紙の本
悠久の千年の調べは、舞となりわたしたちの前に姿を見せるのです。
2017/12/27 22:36
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
大きい物語でした。池上永一さんの作品は初見です。
琉球を扱う作品の読了も初めてです。
漢詩や琉球語が頻繁に登場するのも異国情緒があり、
文体もとっつきやすく感じました。
難を言えば、ぜい肉が多いと感じる部分がありました。
また、この題名では内容をどうにもイメージできない点が
引っかかりました。辞書を調べても深みにはまるだけです。
凡庸ですが「首里の舞」「千年の舞」と勝手に読み替えていました。
さて、内容です。
大道芸の板舞戯に了泉という少年がいます。貧しいです。
板舞戯の一座で日銭を稼いで糊口をしのぐ毎日ですが、
了泉にはとてつもない才能がありました。
何をやっても人の目を惹いてしまうのです。
ある日、事故が起こって大道芸の一座は散り散りになります。
食うに困って自棄になっている了泉に、石羅吾という男が
名乗り出てきます。そして舞台に立てというのです。
ここから了泉の激動の人生が始まるのです。
踊りとは何か。何のためか。何を伝えるのか。
了泉という野性味あふれる本能の踊りと、ライバルの雲胡の
正確無比な踊りは、最初はガラスの仮面かと思いましたが、
読み進めるうちにどんどん話が大きくなっていきます。
何といっても、数多くある舞踏場面が物語の醍醐味でしょう。
踊りにこれほどまでの想いを託されると、ひとつの世界観として
興味をそそられました。
千年生きるという解釈は、それだけで魅力的であったと
お伝えいたします。
なかでも、了泉の腐れ縁の音地戸が、了泉の母である
美子麻と交わす台詞が心を打ちました。
>「どうすれば本物は生まれるのですか?」
>「だから、かんじょうを、もやすのです。よどみから、
> きよらかないってきを、うみだすために……」
この物語の核心だと思いました。
投稿元:
レビューを見る
本屋に一冊あったのを買ってきたところだったが、パイロット版の案内が来てたから応募してみた。
池永永一と皆川博子は目下のところデフォルトで買いの作家です。これから読む
投稿元:
レビューを見る
や~っと読み終わりました。
了泉の人生が濃すぎて、途中アップアップしながら読んでいましたが、最後は胸がいっぱいになりました。
まさに、“何でもアリアリ、ジェットコースター琉球舞踊エンタメ”ってとこですかね。
投稿元:
レビューを見る
作者お得意の沖縄歴史ものであり、今までの作品の主役たちも、結構、ぶっ飛んだキャラが多かったが、本作ではとびっきりのアウトローっぷりを発揮しているので、好き嫌いが大きく分かれるであろう。ただし、陰陽の陽たる王のために悲しみをまとって生き、この世の地獄を味わう陰となるべきものが、主役である以上、主役は彼の様な性格と生き方をしなければならない。ただし、作者らしく、ただ単に悲惨な生を描くのではなく、ここでもぶっ飛んだキャラを脇に配し、とびっきりの波乱万丈の展開を用意している。妖怪王子と認識できないかわら版屋等、少々、行き過ぎ感があるものの、これらの脇役が脇をしっかり締めているので、主人公の行いも陰に籠らず、物語も何処か沖縄らしい味わいが残る。全ての登場人物にその意味があり、その物語が最後に神にささげる踊りとして収斂していく様は素晴らしい。最後に物語は最初に還る輪をなす相似形の様な終わり方をするが、神の舞が螺旋の動きである以上、螺旋の様に物語は動いていかなければならない。
投稿元:
レビューを見る
献本企画当選・パイロット版入手
了泉にとって幸福だった時はページをめくる手が止まらないのに、地獄へと突入した途端に読み進めるのが辛かった。アウトローな主人公だったはずなのに、いつの間にか感情移入してしまったのが原因だと思う。
身につまされて、何度も冊子を閉じて天井を見上げぼんやりと過ごし、気持ちを落ち着けてまた読む。そんな行動を繰り返した。
ボリュームがあることが原因ではなく、細かな心理描写がスムーズな読書を邪魔しじっくりと読むことをさせてくるのだ。こんな作品は初めてで正直戸惑いました。
辛いからさら、と読みたいのにそれが出来ない。
そして最後の一文にやられた。千年を生きてみないか。深読みしてしまうではないか! むしろすべきなのか?
ああもう、パイロット版では我慢できず書店へ迷わず買いに行きましたとも。
個人的に、この作品は全編を通して、郷土にたいする愛情がなければ書き上げることのできない一冊だなあ、と感じた。
投稿元:
レビューを見る
献本企画でパイロット版をいただきました。ありがとうございます。
が、レビュー投稿期日があったのですね、、、これ。申し訳ない。
ようやく上巻・下巻共に読み終えました。
一部のダンスに関しては見慣れている方だと思いますが、物語のテーマの一つでもある「琉球の美」としての楽童子たち、特にメインキャラクターである了泉・雲胡ら二人の舞踊対決が凄すぎてイメージしきれません。京劇や狂言、歌舞伎は見たことがあるのですが・・・
「指で笑う」シーンが多く、大衆もその動きに圧倒され琉球人に魅了されることになっていますが、そもそも指だけで「笑った!」って見ていて分かるのかな。。。
現実にはあり得ないようなことも自由に表現できるのが本のいいところだと思いますが、この作品は実写化に向かったとき自分でハードルを上げてしまっている感があるな。。
幻術を使い、稚児の若さを貪って肉体を蘇らせても実体は骸骨という与那城王子の設定は牡丹灯籠を彷彿とさせます。でも下品が過ぎるような。
最下層から這い上がってきた了泉と、努力と才能の人 雲胡。薩摩、江戸を経て琉球へ戻ってきた2人の今後が気になるところです。
ここから下巻へ…
貧しいニンブチャーから這い上がり、士族の地位も金も名誉も手に入れた了泉と雲胡には縁談も続々舞い込むのですが…慢心して心を無くした了泉は結局全てを失ってしまいます。
ニンブチャー(念仏僧)、安仁屋村に住み貧しく誰からも蔑まれる彼らは穢多非人に近い存在だと思うのですが、了泉の母のように病気をきっかけにそこにさえ居場所がなくなってしまうのは、昔本土でも実際にあったハンセン病のような差別の歴史を暗喩しているのか…クンチャーが天刑病とされ、見た目も醜く変えてしまい、実際には人から人へは感染しないのに隔離されるところなんかはそれとしか思えません。(と思って調べてみたらやはり、そうでした)
これまで蔑まれひどい目に遭わされ続けてきたとは言え、良心の欠片もなく、傲慢で身勝手な了泉の行動には読んでいて幻滅しましたが、物語上、一度徹底的に彼を堕とす必要があるので仕方ないか。
後半一気に厚みを増して面白くなってきます。
太陽しろ、月しろだけでなく、動と静、男と女、親と子、高貴と下賤、貧者と富者、美しさと醜さ、若者と老人、生と死など対比するテーマが混在して読み応えがありました。
投稿元:
レビューを見る
ガラスの仮面だよ~ってことで
読み始めました
江戸に行くんだよね~って、感じ
ところが、半分読み終えたところで
江戸から帰ってきちゃったよ
これからどういう展開?
後半は、精神世界ってところかな
自分、死ぬほどの困難に出会ったら
どう考えて乗り切ろうって思ってたんですが
穏やかな死を迎えるため...と
考えて行こうかと
了泉は、毒のあるキャラです
不快感を感じてしまうことも多々
何で、こんな展開?っていうのは
後で必要な事だと納得が行くんですが
でもねぇε-(‐ω‐;)
久高島や、御嶽、グスクなど
知識として持っていたおかげで
物語の展開に入り込めてよかったです
(斎場御嶽は、行ったことあるし)
一般読者が、いきなり読んだら
難しいんじゃないかな?
投稿元:
レビューを見る
相変わらずの別世界の様な琉球の美しさ、儚さ、神秘、舞踊の世界を主に2人のライバルの成長と人生が丁寧に描かれ酔わせてくれる。了泉に惹きつけられ魅せられ、運命に一緒に苦しみ解き放たれる。新しさは無いけど長いながらもゆったり読めた。
投稿元:
レビューを見る
琉球舞踊の名手の物語。
池上永一の前回の「トロイメライ」は、軽い感じだったが、これは波瀾万丈の物語。「テンペスト」に引けを取らないおもしろさだ。
主人公蘇了泉(そりょうせん)と師匠の石羅吾(いしらご)、雲胡(くもこ)と師匠の玉城里之子(たまぐすくさとぬし)、王の家庭教師から国師と呼ばれる蔡温。
了泉の母:美子麻(みしま)、音地戸(おとちと)、妻:阿麻呼(あまこ)と子:湛瑞(たんずい)
薩摩の樺山聖之介、チョンダラー、瓦版屋の銀次と、おもしろい登場人物にも事欠かない。
次から次に息つくヒマも無く話が出てくる。琉球から薩摩へ、そして大坂、江戸へ。その後は、清国からの冊封使(さっぽうし):徐葆光(じょほこう)を迎えての踊り。その後しばらくして北京へ。それらも無理なくつながっている感じだ。
悪ガキ、了泉がいきいきと活躍。頂点に達して驕り高ぶり失敗して地獄に落ちる。そこから復活して、最後は神の踊りとなる。踊りの描写がすごい。剣の道にも通じるものだ。琉球は確かに芸能で戦をしていたと思える。
「テンペスト」は映画化されたが、これはどうなるかな。映画化した際には、踊りの部分の映像化がかなり困難となるだろうと感じた。
投稿元:
レビューを見る
圧倒的読後感でした。今年サイコー本候補。
踊りのことはわからない。小説の中の表現もいまいちイメージできなかったりするけど、その壮大さは伝わってくる。
了泉と雲胡の戦いであり友情。琉球にとって踊りとは。
テンペストより面白かったかもしれない。
そんでこの著者には誰も敵わないと思わされるスケール感とボリューム感。
読めて良かった。自分のレビュー力の乏しさに哀しくなってくる…
投稿元:
レビューを見る
池上永一作品はワクワクさせてくれますが、とっかかるまで時間がかかりました。
が、トータルで感じると前半部の方がグイグイきましたが…。
後半は時間軸の過ぎ方が早かったかな?と感じ、ラストへ合わせにいった感がありました。
映像化は難しいか…踊りですか、そこの優れ具合を表すのは厳しいっすかねぇ~。
投稿元:
レビューを見る
テンペストがあまりに強烈だったのでそれ以上のインパクトのある小説を期待してはいなかった。
たしかにインパクトは強くはないが、逆に沖縄の芸術を充分に調査して分析された精緻な表現に舌をまいた。
633ページ。しかも2段組みの超大作。私は就寝前にベッドで読むのを常としているが、琉球の世界に入り込みイメージが浮かび、その情景の中で眠りに良く落ちた。そのため読み始めてから結構時間がかかった。
琉球語による唄、漢詩、踊りの表現など難しく完璧な理解には、私自身がほど遠かったとは思えるが、当時小さいながらも一つの国家として自立していた琉球の奥深さを知る事が出来る。
主人公はあまりに不完全な人間ながら、最後は悟るように終末を迎える。人間の本性は身勝手で美しくないが、それでも努力をして美しく魅せる事が出来る。そしてその美しくない本性は、様々な経験を通して神への崇拝を通して浄化されていく。
そんな小説だった。
投稿元:
レビューを見る
金庸の小説世界のようでした。荒唐無稽のようで核があり、哲学ともいえる舞踊の中には宇宙があって、めくるめく世界にお腹いっぱいです。
投稿元:
レビューを見る
「テンペスト」よりさらに古い、1600年代後半から1700年代にかけての琉球舞踊の物語。被差別ニンブチャーとして生まれ、母がハンセン病になったことでその村を追われ、曲芸一座で糊口をしのいでいた了泉は踊りの才能を見いだされ、ライバル・雲胡と抜きつ抜かれつの出世をしてゆく。謝恩使として江戸に上る際の、薩摩・大阪・江戸の様子なども面白かった。前々から興味のあった久高島やイザイホーにまで話がつながって個人的にうれしい。同じように、と言っていいか分からないが、手で物語を表現するフラを踊る身として、もっと心を込めようと思わされた。「マブイ落とす」の文字を見て、再び「風車祭」が読みたくなった。
投稿元:
レビューを見る
とんでもなく面白かったです。男の子版「ガラスの仮面」ですよね。でも『本の旅人』(抜粋版)で大森望さんも仰ってましたがここの北島マヤ(了泉)は黒くて。絶対許されないことをちょいちょいするのだけど、なぜか憎めない少年で。
ファンタジーでもないのにナチュラルに人外の存在や異能力が出てきて違和感のない沖縄(琉球)という土地への興味がまた盛り上がります。