紙の本
世界という布地が切り裂かれ、少年たちが消える
2004/06/20 16:11
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投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
全十五章の最後から二つ目、下巻の「クリスマス・イブ」の章で明らかにされる真実と奇蹟の出来事にふれずして、この作品の魅力、ディテイルや人物描写の見事さ(とりわけ、物語の本当の主人公ともいえる七歳の長男スティーヴィの可憐さ、純粋さの描写は絶品)と鮮烈な感動の質を語るのはとても苦しい。幼い子供たちを取りまく様々な危険や家族の絆への過敏すぎる反応、理不尽な世の中に対する慎ましさを失わない毅然とした姿勢。「屑屋のおっさん(ジャンクマン)」「魚屋のおばさん(フィッシュレデイ)」と互いを呼び合う若い夫婦の思考と行動を支えるある種の過剰が、この優れた「家族小説」(解説の北上次郎の評言)に深いリアリティをもたらしている。──物語の終盤に登場する、冷静沈着で人情の機微に通じたダグラス刑事の言葉が印象に残る。「わたしが言いたいのはね、とても悪いことをする連中がいて、それがあまりにも邪悪なことなので、この世界という布地が切り裂かれてしまう。そしていっぽうにとても心根のやさしい善人がいる。その連中は世界が切り裂かれたときにそれを感じることができるんだ。そういうひとたちには物事が見える、物事がわかる。ただあまりにも心根がやさしく純粋なので、自分に見えているものがなんなのかわからない。それが、おたくの坊やの身に起こっていることじゃないかと思うんだ。」
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沢山の少年が行方不明になる事件がおきます。
それでも日常の生活は続いています。
伏線が沢山あって 最後に・・・
最低2回は読み返してください。
今までで一番泣いた本です。
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美しいが汚くもあり、希望はあるものの非常に重たい家族小説。とことん健気なスティーヴィに涙。ゲームデザイナー(プログラマ)を主人公に据えた数少ない小説のひとつでもある。
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「本の雑誌」で推薦されていました。
力のこもった作品です。
引っ越してきた一家に、つぎつぎに問題が降りかかります。
夫、妻、三人の子供…そして新しく生まれてきた赤ちゃん。
家族それぞれが直面する問題には、ありがちなことだけでなく~日常に潜む悪と狂気が見え隠れします。
家族同士が愛し合っていても起こる~葛藤や誤解もあり。
細かい描写の積み重ねには、実生活を一部反映したリアリティがあります。
人はいかにして問題に立ち向かうべきか?
勇気を持って大きな問題にも取り組み、素晴らしい作品と言ってもいい。
かなり重い内容だけど、充実しています。
こんな風に解決していけるんだね!という部分と。
他にどうすれば良かったんだろうね…という部分と。
8歳のスティーヴィのけなげさには涙。
推理を楽しむ作品ではないですが、事件のモチーフにはミステリ的な要素もあるので。
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カードのキング風私小説
表紙 6点影山 徹 小尾 芙佐訳
展開 9点1992年著作
文章 8点
内容 930点
合計 953点
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原書名:Lost boys
分析屋◆ジューン・バグ◆独立記念日◆ザップ◆友だち◆神◆クリスマス・イブ◆新年
ローカス賞
著者:オースン・スコット・カード(Card, Orson Scott, 1951-、アメリカ・ワシントン州、作家)
訳者:小尾芙佐(1932-、翻訳家)
解説:斉藤由貴(1966-、神奈川県、女優)、北上次郎(1946-、東京都、エッセイスト)
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まず最初に書いておきます。
泣きました。
でも、文句ならたくさんあります。
まず、タイトルの『消えた少年たち』。
上下巻合わせて1000ページ近くになるのに、実際に連続少年失踪事件のことが書かれ出したのは下巻の280ページを過ぎてから。
そして、それが動き出したのは、430ページ以降。
で、470ページで作品は了。
これでは消えた少年たちが浮かばれない。
ほぼほぼ、両親の思うに任せない社会生活と、育児の苦労。
会社の人間はことごとく裏に何かありそうだったのに、結局何もなかったね。
才能のあるコンピュータプログラマーを雇ってしたことといえば、才能の飼い殺しの上に数々の嫌がらせ。
そんなことに大金を使う会社なんて、早晩倒産するんじゃないの?
宗教上のグループ内でのマウントの取り合い。
どう見ても精神に異常をきたしている精神科医の息子。
幼児性愛だだ洩れの天才プログラマー。
逆恨みの元スティーヴィの担任。
怪しい人は多々出て来るも、すべて小者。
しかも少年失踪の話すらみじんも出てこない。
さすがにこれは、ひどい。
『あるモルモン教徒一家の半年』とか、そういうタイトルでいいのでは?
でもまあ、家族を愛し守ることを第一義にしているステップとディアンヌが、散々スティーヴィを心配しながらも、彼と向き合いきれなかった理由が、次々現れるトラブルメイカーに振り回されてしまったからという免罪符を与えるための、数百ページなのだろう。
大切な人の、救えるはずの命を、純真無垢な善意の塊のその命を、取りこぼしてしまう。
どれほどの悔いが残るだろう。
長男が生まれたとき、あまりにもかわいくて、あまりにもいい子で、この子は2歳までに死んでしまうと泣いた自分を思い出しました。←バカ親過ぎる
だから、「この本長すぎる!無駄が多すぎ!」と怒りながら、号泣してしまったのだ。
だって子どもに罪はないもの。(T^T)