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紙の本
“歌のような”感情の言葉
2009/01/21 12:38
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
不思議なテイストをもった本。著者は「裏声の幸福論」というけれども、裏声の人類学、裏声の性愛論、裏声の健康法、裏声の人生論、裏声の教育論と、時々の関心と心身の状態に応じて、さまざまな読み方で楽しむことができる。
葛飾北斎の春画に書き入れられた、蛸と睦み合う海女の「よがり声」「もだえ声」「あえぎ声」の話題から始まる。まさにそれが裏声で、そのルーツはニホンザルのメスが交尾中に発する発情音(他のオスを呼び込み、乱交を続けることで、優秀な子孫を残すための「精子戦争」を誘発する)にある。
「励めば励むほど、女性はさらに言葉にならない声を発し、男性の嫉妬を呼び起こしてしまうのです。そして、嫉妬した男性はこれでもかこれでもかと、声と運動で[いま睦み合っている女性を]独占した確信を得ようとする。……追いかけっこを繰り広げた末の、ゴールに向かうときの男性の声、それはもう、独占を果たすことができた“安心の声”です。ですから、それ以前より高くなり、時には裏声になることすらあるのです。」
そんな、きわどい(が啓蒙的な)話題をふりだしに、プレゼンテーションの成功の秘訣は裏声にあった、ストレスを解消しカタルシスをもたらす泣き声の正体は裏声だった、裏声こそが人類本来の声だった、吃音も嚥下障害も音痴も裏声で直る、等々の、読んでいるだけで心と体が元気になる話題が続き、そして、裏声を奪われた子どもたちには食育とともに「音育」が必要だ、「発声教育で大切なのは、裏声の活用です。声楽の知恵を活用して、正しく美しい声を育むことは、よりよい社会を築いていくうえでも大変重要なことなのです」と、高らかに宣言して終わる。
最後まで面白く読んだ。とりわけ面白かったのは、言語のルーツと裏声との深い関係をめぐる話題だった。
「最近の人類学研究では、咆哮や唸り声から言語が発達したのではなく、私たちの祖先、原人に至っては、咆哮に知性と感情が加わり、“歌のようなもの”によって会話をしていたという仮説が登場してきました。やがてその“歌のようなもの”が、言語と歌、音楽へと同時に分岐していったというのです。」
「私は、もともと声は一つだったと考えます。それは裏声のような声だったに違いありません。だからこそ、遠くへ響かすこともでき、音程も付けられたのでしょう。やがて、言語という文明が生まれたことによって、音の高さや強さなど、音調で表現する必要がなくなってきたのです。そのため、会話の声として、地声が誕生したのではないかと思われます。」
「日常では、遠くの人と会話するわけではないので音量の大きさも必要なく、音程も低い会話専用の声が生まれた、すなわちそれが地声であると考えるのが妥当でしょう。それに対して、音の高低をつかさどる変化に富んだ声、感情の声、歌う声、これが裏声なのです。言語が生まれて地声が生まれましたが、その中で取り残された声が喜怒哀楽の感情面だけの声であり、理性から遠のいた声こそが裏声だったのです。」
地声ではなく、裏声によるコミュニケーションで営まれる社会生活とはどのようなものなのだろう。もしかすると、平安時代の貴族たちは裏声で話しあっていたのかもしれない。和歌とは「歌のようなもの」の生き残りの姿だったのだろうか。本書を読みながら、そんなことを考えていた。
紙の本
裏声
2020/12/16 12:33
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投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
裏声のいろいろな効用が、分かりやすく解説されていてよかったです。魅力を増すだけでなく、試してみたくなりました。
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