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祝!直木賞受賞。
今、自分の年齢と親の介護からも眼をそらさずに真っ直ぐに敬虔に生きてきたカオルコさんが著したこの本、重たいほどの感動を持って読み終わりました。
犬を愛でるという経験を通して自分の半生を思い起こすと滋賀県の良く見知った(かつて心酔した「ツイラク」にて)風景や方言と共に両親との摩擦や友達との距離感をまた深く思い出します。それは柏木イクでもあり、森本準子でもあり、私であったのかもしれない。
誰にも似てない、という評価、直木賞の選評であったと耳にしましたが、カオルコさんの本はずっと以前からこうでしたし、かつてのノミネート作もしかりですし、何を今更の撰者の言葉と思ったのですが、そこはそれ、本当にようやくの受賞、よかったよかった。
この本は直木賞受賞作はご苦労様でした賞などと嘯いていたこれまでの(ダレとはいわないけれど)私の直木賞本への思いを覆しました。多分にひいき目もありますが。
そんなに好きなのに!なぜ、発刊後即読みしなかったかというと『犬』だったから。これが『猫』だったらまた違ったのですが。
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“獲得したものを数えるのではなく、彼らの厚情により、被らなくて済んだ不幸を数えれば、それは獲得したものとちがい目には見えないが、いっぱいいっぱいあるのではないか。近くと大きくて掴めないが、遠いとぎゅっと掴める、(年をとると、掴めることが増えるのがよい)”P300より引用
姫野カオルコさんの、曇った世界が昔から好きだけど、直木賞をとったこの本は、なんといったらいいんだろう、集大成といったらつまらなく聞こえてしまうだろうか。変わった両親に育てられ(育てられてもいないか)人からは不憫にみえるひとりの女性が、昭和から平成にかけて、いつも傍らにいた(飼っていたとは限らない)犬たちと共に淡々と生きるお話だ。地味で暗くて、読んでる間はただただ彼女の成長と出会う人々の、そこに特には何も起こらないあらすじを追ってるだけなのに、読み終わったとたんに、ぎゅっと胸を掴まれてしまう。ああ、彼女はなんて幸せだったんだろう、この不幸に見える人生が彼女にとっての幸せだったなんて、こんなすごいことないな、と読み終わってやっと、ぐるぐると感情が押し寄せるんである。説教がましいことも、言い訳もなにひとつない、この純粋な物語そのものに、すっかり満たされてしまった。
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直木賞受賞のインタビューを見て、作者の方の奇抜さにびっくりしましたが、内容はヤマというヤマもなく、イクという一人の女性の人生と彼女の人生に沿うように登場する犬たち。
山場のない人生、決して恵まれた人生でなくとも、周りに感謝して生きていきたい。
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昭和の時代を犬とともに生きた一人の女性の物語。目の前の現実を受け止め淡々と生きる主人公の姿に逞しささえ感じる。そして、幸せとは何かと考えさせられる。何気ない生活や日常の出来事が心に染み込んでくるのは犬の存在か。終章が何とも味わい深い。
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昭和30年代に滋賀県の南部に生まれた主人公・イク。彼女の5歳から49歳までの半生を章立てて追った自伝的小説。
幼少期から辛い家庭環境にあったイクは社会人になっても一人で居ることを選択し、平凡な日々を過ごす。人との関わりに消極的であったイクの傍らには、随所で「犬」の存在があった。歳月を重ね、イクも歳を取る。月日が流れるほどに色濃く見えてくる遠い景色。家族のこと。昔の自分のこと。そして今の自分のこと。
一貫して淡々とした描写ではあるけれど、イクを通して、また犬を通して昭和の時代が見えてくる。ラストにかけてイクの心情が静かに、でも確実に開けていく様子が印象的。犬を通して気付く、人と人との心の繋がり。犬が居て良かった。
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私は昭和終わりごろの生まれ。
私は犬を飼ったことがない。
主人公のイクとは全然違う人生。
こういう人生もあるんだなと思う一冊。
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とにかく切なかった。
自分の子供の頃辛かった事がものすごくリアルに蘇ってきた。
私も主人公と同じように両親の愛情を感じられないまま
犬と猫に囲まれて育ってきた。
精神的に親に頼れない甘えられない状況で
あの時そばにいてくれた犬と猫達にどれだけ救われていたのか
この本を読んで改めて思い出した。
階段の下で泣いていた時に頬を舐めてくれた猫、
新卒で入った会社が辛かった時、家の外につながれていた犬がブンブンと尻尾を振って迎えてくれて気が緩んで涙が出てきたこと等々。
私の子供時代、すぐそばにいてくれた我が家の犬と猫達に本当に感謝。
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アメリカ製の同じTVドラマを多くの人が見ていた昭和という時代、トラブルに遭った犬のようにその気性は荒れていて翳っており、決して昔は良かったとか言うための話ではない、のだけれど、人生は良いものなのかも知れないと思わせる、となりにいてくれる犬のような本だわん。
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どんぴしゃり年代の人間にとっては、なつかしい風景が広がる。
昭和33年から、最近までの時代の流れを一緒に楽しめる。
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著者(昭和33年、滋賀県生まれ)の半生を、生活を共にした犬たちの姿とともに描いた私小説。話に盛り上がりは無かったが、多くの一般人にとって戦後の昭和とはそんな時代だったかもしれないと思いました。暗黒の時期があった「昭和」は春の空と同じく澄んではいない。が、正義と平和を信じて真面目に生きてきた主人公、柏木イクにとっても、イクの傍らで生きた犬にとっても良い時代だったと思いたい。「そのころは今から見ると遠くにあり、小さい。だが、そのころまで近づくと大きい。」「獲得したものを数えるのではなく、被らなくてすんだ不幸を数えれば、いっぱいあるのではないか。」振り返ることの出来る過去は素晴らしい。
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直木賞受賞作。全体が関西弁で語られているので、関西圏でない方が読むと読みづらいかも…。関西人の私は日常語感覚で読んでいたので、世界観に入り込めましたが(*^^*) イヌやネコの存在が人の心を温かくしてくれて、自分もイヌが飼いたくなりました(o^^o)
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トイプードルなどの家犬を飼っている飼い主が「可愛いでしょ!」と有無を言わせないことに腹立つ情景は同感で、おもわず「そうだ!!そうだ!!」と言ってしまった。
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著者と同年代なので昭和ど真ん中生まれとして共感するものはたくさんあった。宇宙家族ロビンソンなんてとても懐かしく思い出した。ただ、著者の家族の関係はやはり特殊でした。だからなのかもしれないが子どもらしくない子どもとして世間を歩み、成長した。小説家としてすでにものの見方が普通と違って見えたのかと思う。両親が教師だから頭も良かったでしょうけど。著者独特の世界観がすきです。ただ、犬や猫を挟んでの物語は思考的な感じがした。
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個性的で頑固な父親。理不尽な言葉の数々。
共感できる部分もあり…
またその時々に出てくる犬たちもまた個性的で…。
懐かしいような昭和の香りがする1冊。
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最初の筆致は、不思議なお話しを聞くようでしたが、後半、特に最後はなんとなく、ほわっとした気分にさせる物語でした。