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何よりもフロスト警部の手口は被疑者の人権尊重の点で問題がある。逮捕者を負傷させながら、本人が勝手に転んで怪我をしたと責任逃れをする始末である。フロスト警部は誤認逮捕もしており、決して褒められたものではない。以下の暴言まで口にする。「犯人なんか適当に見つくろえばいいけど、そいつを証明するとなると、くそがつくほど面倒くさくて、くそがつくほど難儀だもんな」(下巻167頁)。
一方で日本の警察の救い難さを描いた『ポチの告白』と異なり、イギリスの警察には警察犯罪を抑制する仕組みがある。取り調べは全て録音されている。「取り調べの際のやりとりが逐一、録音されている」(上巻336頁)。被疑者には弁護士を呼ぶ権利が保証されている。また、フロストの強引な取り調べを同僚警官が注意するなど、健全な人権感覚がある。
さらに『冬のフロスト』と『ポチの告白』を分かつものはフロスト警部が上司のマレット署長に反抗的なところである。媚びへつらうだけのヒラメばかりの日本の警官を描いた『ポチの告白』とは異なる。フロスト警部はマレット署長の陰口を叩くだけでなく、署長の面前でも反抗的である。これは清々しい。
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自分にとってイギリスの正統派ミステリはなじみが薄いが、この作品は別格で世界を代表する警察小説の金字塔だと勝手に思っている。
主人公のフロスト警部は風采が上がらない、行き当たりばったりのいい加減なオヤジ。
更にセクハラたっぷりの下品なトークの連発となれば、ユーモアを通り越して引いてしまう場面も多い。
しかし、知らないうちにこの人物の魅力にぐいぐい引き込まれてしまうのが不思議だ。
気づいたときには上下巻1000頁を一気に読まされてしまうのだ。
本国イギリスでは1984年の『クリスマスのフロスト』からシリーズが始まり、現在2008年に発表された『A Killing Frost』までが出ている。
シリーズは『A Killing Frost』で完結となる。その理由は著者のウィングフィールドが2007年に亡くなっているからだ。邦訳は2020年以降となるという情報もあり、いつの日か原書版のペーパーバックに挑戦してみようかとひそかに思っている。
ともあれ、パワフルで、下品で、やさしくて、人情味があって…そして哀愁が漂うフロスト警部。
猛烈に忙しい主人公の魅力に、どっぷりとはまらせてもらった。
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作中のニ大事件の顛末が消化不良。リズ・モード警部がどうなったのかも語られず。
途中で出てきた老婆と知的障害のある息子の事件が一番衝撃的。
今まで読んだシリーズの中でちょっと劣るかな…。十分面白いけどその後が足りない。
オチはかなり良い。
次がラスト「フロスト始末」
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流石にシリーズ5作目ともなるとマンネリ化は避けられませんが、癖になるストーリー展開はなぜか読んでいて安心出来る、水戸黄門の様な中毒性があります。今回も名作「サウンド・オブ・ミュージック」を「おつむのネジがハズレたように歌いまくる尼さん軍団云々」と下品さ絶好調です。養老孟司氏の解説もコンパクトでよろしい。
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今回のバディは、スケベでドジなモーガン。
いくらなんでも、こんな刑事はいないよなあ。
でも、それを言えば、そもそも主人公のフロストみたいな警部自体がありえないのだけれど。
今回も、いつものフロストや、同僚達、マレットなどのデントン署の面々に会えて、嬉しくてにんまりしてしまった。
いままでの作品同様、何件もの事件が同時多発し、どう解決していくのか、期待しながら読んだ。
リズが拉致されてしまった事件はちょっとショックだった。リズは本当に堕胎したのか?(と思うけど)退院早々に、こんな目に遭ってしまったが、もっとリズの活躍ぶりを見たかった!
最後の終わり方は、エラリー・クイーンの小説のようでかっこよかった!! なるほどね、っていう感じ。本格推理小説みたいで。
とうとう、これで未読は「フロスト始末」だけとなってしまった。寂しさが湧き上がってくる。
本当は、すぐに読みたいけど、もうしばらく時間が経ってからにしよう。