には、どうも手塚ほどの業の深さが感じられない。
しかし、ともかくギャグ漫画で頂点を維持していくことのしんどさったらないだろう。赤塚ギャグは、新しかった。キャラクターたちも、斬新だった。左手で漫画を描いたものを載せたり、見開きでひとコマだったり、次々とあっといわせるギャグ漫画を世に問うてきた。
いくら天才とて、ギャグは古びる。アヴァンギャルドはメインストリーム、あるいはオールドファッションとなって、新たなアヴァンギャルドへ人々は、なびいていく。『がきデカ』がオーバーグラウンドになってきたあたりから、自然と赤塚の漫画はぼくからは、遠いものとなってしまった。会社の経理の使い込み発覚や赤塚の酒に溺れる日々、ぎくしゃくした人間関係から辞めていくスタッフ、フジオプロは、夏から秋へ、ゆっくりと沈みかけていく。
作者も書いていたが、赤塚本人が描いたギャグ漫画がまったく面白くなかったと。ぼくも、数年前か、雑誌で赤塚の漫画を読んで愕然としてしまったことがあった。厳密にいうと、すべてアシスタントまかせで、もう本人は漫画が描けなくなったのだろうかとも。
手塚治虫の死をきっかけに、青春が幕を閉じたことを感じ、作者は、新たなスタートを切ることを決意する。
小林信彦の『夢の砦』にも似た読後感を覚えた。「少年老いやすく、ギャグなり難し」(by小林信彦)という名言を締めの言葉としたい。
紙の本
今も愛を叫んで居る
2004/06/27 13:49
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投稿者:宗田威 - この投稿者のレビュー一覧を見る
伝説のトキワ荘。トキワ荘には居を構えず通勤組だった著者長谷邦夫。しかし紛れも無いトキワ荘メンバーの一人であった。そんな著者の赤塚不二夫をはじめとしたトキワ荘メンバーとの出会いから、赤塚との決別まで自伝的に描かれている。
全体を通じて、マンガへのそして赤塚への著者の深い愛情が感じられる。前半は石森、赤塚、そして長谷本人のマンガへの情熱、そして創生期のマンガにかかわる人々の姿が描かれる。そこから赤塚不二夫と二人三脚で生きてきた長谷の姿、神様・手塚治虫の死と赤塚との決別まで日本のマンガ界の歴史を著者の目線で描ききっている。
日本のマンガを作り上げ支えていった人々の愛と叫び、まさにタイトルどおりにこの本からはかつての熱い魂の叫びが聞こえてくるようである。
マンガも含めて出版不況が続く昨今、多様化し続けている日本のマンガ界を漫然と見過ごすのではなく、今一度先人たちの叫びを聞きなおしてみるのも一興かも知れない。
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