紙の本
戦争経済が成立した世界
2010/04/17 14:01
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
同名ゲームのノベライズであり、単体で読めるSF小説となるように書かれている。このため、世界観や背景の説明も加えられており、ゲームをやったことのない読者(ボクの様な)に親切な設計になっていて、おおよその事情は理解できるのだけれど、やはり色々な出来事を積み上げてきてここに至っているので、これ1冊で背景を完全に理解できるかというと、それは難しいと思う。なので、ボクはこれを単体の小説として読む。
主人公はソリッド・スネークというコードネームを持つ、現在は軍に所属していないスニーキングのスペシャリストだ。過去、数々の世界平和を揺るがす事件を解決してきた彼は、ビックボスと呼ばれる、これまた英雄のクローンとして生み出され、今まさに、急激な老化と間もなく訪れる死に直面していた。しかし世界は彼を休ませてはくれない。因縁のある敵であり、同じくクローンとして生み出された兄弟であるリキッド・スネークの陰謀を打ち砕くため、戦場に赴く。
物語中で盛んに語られるのが「戦争経済」という言葉だ。戦場に立つ兵士たちはナノマシンを注入され、その行動は全て管理される。火器は完全に管制され、自由に撃つこともできない。この仕組みがもたらすのは、戦争の完璧なコントロールだ。
なぜ戦争を完璧にコントロールしようとするのか。モノが消費されなければ経済は発展しない。そして、究極の消費を生み出すのは大規模な破壊だ。しかし、その破壊が自分たちの社会を壊しては元も子もなくなってしまう。自分たちから遠く離れた場所で、自分たちが得をするように破壊が起きることが理想的だ。完璧な戦争のコントロールには、これを実現する力がある。儲かるモノが永遠に儲け続けることが可能な仕組みを作り上げることが出来るのだ。その代償として、永遠に傷つく者たちも存在することを許容するならば、だが。
ちなみにこの対極にあるのがテロリズムだろう。いつどこで破壊が起きるか分からず、コントロールできない。その戦火は兵器を提供している側にも及ぶことがある。だからこそ、抵抗の手段として選択する者が後を絶たないのだろう。まあこれも、それだけとは限らないのが難しいところだが。
ソリッドは自ら死期が迫っているのに、なぜ世界のために戦うのだろう。人は自分が死んだ後にも、何かを残したいと思うものなのかもしれない。しかし彼は子供を残すことが出来ないように作られているので、子供に何かを伝えるという形で実現することは難しい。だから彼は、スネークという虚構が生み出す全ての悪影響を完全に消し去ることで、逆に世界に何かを残そうとしたのではないだろうか。そしてその行動は、関わった者たちすべての中に何かを残して、消えていく。
投稿元:
レビューを見る
オタコンという「保守側」の立場からこのストーリーを展開してるだけあってとても暖かくそして痛々しいです。スネークは伝説の英雄ではなく普通の人間と同じなんだ、それなのに、というどうにもできない気持ちに涙します!
投稿元:
レビューを見る
単なるノベライズではなく、その繊細な語り口はまさに伊藤計劃作品。『虐殺器官』や『ハーモニー』のモチーフの幾つかがMGSからの影響を受けていることが理解できる。そしてなによりも伊藤氏のMGSへの強い愛情を感じた。
投稿元:
レビューを見る
ゲームのノベライズということでそんなに期待せずに読んだのですが、想像以上によかったです!
ゲームは自分ではプレイしたことはなく、4を隣でみていただけだったのですが、文字通りソリッド・スネークの「最後の物語」を、それまでのシリーズを知らない人にもある程度わかるように(あくまである程度)、複雑な世界観をオタコンの視点で語りながら、スネークという人の生き様を丁寧に、そして非常に暖かな目線で描ききっています。
この長大な物語を、たった一冊でまとめきって、なお余りある物語性に感服です。
もっとこの人の作品を読んでみたいな、と思いながら、巻末の小島監督のインタビューを読んで絶句。この物語が生まれる過程それ自体が物語になっていて、思わずぼろぼろ泣いてしまいました。
夭折した作者のご冥福をお祈りします。
投稿元:
レビューを見る
小島監督と言う人がMGSと言うゲームを作り出し、伊藤計劃と言う人がこの作品を愛し、そのシリーズの四作目をノベライズすることになり、この作品の持つテーマが奇しくも伊藤計劃と言う人の人生にリンクした、奇跡としか言い様がない作品。
ゲームのノベライズってものを初めて読んだけど、映像から文章へと還元されたことで、文章の持つ力と言うものをはっきりと見せつけられた。
音楽がある分、ノベルゲーの方が小説より感動する(キリッなんて言ってた自分が恥ずかしい。過去に戻って殴ってやりたい。
虐殺器官を読んで伊藤計劃さんという作家に抱いた印象は、必要な情報を無駄なく綺麗に表現する人だった。ビューティフルと言うよりはクリーンなイメージ。
そのイメージの通りの文章を今作でも見せつけてくれたけど、あとがきで小島監督が述べていたように、伊藤さんは作品の行間を読む力がとてつもない。
その力が持ち前の表現力によって惜しみなく発揮され、MGS4と言う物語をとても繊細なバランスの上に成り立たせている。
すなわち、伊藤計劃の描くMGS4と小島監督の描くMGS4と言う二つの作品の丁度中間に奇跡的とも言える均衡の上成り立っているのだ。
伊藤さんもあとがきでノベライズと言うものについて語っていたけど、彼の表現したかったものは、少なくとも自分の目には完璧に表現されていたように映った。
MGS4と言う作品を見届け、そのノベライズに携わることの出来た後、逝くことの出来た伊藤さんの幸福を想いつつ、最新作であるMGSPWの完成を見届けること無く旅立ってしまった伊藤さんの不幸に心が痛む。
でも、作中でオタコンも言っていたように、人は死んだ後も、誰かの中に物語として生き続ける、と思えば、文字通り伊藤さんの遺した物語達は、今自分の胸の中に深く刻まれたように、多くの人の中に残り続けると思う。
亡くなった伊藤さんのため、とかそんな偽善ぶったようなことを言うつもりはないけれど、この小説は一生部屋の本棚に保管し続けようと思った。
投稿元:
レビューを見る
PW発売に向けて予習、もしくはテンション維持のために購入。
著者はSF界では結構有名な人らしい。
ゲームやアニメ、映画のノベライズなんて大概はアレな出来なんだけどこれは結構面白かった。
著者の腕も勿論だけど、MGS4自体テキスト量が多くて小説化しやすかったのかな、とか考えたり。
オタコンの口からスネークを語らせるというのは上手いと思う。活字をしっかりと追うことでやっと物語の輪郭が掴めた部分もあったし。
あと、ゲーム終了時より少しだけ先の話があったのも素敵。「スネークは笑って死んだ」というのが明言されたのが良かった……
ビッグボスとゼロが仲違いした詳しい経緯はPWで説明されるのかな?
投稿元:
レビューを見る
ゲームノベライズでありながら、ゲームノベライズと一緒にするのは(良い意味で)違う気がするが、だが普通の小説と同等に捉えると、あまりにも情報が詰まりすぎていて、若干息が詰まる。一冊で書く内容ではなかったように感じた。ゲームをプレイしたことはなかったが、この本を読んで人気の理由が分かった。
投稿元:
レビューを見る
メタルギアやりたくてしょーがねー!!(ゲームをクリアしたためしがないので避けていた)と言っていたら、ノベル化だと・・・!!
もうスネイク格好良すぎだろー。設定はよく分からないのですが、なんてったってスマブラのスネイクから入った人間ですから。でも是非是非、読んでみたい1冊。
投稿元:
レビューを見る
2010 4/29読了。有隣堂で購入。
原作は未プレイ。そんな自分でも、これは伊藤計劃以外の誰にノベライズできるのか、と思った。
PWとMGS3を合わせてのノベライズ、というのが幻に終わってしまったことが残念でならない。
投稿元:
レビューを見る
ただのノベライズと侮ることなかれ。
メタルギアソリッドという作品に対する著者の並々ならぬ愛情が感じられる。しかし、ファン特有の盲目さはまったくなく、極めてフラットな視点。綿密に描かれたキャラクターたちの罪、そして死への想い。
それらから伊藤計劃その人をしっかりと感じることのできる最高の一冊。
投稿元:
レビューを見る
MGのシリーズは全て未プレイだったが、それでも物語やキャラの魅力が伝わってきた。ここまでの愛情を持ったノベライズは本当に珍しいと思う。小島監督の後書きはもはや反則
投稿元:
レビューを見る
読んでみると「4」の文字がない理由が分かります。ゲームは全部やってるけど正直難しくて内容がわかっていないとこもあるのですが、過去を振り返って書かれてるところもあるので読み込んでかなり理解が出来た。これでゲームをやるとさらに楽しさ倍増。熱が冷めないうちに「4」やります。
投稿元:
レビューを見る
1,2はクリア。3,4は未プレイ(3は弟がやっているのを隣で見ていました)。本屋を散策していたら、平積みされているのを見かけて衝動買い。PS3を買うこともないと思うので、「ならば本で!」と、本書を手に取りました。正に良書でした。ゲームへの愛着という色眼鏡で見ているとしても、それでも小説としての完成度は高いと思います。4自体がスネークストーリーの集大成のため、今まで断片でしか知らなかったスネークの歴史はどのようにつながっているのかがよく分かりました。スネークがよぼよぼ、ぼろぼろ過ぎる、雷電もぱっとしない、主要キャラが結構ころっとやられる、といった所が多少気になるものの、その分、それを補って余りうるスネークのこれまでの葛藤・苦悩が丁寧に描かれていました。「やっぱりゲームもやってみたい」という思いも抱きつつ、相応の満足感を得ました。
投稿元:
レビューを見る
有名なゲームの「メタルギア ソリッド」は一切知らず。
(怖いオジサンが潜入工作する、ゲームだそうで)
伊藤 計劃だからってんで、買っちゃいました。
実は、酔っ払って未読のまま、紛失したいわく付き。
主役同様、スニーキングしたらしい。
しっかり骨太な近未来SF。
かなり複雑な生い立ち、かつ70歳超の老体に鞭打つ
ストイックなオジサマのお話。
でも「物語って伝える」って視点を大事にした
小説としても、骨太。
読んだ~、って感触が強いです。
ゲーム原作者のお墨付きなので、ファンも安心?
投稿元:
レビューを見る
なかなか評価いいみたいですね。
MGSシリーズのファンで、ほとんどゲームをプレイしてきた自分からみると説明過多で読むのがかったるい。
初心者にはすごく丁寧なんだろうと思います。
それから、スネークの描き方が特別すぎる。
まあスネークの物語だからそれでいいと思うんだけど、誰よりもこの作家伊藤計劃氏がスネークを英雄氏しているんだろうな、ということがひしひし。
語り口をみればわかるけど、前シリーズを大事にしようとして、フランク・イエーガーやナオミもヒロイックにしすぎ。
その代償として書き流された雷電やサニー、メリル、アキバたちの物語が勿体無いです。
MGS4はスネークから次の世代へのバトンタッチの物語でもあったはずなのになあ。
ファンによるファンのためのファン小説。
というのがあくまでも私の考えだけど、『虐殺器官』も読んでどちらもわからなかったから合わないだけなのかも。