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具体的な経済政策の本ではなく、古典経済学者の考え方や思想の紹介をする本。各経済学者の考え方について、その時代の問題点や背景なども踏まえて書かれているので、非常にわかりやすい。
アダムスミス、マルサス、リカード、マルクス、ケインズ、シュムペーター、ハイエク、フリードマンという、私ですら全員名前は聞いたことあるくらいメジャーな人物たちについて書かれた内容。
とりあえずどの人物も神的な能力の持ち主だった(笑)やっぱり経済と言えど、思想が必要だということがよくわかる。
中でもシュムペーターの「不況があるからこそ世の中から非効率なものが排除されていく」という考え方は、すごく共感した。
経済学の本ってすごい読みたいんだけど、どれも分厚いハードカバーの本な気がしてイマイチ読む気になれないんだよなぁ。
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経済古典の背景、各経済人の時代背景、環境、経緯含めてわかりやすくしょうかいされていて非常におもしろい。
アダムスミスにはじまり、マルサス、リカード、マルクスを経て、ケインズに至るまで非常にわかりやすい流れの解説だった。シュンペーターも論理からの仮説構築力、将来予見力、インサイトが素晴らしかった。ある意味日本の現状をいいあてている。
ハイエクが一番心にささった。シンプルな論理ながらわかりやすく、政府に対する批判の論理がすごく納得感があった。
<メモ>
・経済古典の問題提起や解決策が私たちの今にどういう意味を持っているかを考える。今日的意義を考え、もんだ解決のスキルとしての経済古典を勉強する意義を探った本。
・変化や革新に対する社会的な拒絶反応があると社会主義に近いものに落ち着いてしまう。
・アダムスミス国富論では、社会秩序の問題、財政赤字の問題、アメリカという植民地の問題、重商主義政策がよいのか悪いのか、についての問題。
・利己心と道徳心の両立が経済的な秩序につながる。競争が利己心の調整力として働く とアダムスミスは考えていた。
・昔の経済学者はみなイギリスを舞台にして活躍していた。
・シュンペーターのいう「知識人による資本主義への敵対化」人の批判をする評論家がメディアに露出し、必要以上に格差を強調する。その論調が主流になり、政治の流れが創られる。それが資本主義のダイナミズムを減退させていく。
・シュンペーターは資本主義はその成功ゆえに崩壊し、世界は必然的に社会主義化すると考えた。シュンペーターが資本主義のダイナミズムが失われる要因としてあげている項目に日本はあてはまっているのではないだろか。
・ハイエクのケインズ批判。ミクロの議論なしにマクロを表すことはできない。また、個人ができないことを政府ができるはずがない。個人が合理的に行動することはないし、個人が完全な情報を持つこともあり得ない。個人が不完全な知識しか持たないがゆえに、不確実性がともなう個人の行動をコーディネートする仕組みとして唯一機能するとするとそれは政府ではなく市場である。局所判断を個人が行うことにより、全体としての調和が自律分散的に市場の中で形成される。これが市場メカニズム。
・フリードマンは積極的に自由をつくることに重きが置かれている。
・ハイエクにとっての問題は「集産主義」だった。ヒトラーやスターリン。政府が大きくなり個人主義を否定して集産主義になることに対する批判
・フリードマンにとっての問題は「スタグフレーション」メカニズムを解明し、ケインズ政策の効果がないことを証明した。教育バウチャーや負の所得税という攻めの自由主義政策を提案した。
・低成長、デフレ、財政赤字など世界の経済問題を全て背負い込んだ日本のかじ取りに世界は注目している。
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当然の話だが古典は書かれた当初から古典だったわけではない。今は有名な経済学者たちも当時はそれぞれ目の前の問題解決のために書いていたのである。
面白かったのは古典として残っている予言がことごとく外れていることだ。更に当時の問題だったことが今現在も問題として残っていること。もしろ、それぞれの時代に生じた問題が積み重なって現在に残されたように感じる。
問題は政府が解決する、というケインズの政策を活用した日本が不況に陥っている。これからやるべきことは決まっているのではないだろうか。
シュムペーターの、イノベーションは消費者ではなく生産者から生まれるという理論は印象的だった。つまり欲しいよりも作りたい、売りたいが先んじるということだ。これから仕事をする上で大いに参考にしたい。
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http://highjamp.hatenablog.com/entry/2017/12/16/093920
本書は、2010年4月から7月にかけて、筆者が慶應義塾大学丸の内キャンパスで行った講義をもとに作られた。本書は、以下の古典の内容とその著者についてそれぞれ解説するという形式をとっている。
アダム・スミス 『国富論』
R・マルサス 『人口の原理』
D・リカード 『経済学および課税の原理』
K・マルクス著、F・エンゲルス編 『資本論』
J・M・ケインズ 『雇用、利子および貨幣の一般理論』
J・A・シュムペーター 『経済発展の理論』、『資本主義・社会主義・民主主義』
M・フリードマン 『資本主義と自由』
F・A・ハイエク 『隷属への道』
R・E・ワグナー、J・M・ブキャナン 『財政赤字の政治経済学』
筆者は、これらの古典を読み解くうえで、こうした名著も当初から古典という地位にあったのではなく、「当時の経済社会の問題を解決する」という目的で書かれたという事実に注目し、次のように書いている。
「このことは重要な点を示唆している。私たちがいま直面している経済社会の問題を解決するうえで、経済古典と言われる文献がきっと多くの示唆を与えるに違いない、という点だ。」
本書はこのような視点から経済古典を解説したものだ。具体的には、①当時の経済社会における問題はなんだったのか、②それに対して筆者はどのような解決策を提示したのか、という2点について重点を置いて書かれている。
また、経済古典の書き手の間には影響関係がある場合も多い。例えば、マルサスの議論の出発点はアダム・スミスの議論への批判であり、ケインズやシュムペーターの議論はマルクスを強く意識したものである。本書ではこうした点についても解説されている。
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良い悪い好き嫌いをひとまず置いておいて冷静に見れば現代日本の経済政策に大きな影響力を持つ竹中平蔵とはどういう人物なのか経済古典が書かれた背景と援用のされ方実際に使える所、使えない所などを経済政策のフロントマンでもあったスタンスから話しているので経済学の歴史の読み解きとしては面白いと思う。言い方次第で逆の相も見える。それらを通して竹中氏自身の考えも見えてくる。
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アダム・スミス、マルサス、リカード、マルクス、ケインズ、シュンペーター、ハイエク、フリードマン、ブキャナンの著作の考え方と当時の問題、そして彼ら自身を平易に述べている。竹中氏が主張していることは、かれらは経済思想を創始したのではなく、当時の問題の解決策を提示したのである、ということ。
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経済学の主要理論のエッセンスを一般向けに解説しており、簡潔な経済学史とも言える。(帯の「問題解決のスキルとして」の惹句は意味不明!)
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アタマのいい人と喋っていると自分までアタマがよくなったような気がするけど、それと似た感覚を味わいながら読んだ。
それはまず、冒頭にあるように、アダム・スミス、ケインズ、シュンペーターからブキャナンに至る経済学の泰斗を各章に配置した上、その時代背景と人物像を紹介し、研究の特徴を説き、その論の限界を明らかにするという本の構成そのものの明快さや、大学での講義を基にして書かれたという筆運びのわかりやすさである。
もう一つ、同じく冒頭に「経済学史や経済思想の専門家がたくさんいる中でこうした本を書くことは、私の任には負えない仕事だと思った」とある。だがこの本には、実際に大臣として日本国の経済政策に携わり、その問題意識の中で経済思想のあれだこれだを肌で実感した著者ならではのリアリティがある。
同時代の、全体を見渡せすことができる日本人による、日本語で書かれた啓蒙書、それがわかりやすさの理由だと思うし、これほど得難い教材はない。
さて、「経済古典」と言えばしかつめらしい経済学の原理法則が書かれているのかと思ってしまうが、いずれの泰斗の経済理論も、実は各時代に持ち上がっていた社会問題に対する処方箋として書かれたものである、という基本テーゼがまず興味深い。
たとえばアダム・スミスは市場経済の萌芽を、ケインズは20世紀初頭の大恐慌を、シュンペーターは「大きな政府」の弊害をそれぞれ目の当たりにして、各時代を乗り切るための論を展開した。それらは先人の“限界”に対するアンチテーゼでもあった。こうして概観すると、誰が正しいのかという話ではなく、経済学があっちへぶつかり、こっちでつまづきしながらなお動き続けているのだということがよくわかる。
もっとも、後半のシュンペーターやハイエク、フリードマンらに関しては、“限界”までの記述はない。まだ結論が出ていないまさに現代の問題が扱われているからであり、「小さな政府」を指向する著者の主張が今なお彼らの思想のライン上にあり、またあるべきだと考えているからだろう。
経済学徒ではないし、読書家でもないのでスミスもケインズも知らないが、近ごろの閉塞感の中で語られるいろいろな論客のブログなり批評なりをせめて理解しようと思ったら、これら経済社会のスタンダードが何を言っているかくらいは知っておいた方がいいと思う。そのポイントを適切につまんでくれる本書は、格好の手引き書なのである。