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いやぁ~、しかし
これまたとんでもない新人が現れたもんですね(笑)
ブクログで仲良くさせてもらってる我がミステリー小説の師・kwosaさんのオススメで読んでみたけど、
いや、ホンマ、ワクワクドキドキするような
至福の読書時間を堪能させてもらいましたよ(^^)
(そしてそれを僕より先に読んでいた我がパートナーにも感謝!)
物語は死んだと言われるこの時代に
ミステリーという謎解きの魅力と
共に、
詩情溢れる美しい言葉で
語るべき『新しい物語』を紡いでくれる
文句ナシの傑作。
(自分が言うまでもなく、2010年~2011年の各種ミステリ・ランキングで軒並み上位入選しています)
海外の動向を分析する雑誌を発行する会社のジャーナリストであり、
7ヶ国語を操る主人公の青年、斉木。
この斉木がどの物語にも登場し、
世界中を飛び回る中遭遇する事件の顛末を描いた連作短篇集となってます。
サハラ砂漠に残る「塩の道」で起こる殺人。
限られた人数の中行われる殺人に疑心暗鬼になる人間心理の妙と
意外な結末にニヤリとした
『砂漠を走る船の道』、
スペインを舞台に
風車から忽然と姿を消した兵士の謎に挑む
斉木とその仲間たちの推理合戦が楽しい
『白い巨人』、
南ロシアの修道院に眠る
死してなお、腐敗しない遺体(不朽体)の謎を巡るホラーテイストなミステリーで
ラストはタイトル通り凍えます!
『凍れるルーシー』、
アマゾン奥地の先住民が住む村でエボラ出血熱によく似た伝染病が猛威を奮う中起きる不可解な連続殺人。
どんなに言葉を尽くしても届かない
価値観や異文化の決定的な違いが胸を締め付ける
『叫び』、
そして、理解の届かない存在の前で絶望し、
心を閉じた男の再生を描いた
『祈り』
の全5編。
散りばめられた伏線とその見事な回収術。
一話一話に周到に用意された衝撃的な展開と
トリックの解明ではなく
あくまで『物語性』に重点を置いた作者の視点。
そしてなんと言っても
豊富な語彙や独特な比喩を駆使した
異国情緒に溢れ
読む者を一瞬にして旅人にしてしまう
引きのある美しくロマンチックな情景描写は
まさに錬金術のごとき見事な腕前。
それにしても
読み終わった後に残るこの余韻の心地良さよ。
物語は終わっても
彼らは読み終わったそれぞれの読者の胸で、
記憶の中で、
いつまでも生き続ける。
小説の中に血を通わせ
人生に流れる時間を定着させる新人らしからぬ筆力に
梓崎優の真髄を見た気がする。
(それにしても価値観の違いからくる断絶や絶望という深く重いテーマを、デビュー作にして題材に選んだその気概に惚れた!日本という国の中でさえ、何度この価値観の違いからくる巨大な壁の前に無力感を感じたことか…)
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偶然ブックオフにて手にした一冊。裏表紙の内容説明にぐっと惹かれました。
推理小説の場合読者は、トリックだけでなく明かされる動機についても道理が通ることを求めてしまいます。
本作ではその隙を突かれました。自分の持つ道理や常識が、実は狭い範囲だけのものであって、作中旅人の出会う人、土地、事件では全く別の道理、常識が存在することに気づかされます。そして何より、それが正義であり、真実であることに驚かされるわけです。
道理や常識は、もしかしたらその土地の風土や気候によって作られるものなのかも、と考えたりしました。どこに生まれるか、それが運命を決するのかも。
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はぁ〜
すごいなぁ〜
何が凄いってその文章力が凄い。
新人とは思えないよ。
読みやすいのに叙情的な文章で、異国の荘厳で牧歌的な雰囲気がひしひしと伝わってくる。
深水黎一郎の短編『北欧二題』や『蜜月旅行』なんかを彷彿とさせる。
肝心のミステリについてなんだけど…
これまた凄い。
まず『砂漠を走る船の道』
砂漠という言ってみれば広大な密室の中で起こる連続殺人。
一見無意味に思える殺人の動機が凄まじく、読者を圧倒する。とある仕掛けも寂寥感溢れる幕引きにすることに一役買っている。
『白い巨人』はミステリとしては小粒だが爽やかな結末で魅せてくれる。
『凍れるルーシー』だが、こういった味のものも書けるのかと驚いた。
ミステリとしてもかなりのでき。
『叫び』は冒頭の『砂漠を走る船の道』で見せてくれた驚きを違った世界で再現している。
エボラ出血熱という今現在タイムリーな題材で、ほうほう、空気感染はしないのか。と少し勉強にもなったり。
そしてラストを飾る『祈り』
ミステリとしてより斉木青年の物語を締めくくる為の作品といったイメージ。
今までの物語を振り返り、新たな門出を祝福するかのような幕引きには感慨深い思いさえ湧きます。
あぁ…
こんなにも長文の感想を書いたのは久しぶりだよ…
それだけ衝撃的な作品だったってことかな。
間違いなく傑作!
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文章が洗練されていて素晴らしい、字を追っているだけで楽しくて、それぞれの作品の世界に引き込まれていった。構成も緻密に計算された連作短編集。
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世界を旅する主人公が、それぞれの国で遭遇する事件の短編集。
ミステリーズ!新人賞を受賞したという「砂漠を走る船の道」がやはり素晴らしい〜。文章が美しく、絵のような異国の情景が目に浮かぶ。加えてミステリー部分もしっかりしていて(トリックというよりは動機)このコンビネーションがなんとも絶妙。著者の他の作品も読んでみたい!
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連作短編集。
ジャーナリストの斉木が各国で出会う謎を、旅情感たっぷりに魅せています。
異国の文化が思わぬ展開と結びつき、驚きとともに人間の奥深さを感じる良作。
文学的な良い雰囲気の作品だったのですが、トリックの技巧を意識しすぎている印象もあります。同じようなパターンが何度も続いてちょっと食傷気味にもなりました。
ネタバレ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【砂漠を走る船の道】砂漠という厳しい環境下での旅の最中、突如起こった殺人事件。なぜ今、この状況で殺人が起こったかというのが一番のポイントになっています。
取材で同行していた日本人・斉木の混乱しながらの推理と、砂漠の旅の過酷さが相成って緊迫した雰囲気が良いです。
真相に驚き、更にピンチから一転する展開に興奮、ラストには爽快さも味わえました。
この状況下ならではの動機はかなりインパクトがありおもしろいです。
しかし、単に目印ならば一番親しくない斉木をまず殺害するのではと思いました。説得できないことを見越して手強い相手からやっつけたのかな?
【白い巨人】「キオクニゴザイマセン」の使い方が上手いです。とぼけた棒読みの表記かと思いきや。
過去の兵士と女性の消失事件と、サクラの傷心を語りながらのスペイン散策の描写が切なく美しい。
兵士パズルの推理合戦と相成って消失事件が語られますが、こっちの方はちょっとイマイチ。
【凍れるルーシー】突如明らかにされる殺人事件にびっくりしました。
とはいえ、猫の鳴き声だけで殺人と決め付け問いただすのは性急な気がします。
オカルト要素を残したラストのその後が大変気になります。
【叫び】エボラ出血熱により壊滅状態となった村で、さらに起こった連続殺人事件。感染病の恐怖の中で殺人事件まで起こるという混乱と緊迫感には身の毛がよだちます。
斉木の常識・良心・倫理が揺らいでいく様も怖いです。
アシュリー医師と斉木の推理合戦の内容も凄まじい。どちらも返り血を防げるという点で推理していましたが、それが返り血を気にする必要はなかったという真相に行きつく流れがおもしろい。
この動機を文化の一言で片づけられるのかは疑問ですが、斉木とアシュリー医師の成す術もなくうなだれる姿には胸が痛みました。
【祈り】これだけ凄まじい事件を経験していれば、精神が病んでしまうのも無理はないかも。
これまでも叙述トリックが多用されているので、斉木と森野の正体には気づきやすいものの、斉木の病みと森野の友情がよくみえます。
「祈りの洞窟」の解釈によって心情を映し、これまでの事が斉木にどう影響を与えたのかの総括になっています。
旅情ある雰囲気とは裏腹に凄惨で衝撃的な内容の本作ですが、最後には文化の違いを超えた人間の本質を見つめる希望ある締めとなったと思います。
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砂漠を行くキャラバンを襲った連続殺人を始めスペインの風車の丘、ロシアの修道院などひとりの青年が世界各国で遭遇する数々の異様な謎を解き明かしていく。
なんとも不思議な雰囲気の話。
最初の「砂漠を走る船の道」はミステリーとしてとても面白かったが他は微妙。
謎解きというより異国文化を描いた作品。
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世界一周異文化交流ツアーみたいな設定 新鮮感がある。
砂漠の物語は自分なりに一番好き、特に動機の部分がすごく衝撃を受けた覚えはあった。
他のは少し物足りないような気がするけど、どうかな・・・
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異国ならではのホワイの種明かしと犯人絞り込みの過程が面白い。解説にある通り現地に行かずに読んでいて違和感を感じない舞台を作り上げる力が凄いなぁ。謎のアレコレは気になれどある男女のお話とスペインのとある街に伝わる昔話が交錯する『白い巨人』が好き
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「斉木」という青年が世界各国で遭遇する異様な謎について書かれた4つの短編と,その後日談が書かれた短編集。文章が詩的であり,好きな人にはたまらないんだろうけど,あまり肌に合わなかった。
「砂漠を走る船の道」,「凍れるルーシー」及び「叫び」は,動機に焦点が当てられた作品。いずれもその異様な動機は,心に残る。「白い巨人」は,日常の謎風のミステリだが,スペインが舞台であり,叙述トリックにより主人公がスペイン人であることが伏せられている。「白い巨人」は,サクラと表記されているスペイン人男性とアヤコという日本人女性の恋の話で,読後感がよい秀作。
白眉は,「凍れるルーシー」。生ける聖人だった修道院長であれば死体となっても腐らないと考えて殺害したという動機も驚愕だが,聖人リザヴェータの腐らない死体が消失したのは,聖人リザヴェータが復活したという真相がなんとも…。ジョン・ディクスンカーの火刑法廷を思わせるラストが秀逸。
ただ,5作目の「祈り」がイマイチ。読解力があれば名作なのかもしれないが,詩的な文体の読みにくさも相まって,なにが言いたいのか分かりにくく,楽しめなかった。トータルでは★3かな。
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外国が舞台の連作短篇集。
勤める雑誌社の仕事として、一人の青年が全ての話に関わっている。
それぞれの話の中にこめられた謎、そしてその地に根差した文化。
話的には面白いのだけど、私的にはあまり好きな創りではなかったかも。
2016.9.2
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旅小説とミステリの融合。乱暴に言ってしまえばそうなるんだけど、短編として一つ一つのクオリティが高い。
連作として、「叫びと祈り」に見事に収束する素晴らしさ。
衝撃的というより、じわりと胸にくる。
文章が洗練されているからでしょうか。
ただ、ストーリーにあんまり厚みが感じられない。
本格好きにはいいのでは。
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2011年の本屋大賞ノミネートということで読んでみた。
訪れる主人公(雑誌社に勤務)が海外の様々な場所で体験した短編集。
サハラ砂漠のキャラバンでの殺人(砂漠を走る船の道)、
スペインの風車が広がる街での仲間との旅(白い巨人)、
ロシアの修道院での朽ちることのない遺体の話(凍れるルーシー)、
アマゾン奥地でのエボラ出血熱(叫び)、
そして最後に病院のような場所での友人との会話(祈り)。
『都市の空気感を再現する文章の美しさ、豊かさも目を引く』と解説にあるように、本当にその場を感じさせる文章が秀逸。
ただ一点、ロシアの話の最後、どういうことになったのかがいまだに理解できないのだが、自分の想像力がたりないのだろう。
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世界の旅×本格ミステリ
ミステリーズ!新人賞の受賞作「砂漠を走る船の道」を含む全5話を収録。世界各国で遭遇する事件は、私たちの価値観・倫理観の物差しでは計れないものばかり。恐怖や絶望、様々な感情が押し寄せてくるだろう。
評判通り「砂漠を走る船の道」は傑作。ホワイダニットもさることながら、情景描写の美しさも目を引く。さながら自身も旅人になった気分だ。だが、2話目以降は、著者の個性的な文体が鼻についた。ミステリ的な仕掛けも物足りなく、尻すぼみになってしまったのは残念。それでも、受賞作を読むために本書を購入する価値はある。
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2015年:84冊読了(長編56、短編28)
今年のミステリーツアーはここまで。
来年も良いミステリーな年でありますように・・・
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≪なぜ叫び,何を祈る≫
ミステリーズ!新人賞受賞作の「砂漠を走る船の道」を含む短編集.
話に共通するのは,「なぜ」という動機の部分のアイデアと不気味さ.
ミステリって普段は,たとえ人が殺されようとフィクションだから気楽に読んでいたり,不気味なに思う時があってもそれは殺され方だったりするけれど,これは如何に自分の世界が狭く,自分以外が本当に自分でないと再確認させられる.
そして,その結果起きた探偵役でもある斉木の変化。
今までワイダニットは興味なかったけれど,これ読むと動機の部分も考えながら読むようになっちゃいそう.