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ロシアの文豪、ドストエフスキーの処女作。
その日暮らしで貧乏から抜け出せない初老の小役人と、病弱で幸薄い生い立ちの少女による往復書簡…
と、話しはこれだけなのですが、手紙という性質を意識しながら読み進めると、会話と違い、文章で語られる熱い言葉の勢いに、自然と引き込まれて行きます。典型的なのは、結びの言葉が内容によって変化するところ。小役人は「〜の友である マカール・ジェーヴシキン」が多く、少女は単にイニシャルで「V.D」が多いのですが、一ヶ所だけお互いに「愛する」と言う言葉とフルネームで書かれているところなど、凝った書き方をしていて驚きました。
小役人の書く文章も、途中プーシキン『ベールキン物語』とか読書をするようになってから教養がつき、次第に手紙の文章が洗練されてくる様子など、とても処女作とは思えない作品です。
内容も、お互い貧困で追い詰められた状況でも、他人を思いやる気持ちを持ち続けている会話のやり取りにおける心理描写が上手いなと思わされることが多々あり、著者の弱者に対する愛を感じました。ラストは、2人の置かれた状況からすれば、いいまとめ方だと思います。