紙の本
世界恐慌をえがく暗黒の書
2011/12/08 21:55
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Kana - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヨーロッパ各国がソブリンリスクにおそわれ,各国がとるケインズ政策が合成の誤謬によってかえって世界恐慌につながっていくというシナリオをえがいている. どうやって世界恐慌のトリガーがひかれるかも分析している. 最後にわずか数ページ,それをふせぐ方法がかたられているが,世界恐慌のシナリオにくらべるとそれはあまりもよわい. 暗黒の書といってよいだろう.
紙の本
いつまで赤字国債を増発し続けるのか
2010/08/06 01:19
3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:MtVictory - この投稿者のレビュー一覧を見る
いま世界は金融危機を克服し、世界不況からも徐々に回復を進めている。とりあえず今回の危機が「沈静化した大きな要因はエマージング(新興国)諸国の経済成長と株式市場の好調」のおかげ。しかし、本書はこの先に更なる危機が待ちうけていると訴えている。
ギリシャの財政危機をきっかけに、「ソブリン・リスク=国家破産のリスク」が叫ばれるようになった。その危機はギリシャに留まらず、他のユーロ加盟国にも広がっていることが分かり、新たな世界経済危機に発展するかと恐れられた。
金融危機、経済危機が必然的に財政危機を招来する、というのが本書のテーマである。それが深刻化するとソブリン・リスクが顕在化し、世界恐慌になる可能性があるというのだ。それが早ければ2012年に起こる、というのが著者らの予測である。経済情報などを見ていると、確かにそれを予兆させるような情勢を感じることができる。
今回の世界金融危機は世界中が住宅バブルに沸き、崩壊した結果だが、世界中が危機対策のために財政出動を迫られ財政赤字を拡大させてしまい、逃げ場がない状況にある。金融危機は回避できても、投入された財政資金が実体経済に回らず、経済危機が深刻化する。それを抑えようとすれば財政危機が更に深刻化し、国家破綻に至る可能性がある。
第2章から4章まではソブリン・リスクが発生しそうな国や地域の実情を探る。第5章は経済危機に対して各国「政府が対策を実施し、それが地球規模で起きることがかえって恐慌を呼び込むという構図を明らかに」している。
日本も民主党に政権交代してから、国債発行額が税収を上回るという異常事態であり、財政赤字は膨らむ一方である。同様に世界中で「国債の激増というすさまじいマグマ」が蓄積しつつある。それが破裂したときが新たな恐慌となる。 2012年に起こるという恐慌のトリガーとして以下の3つを挙げている。「投機筋の暗躍、正常化を急ぐあまり当局が起こす政策ミス、エマージング市場バブルの崩壊」これらのトリガーを引かずに済むような対策が求められる。残された時間はあまりない。
「おわりに」では「世界恐慌というステップを踏んだのちに初めて、人類は地球環境と人間を尊重する態勢に移行するのではないだろうか」と言っている。世界恐慌は人類が誤り続けた結果であり、必然なのであろうか。それを経験しないと悔い改めることができないという神の意思なのだろうか。
投稿元:
レビューを見る
現在の世界経済の状況や経緯がよくわかり、
ギリシャ問題が大きく取り沙汰されるようにもなり
出たタイミングとしては非常にタイムリーな一冊。
金あまりにより膨れ上がった経済の収縮による不況を
財政出動でまた金あまりの状態になり、投機に資金が流れ
新たなバブルを創造し、それに加えて急激な国の財務の悪化による
ソブリンリスクが高まっている。
危機に対して正しい経済対策をうったが故に
こうした新たな危機をはらんでしまったというのが
この問題の根の深さを感じる。
投稿元:
レビューを見る
世界がマネーで繋がっている様子が良く分かります。一つ一つの危機がマネーの流れを媒介として各国に連鎖していく世界の様子が良く分かります。
もはや1国だけでの対応だけでは、対処できないマネーの潮流。
世界で協力して包括的な枠組みやルール策定が望まれます。
今回の危機を克服できたときは、
新しい世界の形が出来上がっているように感じました。
投稿元:
レビューを見る
相沢幸悦、中沢浩志著「2012年、世界恐慌」(2010)
* 平成代具今日への対処で膨大な財政赤字が堆積したものの、このときには、日本でソブリンリスクが現実化することはなかった。それは、膨大な財政赤字をまかなう国債が、平成大不況下では、安全な有料金融商品として日本国内でいくらでも売れたからである。
* リーマンショックにさいして、欧米政府と中央銀行は大きく3つの対応をとった、1つ目は金融の動きがとまらないようにしたこと、つまり、中央銀行は流動性をジャブジャブに供給した。これは緊急性の最も高い対応である。2つ目の対応は、公的資金を金融機関に投入して延命させることであった。劣化資産を民から官に移し変えることで金融システムの崩壊をふせき、実態経済を崩壊から守った。3つ目は景気対策である。そして、ここでは各国がこぞって大規模な財政出動を行った。国際を大量に発行して、公共事業などを大幅に増やした。
* 今回の危機にとられた中央銀行による流動性の供給と金融機関への公的資金の投入という金融システム安定化のための2つの政策は、1997年から2003年にかけたおこった日本の金融危機の経験が大きく貢献している。
* ケインズ経済学が体系化され、第二次世界大戦に不況が訪れると、「公共事業、減税、利下げ」の3点セットが実行され、しかも効果があがった。資本主義はすっかり恐慌を克服したかに見えたがやはり、世の中はそんなにあまくはなかった。1970年代にケインズ政策は破綻した。それは資本主義諸国がインフレが進行するものの景気も低迷するというスタグフレーションに襲われたためである。ケインズ政策にしたがって財政出動するが、景気がよくならない。そこでケインズ政策の有効性が疑われ、その後、登場したのが、ミルトン・フリードマンであった。かれは、国家が経済に介入することを排除し、規制緩和&撤廃で企業の競争力を高め、成長を実現する政策を主張した。つい先ごろまでアメリカで行われた新自由主義に基づく経済学である。その後、冷戦が終わりアメリカの敵はいなくなった。金融資本を推進したアメリカの時代である。しかし、アメリカの住宅バブルが崩壊すると新自由主義は徹底的に否定された。そして再びケインズ政策が戻ってきた。リーマンショックがおこるとケインズ政策こそが危機を救うというばかりに、すさまじい財政出動が行われ、中央銀行には膨大な資金供給をせまった。民間需要がこれだけ落ち込めば、もはや政府が需要をつくりあげていくしかないという考えからだ。しかし、これが徹底的に遂行されていくと、最後には中央銀行の経営危機と財政破綻という経済破綻にいきつく。日本の平成大不況のように世界のなかで一国だけが財政出動するのはよいが、世界全体が財政出動したら、、、一国だけではなく、世界中が同じ危険性を抱えている。それこそが、ソブリンリスクの正体である。
* バブル崩壊当初の日本の政府財務残高のGDP比は60%程度であったが、今は180%と絶望的な状態である。平成大不況克服のため、日銀が超低金利政策をとったので、有料金融商品である、国債を銀行や郵���などが積極的に導入。アメリカとことなり、国民の金融資産の約半分が預貯金からなっているからできる業である。今、日本はGDP比180%になっても長期金利が上昇しないのは、今のところ国債は国内で消化できているためである。日本の平成大不況が克服されたのは、財政出動と日銀のゼロ金利や量的緩和という政策にバックアップされたものではあるが、根本的な克服要因は1990年代のアメリカの株式バブル、その後の住宅バブルであった。要するに外需頼みであった。
* 各国が景気対策と金融機関の不良債権処理のための財政出動は経済政策としてはきわめて正しい。しかし、世界全体でそれを行えば、いずれ国債発行による資金調達ができなくなる。この国債の大量発行による金利上昇で民間の資金需要が抑制される現象をクラウディングアウトという。それが現実のものになれば、民間ビジネスにも支障がでる。1人1人はただしいことをやっているが、全員が同じことをすると全体がわるくなる合成の誤謬が財政分野でも発生する可能性は大いにある。
* 厄介なのは国債バブルはゆで蛙と同じでなかなか問題の深刻さを実感できないということである。
* 国家破綻のトリガーとしては3つある。①投機筋の暗躍、②正常化を急ぐあまりに当局が起こす製作ミス、③エマージング市場バブルの崩壊。
* 日本がこれを乗り越えるために独自に取り組むべきことは、①1500兆円あらう個人金融資産を思い切って海外投資に振り向ける決断。日本経済の長期的衰退に伴う円安によって購買力が低下することが懸念されるが、こうすればヘッジとなる。また海外からの配当収入も確保可能である。②移民政策を含む人口維持政策を積極的に進めるべきである。高齢者への年金を減額してでも育児・教育に国民のお金を振り向けるべきである。移民については、すむことに悦びを感じて責任を果たしてくれる人を受け入れるべきである。
投稿元:
レビューを見る
お金お金。
日本の政界改革を率先してくれる強いリーダー、現れないかなあ。
っていうか。最近の政界に見られる、「重箱の隅をつつくようなミスを暴いて政界追放」みたいな戦い方、見ていていらいらします。
投稿元:
レビューを見る
[ 内容 ]
世界各地の「マネー爆弾」が炸裂、国債暴落で超インフレが襲来する!?リーマン・ショック後、世界はいったん落ち着きを取り戻した。
巨額の政府マネーが銀行救済や景気対策につぎ込まれたからだ。
しかし、各国の膨れ上がった財政赤字が今度は大問題に。
ドバイ・ショック、ギリシャ問題は入り口にすぎなかった。
気鋭の大学教授と現役のメガバンク行員が、世界恐慌へ至る恐怖のシナリオを大胆に描く決定版。
[ 目次 ]
プロローグ 未体験ゾーンへ
第1章 なぜリーマン・ショックは克服できたのか
第2章 世界のマネー爆弾その1―アメリカの闇
第3章 世界のマネー爆弾その2―ヨーロッパの憂鬱
第4章 世界のマネー爆弾その3―日本の能天気
第5章 大恐慌との奇妙な類似
第6章 蓄積されたマグマは破裂する
エピローグ 2012年××月××日―恐慌勃発
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]