紙の本
海外ホテルチェーンの買収に突っ走るゼネコンの姿を細部にわたって描く痛快企業小説
2005/11/28 08:31
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
お馴染み高杉良の企業小説である。本書の舞台はゼネコンである。バブル崩壊を気に坂道を転げ落ちる羽目になった業界である。建設業は意外に新規参入がしやすい業種だと聞かされたことがある。そういえば大小を問わなければ、土建会社がどこにでも満遍なく存在しているのは確かだ。
景気が悪いと言われながら、東京では巨大な高層ビルが次々と建てられている。また、古くなったからという理由であっという間に古びたビルが取り壊され、再開発が行われている。新しい街同士の競争である。1年も経てば忘れ去られてしまうほど、新しく再開発された街が誕生するのである。品川や汐留など今は昔である。
企業小説はモデルがある場合が多いが、今回もモデルがあり、海外での活躍で名を馳せたA建設の実話が下敷きになっている。
破産の原因となったのが海外の主要都市に保有するホテルを束ねる国際的なホテル・チェーンの買収だった。安い買い物をしたという経営者。その経営者をおだてて五百億、一千億の融資を競い合う銀行。バブル景気特有の現象である。
メイン・バンクの大洋銀行から出されることになった専務と共に出向することになった課長クラスの銀行マンが主人公である。この東和建設では社長室審議役というポストにつくが、すぐに社長秘書を命ぜられる。
ゼネコンでは社長に大いに気に入られたもののだから、役員たちが擦り寄ってくる。この辺りの描き方が企業小説の面白さであり、高杉良の真骨頂ではないか。ゼネコンと銀行では役員の性格や人柄も業種を反映しているようで、平均値はともかくゼネコンの方がより幅が広く多様であろう。
オーナー社長に気に入られた主人公は、他の役員の妬みや嫉みに耐えながら、出向生活を過ごすのだが、会社全体としてはオーナー社長が会長となり、巨額の融資を行った銀行から社長を迎えることとなる。
ゼネコンがホテルチェーンを買収する意味がよく分からないのだが、それまでのゼネコンを営んできた経営資源を生かしていない経営、つまりホテル経営が上手くいくとは思えないのだが、バブル景気の波に押されて数百億円という融資を受けて突っ走る。
昨今ようやく後遺症から立ち上がりかけた日本経済だが、この種の危うさに対する免疫や教訓が生かされずに突っ走る体質は改善されていない。
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こういう社会派小説(っていうのかな?)って初めて読みました。なので、なかなか読み進めるのに苦労しました。でも業界の話って面白い。会社役員も大変だ。
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物語の中心は1988年に大手ホテルチェーンを買収する準大手ゼネコンがモデル。このゼネコンのメインバンクの中堅社員がこのゼネコンに出向するところから物語は始まる。
複雑な人間関係を簡素に分かりやすく書かれていて読みやすい。
ただ、ゼネコンの談合体質にもう少し触れてくれても良かったかなと思う。
まぁ談合の話ではないので妥当でしょうか。
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経済小説。バブル崩壊前の建設業界を描いている。
大手ゼネコン「東和建設」のメーンバンクに勤める山本が出向を命じられるところからスタートする。
そこで建設業界の様々な一面を見ることになる。
政治力がものを言う世界。騙し合い。談合は当たり前の世界。
物語とは別に「談合」については、考えさせられるものがあった。
果たして「談合」は必要悪なのだろうか?
毎回思うが、人物の心情表現が巧みさがすごい。
ありありとその場その場の臨場感が伝わってくる。
そして、社長業の難しさ。まったく違った価値観を持った人達を同じ方向に持っていかなければならないが、
まわりにYesマンばかり集めてしまうと大きな損失につながる難しさなど。。。
ストーリー、内容はもちろんおもしろいく大変満足な作品であり、それ以上に様々勉強になる一冊。
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ゼネコンというよりも銀行マンについてのお話です。
ワンマン社長ってこんな感じなのよねーって思いながら読んでました。
この人の小説って人物にもリアリティーがありすぎて、サラリーマンあるあるな感じなのが、読んでてテンションが上がりません。そして、やはり少し感覚的に古い体質の企業の話で、年寄りの与太話を聞いている風でもあります。
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初めはどうなる事かと思ったが、読み進めるにあたりどんどん引き込まれた。
まさにスロースターターの小説だ。
バブル前の話だが、今現在にも共通する組織の体質がみられて面白い。
組織の中で自分を曲げない強さ、そして良きにつけても悪しきにつけてもコミュニケーションの大事さが良く分かる小説だ。
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有力政治家に繋がることのすごさ、案件の獲得や銀行との付き合いなどいろいろなゼネコンの裏事情(?)みたいなものがよく分かった。かつて買収したホテルの前に、この小説のモデルとなった本店があるのだけれど、なんだかとっても切なくなる・・・・。
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覚悟を決めるために読んだ一冊。
半分くらいは事実を多少脚色して描写しているので、ゼネコンという業界の嫌な面を知るのには最適な一冊かもしれない。
ただし経営者レベルにならなければ感じないことではあろうけど。
小説としては、盛り上がりからクライマックスへの運びが急すぎる、かつ、あっさりしすぎなのではないかと思った。
途中までのワクワク感はとても良かった。
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高杉良の「ザ ○○」シリーズ。
「ザ 外資」に続いて読んでみました。
日本語チックに言うなら、「まさにゼネコン」とも
言えるほどまるでノンフィクションかのような描写。
(まぁ、話のモデルは存在していますが…)
高杉良の特長でもある情報量と独特のストーリー展開を
付け加え、面白い小説になっている。
政治、談合、人事、出向、バブルなど
この一冊で一通りのゼネコンのイメージを
抱くことができる。そのへんの構成は流石。
まさに「ザ・ゼネコン」であると納得できる作品。
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#fb 積読消化。奥まった話はあまりなく、薄っぺらい。ミステリ風味の味付けで、エンターテイメント性を高めるのかと思っていれば、伏線めいたものは一切回収されず。中途半端。