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著者である桑野さんご自身もおっしゃられている通り「バフチンの全体像をできるかぎり簡潔した」本となっている。新書というジャンル(?)のイメージに違わずかなり読みやすく、その割に、けっこうディープな(公刊されていない)ノートやメモなどのテキストも引用されたりしていて面白い。新書で読んで「このテキストいい!原典たどってみよう!」と思ったときに、それがない、というのが多々起こるのではないかと思われる。
私が特に参考になったのは、本書の前半から中盤部分にかけて、何回か繰り返される、<対話><対話原理>と<間テクスト性(インターテクスチュアリティ)>との違いに関する説明の部分。私のように、フランス系の言語学・文学から思想系の本を読み始めた人にとっては、あたかも、この二つがほぼ同じものであるかのように考えられがちだけれども、その違いを丁寧に説明してくれている。
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バフチンの半生とその間の思索の流れについて書いている。
対話性や笑い、カーニヴァルやグロテスクなどの語句については、小説以外の場面にも応用可能なものであり、それらへの導入的説明が書かれているため、初心者にも分かりやすいものになっているし、とても参考になる。
バフチン年表や文献目録もついていて便利である。
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ロシアの文学評論家であるミハイル・バフチンの生涯を追いながら、
彼の主要な概念・用語・理論枠組みなどを解説していく書籍。
新書というメディアでバフチンの書籍が出版されるとは思っていなかったので、とても驚いた。
バフチンは文学評論家ではあるが、おそらく、広くコミュニケーションについての考察を残した人、と捉えたほうが良いかと思われる。
現在でも、質的(定性的)な視点から研究を行おうとしている、
心理学・社会学・言語学等の諸学問の人々の論考において、
ときどきバフチンの引用が散見される。
おそらく、単なる相対主義でもなく、融合と言うほどの一体化でもなく、
それぞれの「声」がそれぞれのポジションを保ったまま、
それでいて何らかの全体性が示されうる…という(まことに抽象的な!)有り様を説明するときの、
極めて重要な示唆を与えてくれているのだろうと思われる。
正直に言えば、バフチンの主要概念をうまく把握できたわけではない。
しかし、
「こういう概念で、この現象を読み解いたら、理解できるかも!」
という視点で捉え、記憶に入れておくと、いずれ役に立つ気がする。
一般書とは言えないが、縁のありそうな人は目は通して損はないと思われる。
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尊敬する方にバフチンを読みなさいと言われ、読んでみた一冊。とってもおもしろかった。原典にもできれば触れたいところ。
ドストエフスキーを読んだことがあったので、ポリフォニーは思ったよりもなんとなくつかめたような気がする。
声の多層性は人間誰にでもあると感じた。
ステキな友人に小島信夫の『残光』をオススメされて、その登場人物が「私を使って下さい」と言ってくる言葉とシンパシーを感じた。例えば、マンガ家や小説家は登場人物といかに出会うのか、声の多層性の観点から考えると面白いんじゃないかなと感じた。おもしろかった!!バフチンおもろい。
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少し読む時期が飛び飛びになってしまったこともあり、咀嚼しきれていない。
だがバフチンの思考は、人間の根源的な社会性をドストエフスキーやラブレーの文学の徹底的な読解から導き出しているのだということは把握できた。
教育学研究の観点からすれば、溶解や一致をみることなく複数の独立した多声が響きあうポリフォニーの概念は、たとえばバタイユに依拠する京都系教育人間学とはまた異なった、子どもと世界との関係性を描く道具立てとなりうるかもしれない。
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おすすめ資料 第274回 (2015.3.6)
"猫と犬は、まったく異なる生き物である。猫は秘密をかかえているが、犬にはそれがない"・・・この犬が聞いたらびっくりしそうな発言は、大の猫好きバフチンによるものです。
バフチンは文学、美学、哲学、言語学、記号論、心理学に精通した学者として大変有名ですね。
ただ読者が抱くバフチン像は、どの著作を最初に読んだかということが強く影響してくるようでかなり多様化しています。
バフチン入門の入門として本書を読んでみませんか。