やさぐれのごんたくれ作家のでっち上げ
2012/02/27 11:00
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投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る
太田牛一の「信長広記」の向こうを張って、やさぐれのごんたくれ作家がいっちょでっち上げたる「信長私記」である。どうせ編集者の推挽で無理矢理書かされた連載小説なのだろうが、彼の血湧き肉踊る京都を舞台にした肉弾自叙伝と違っていまいち、いま二、いま三乗りが悪く愉しめなかった。
ごんたくれが尾張織田家のごんたくれになり代わって一族のみそっかすを打倒したり、斎藤道三の娘濃姫と濡れ場を演じたり、後年の前田利家の尻の穴を破ったり、後年の秀吉や家康の人となりを見抜いたりする戦国青春ヤッホーホイサッサのアホ馬鹿噺であるが、例に因ってくだんのごとし。面白くもおかしゅうもない。
竹千代、すなわち当時織田家の人質になっていた家康が、「永久に戦のない世界を作ることが自分の願いである」、と語って、そんなことは阿呆鱈経の絵空事と考えている信長親子を驚かせるところが出てくるが、この家康流の信条って昔からNHKの大河ドラマの女流脚本家の決まり文句であるなあ、と思って軽くのけぞってしまいましたよ。まる。
青空に孤蝶消えゆく寒さかな 蝶人
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『信長公記』は読んでいないけど、本屋で衝動買い。信長の少年期から尾張統一まで、身の回りと心情を中心に描写。よく知られた行状を内面から理由づけしようと試みていて面白い。
アフガニスタンでゲリラを攻撃するプレデターを、USで操作していると聞いたら、戦いは間合いと看破した信長はどう思うだろうか。
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本作は映画・ドラマなどでイメージが完成されつつある織田信長に新たな解釈を試みた類いの作品ではない、信長の内面的独白という形で、人物そのものへの接近を試みた作品といえます。人物が生き生きとしているせいか、ここに描かれているのは現代の物語ではないだろうか…という錯覚をおぼえました。描かれている時代背景や登場する人物により、これは戦国時代の話なのだ…と当たり前のように改めて思うのですが。
特に印象的だったのが、幼い頃の徳川家康こと竹千代との交流を描いた場面です。見守るような眼差しをもって竹千代の話を聞いている信長というものを、本作を読むまではついぞ想像できなかったことでしょう。信長にも信頼しえる家臣がおり、ときに恋をすることもあれば親を思うこともあるように、信長といえども人なのだ、ということを感じさせられました。物語を通して読むと、まだ少年の頃の面影を残す垢抜けしていない信長の姿が浮かんできます。その後誰もが知っているような歴史上の偉人にむかって、若い日の信長が歩みを進めていく姿には時代の区別なく、現代の人々が生きていく姿と何の違いもありませんでした。
歴史が語ることのできない細かな歴史というものに、耳を傾けなければ、こういう作品は書けないのだろうな…と思うばかりです。
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花村萬月らしいと言えばらしいが、暴力的・グロテスクが売りの作家で、かつそれに当てはまる歴史人物を題材にしているのに、信長の尾張統一までをさらーっとなぞっただけのストーリー。
その中に若干のエロと苦悩・困惑があったが、精子と破瓜の血。母乳と血液、という赤と白を添えてクローズアップしただけ。
特に盛り上がりもなく終わった。
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うつけと言われていた頃から尾張を統一するまでの信長の話。
そういえば、後の家康も秀吉も出たのにお市の方は出てこなかったなあ。
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読んどると袖口と指が赤くなる。ここを着色するのは禁じ手だと思いますよ。装丁がなまじいいだけに内容が残念。おまけに点は線にならん。帯に偽りあり。
私記というところからして、「おもしろい時代小説」ではなかった、というか。河尻さんだけはおもしろかったけど。
…感想ったって、これぐらいしか書くことない。指が赤くなる。それだけ。
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織田信長の尾張統一期を信長の視点で描く異色時代小説。
歴史小説的には既知なことばかりであり、まったく見どころなし。
信長の語りが説明的すぎたり、端折りすぎたり、違和感ありまくり。
花村さん作品であるのに、エログロバイオレンスは抑制気味。
装丁の見開き側の縁取りの赤着色が手につく、染みつく、PL問題作品。
ということで、「武蔵」のように続編があって、面白くなってくれば別ですが、この作品だけでは読む意味はないと思います。
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久しぶりに花村萬月を読むと、やっぱりカッコイイなあと思う。残虐さに辟易する部分はあるけど、それも人間が持つ業だからこそ。母親との確執、帰蝶との出会いと別れが印象深かった。
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なぜ織田信長は母を―史上最凶の日本人、その実像。なぜ瓢箪をぶらさげたのか。なぜ合戦に強かったのか。なぜ道三の娘を愛したのか。なぜ父親の葬儀に遅れたのか。なぜ鉄砲を集められたのか。なぜ秀吉を重用したのか。なぜ弟を殺したのか。なぜ地獄をも怖れなかったのか。全ての点が線になる、花村文学だから成しえた衝撃作。
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花村萬月の書く信長ですが、一般的な、生涯を追うものや本能寺の変の裏話のような内容ではなく、青年期を切り取った視点が新しかったです。
秀吉や吉乃との出会いもあり、母との確執や勘十郎の暗殺ぐらいの流れで終わるあたりが、好奇心をもって読み切る量としてはちょうど良い感じがしました。
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面白い本だと思う…ただそれは独白の主が織田信長でなければだ。
どこまでが史実でどこまでがフィクションなのかは取り上げている時期もあり非常にわかりづらい、が確実に言えるのは語られるのは信長の言葉ではなく萬月氏の言葉であるということだ。
「信長公記」に描かれる信長は紛うことなき正義のヒーローであったのに対して史上最凶の血塗られた素顔を炙り出すことが企画の骨子だったのだろうが言わせてもらえばそれ自体が陳腐、そしてそれを調子に乗ってエログロたっぷりに表現してしまってはもはや冒涜の域に手が掛かる。
やめたほうが良かったんじゃないの?と言うのが正直な感想ですな
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信長と言えば…恐怖政治のリーダー。西洋文化の受け入れ、あこがれ。経済活性化を進めるビジネス感覚。といったイメージ。本書も近い言動であるのだが、唸らせるような、グイグイ来る感じじゃないんだよな。家康や秀吉との出逢い、やり取りもなんかしらじらしい感覚を覚えました。難しいです、歴史物は読者の勝手なイメージと期待が邪魔することがあるんでしょう。
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花村萬月は読む機会を逸していたが、歴史物を読みたくて手に取った。織田信長を母親から愛されなかったという側面から描いていたのが面白かった。
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余り評価が高くないが、個人的には非常に興奮した。「二進法の犬」いらいではないかと思う。相当史実を捻じ曲げているのではないかと思うけれど、信長ならさもありなん、と思わせるところが良いと思う。少し家康の描き方がわざとらしい気もするが。