民意をことごとく踏みにじった政府、それはまだ続いている
2006/06/03 09:13
8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:未来自由 - この投稿者のレビュー一覧を見る
沖縄の戦後を人々の意識、行動を追いながら沖縄と日米安保条約との関係に迫る。平和と人権を求めて闘い続けてきた人々の、時代時代の意識・行動を分析しながら、沖縄問題から日米軍事同盟の本質に迫ろうとする視点に注目した。
ノーマ・フィールドが『へんな子じゃないもん』で「打ち上げ花火」と危惧した単発的な行動、継続しているようで時々でかわる民衆の意識の実態をも描いている。では、なぜそうなるのか。沖縄での闘いと意識を本書から見れば、そこには本質に対する人々の理解度の違いがみえてくる。
米軍による少女暴行事件や、基地があるゆえの悲劇に住民感情が激し大きな運動が展開される。その時は、いろいろな政治的問題への関心も高まるが、その高まりが持続されない。なぜ沖縄の基地問題があるのか。その根本的問題に迫り、根本を解決しない限り、沖縄の悲劇が続くのだということに気づいて欲しい。
それは、沖縄の問題ではないのだ。日本の問題である。そして、アジアをはじめとした世界的な問題にも直結している。著者は「あとがき」で、「沖縄現代史を貫いているのは、構造的沖縄差別の上に成立する日米安保体制(日米同盟)と沖縄民衆の闘いであった」と述べている。「構造的沖縄差別の上に成立する」という表現には疑問を感じるが、その本質に日米安保条約があることは明らかである。
日米安保条約がある限り、沖縄をはじめとした基地問題、日米地位協定問題など、悲劇の根源を解決することはできない。根本的な原因は日米安保条約にある。その問題を避けた論議や運動では解決できないのだ。
著者は、はっきりとは主張していないが、本書を読めばそこに行き着くことができる。民意を平気で踏みにじる政府。その政治的背景が沖縄には凝縮している。民衆を尊重しない小泉政権では根本的な矛盾を解決することはできないだろう。この間の米軍基地再編への閣議決定の内容をみれば明らかだ。
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沖縄戦後〜現代の歩みを、基地問題に焦点を当ててまとめている。まず、知らなさ過ぎて申し訳ない、という感想。日米関係、国際社会における日本の役割、軍事問題…沖縄だけの問題ではなく、日本人としてどう考え選択するのか。著者の問いが鋭く響く。
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沖縄に18年間住みながら沖縄のことをよく知らなかったことを反省して読みました。反省、といっても、実際はそういうものだとは思いますが、そういうもの、に甘んじては成長できないのだろうとも思います。
戦後米軍占領下から90年代の安保見直し、普天間基地移設問題まで年代に沿って詳しく書かれていてとても勉強になりました。とくに、総務省にとってとても重要な地方自治法の話(4条の2の経緯)が出てきたり、なんといっても地方分権一括法が沖縄にとっては非常に改悪(米軍用地特措法の改悪で軍用地の強制使用が簡単になった)だったというのは、私にとっては衝撃的でした。地方分権一括法は、結果的にいろいろ言われてはいるものの、地方分権時代の一里塚であるという正の認識しか持っていない自分が怖くもなりました。やはりいろんな角度から、特に私の場合は沖縄の角度から物事を見る、ということを忘れてはいけないなと実感しました。
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[ 内容 ]
減らぬ米軍基地、実らぬ経済振興―。
日米同盟が強化されるなか、沖縄の現実は厳しさを増し続ける。
本土復帰以降、多くの困難に粘り強く立ち向かう人びとの闘いと、日米両政府とのせめぎあいを描いた前著に、沖縄戦から復帰まで、および米軍再編協議が進行する最新の状況を新たに加え、全面的に改訂した決定版・通史。
[ 目次 ]
第1章 米軍支配下の沖縄
第2章 日本になった沖縄
第3章 焼き捨てられた「日の丸」
第4章 湾岸戦争から安保再定義へ
第5章 政治を民衆の手に
第6章 民衆運動の停滞と再生
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[ 関連図書 ]
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目次
第1章 米軍支配下の沖縄
第2章 日本になった沖縄
第3章 焼き捨てられた「日の丸」
第4章 湾岸戦争から安保再定義へ
第5章 政治を民衆の手に
第6章 民衆運動の停滞と再生
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沖縄の戦後の状況、とりわけ「返還」後の動きを中心に書いてあるのだが、まるで教科書のような、新聞記事のような、色気のない事実の羅列になっていて、ざっと読み通して数週間後にはもう全部忘れてしまいそうだ。
しかし、基地を巡る沖縄県民のダイナミックな大衆運動の力感がすごい。本州以東の人間にとってはふだん、はっきり言って「ひとごと」になってしまいがちだが、日本の戦争のツケを一身に背負わされた沖縄のことも、やはり頭にとどめておきたい。観光地として経済的に寄与するのはいいけれど、「南の楽園」などというステレオタイプなイメージでとどまってしまうというのは、負の情報を隠蔽しようという影の動きにまんまと載せられることになるだろう。
結局のところ、アメリカ合衆国の大戦後の戦略構想にうまく使われているだけで、どうしても追随せざるを得ない日本政府の立場というのも、まあまあわかるけれども、情けない。少なくとも、米兵による県民に対する暴力(少女へのレイプなど)に関しては、米国任せにするのではなく、日本人としても納得のいく処罰を与えられるよう、法改正できないものだろうか。前評判の高かったオバマさんも、しょせんはアメリカ右翼なのか。何がノーベル平和賞だ。
ところで皇太子に火炎瓶投げた人や、沖縄国体で日の丸燃やした人はその後どうなったのだろう。
その後日本全体が右傾化するほうに進み、行政による学校への「日の丸・君が代」強制など、えげつない手口が全国的に進んでいき、国民はさっぱり問題意識も持たず相変わらずのうのうと暮らしている。
日本戦後史の暗部としての、沖縄の事実は、我々はもっと学ぶべきだろう。文部科学省はそんな姿勢は決して示さないだろうが、国民に良心があるならば、みずから学ばなければならない。
しかし時代と共に、すべての焦点は薄れていっているような気がする・・・。
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戦後以降、現在に至るまでの沖縄基地問題について概説する書。
基地問題に関する本を読むのは初めてだったが、
本書で時折指摘されるとおり「本土の無理解」は
私にも言えることだと実感させられた。
沖縄の方々がかくも基地問題に対して日常的に苦しみ
戦っていたのかを知るべきだと感じた。
ただし事態がさまざまな思惑のもとに複雑化していることもあってか
本書自体は読みやすくはない。きちんとした理解のためには
その他の本もあわせて読む必要があるように思う。
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戦後沖縄の政治と民衆闘争の歴史。第一章で沖縄戦から沖縄返還(本土復帰)までの27年間を概観し、第二章から第六章で沖縄返還から2005年までの33年間を、民衆運動に比重を置いて詳述する。
沖縄のメディア・言論空間を代表するような、オーソドックスな歴史叙述。沖縄の新聞や革新政治家がどうしてああいう論調なのか、その理由が理解できる。
日本に利用され、あるいは無視され、重大な局面では理不尽な決断を強いられてきた沖縄。沖縄の日本に対する反発と妥協は、今に始まったことではなく、長い戦後史の中で繰り返されてきたことだった。ところで日本は、いつまで沖縄をこうした地位に貶めておくのか?
巻末に引用されたNHK の「沖縄住民意識調査」(1972〜2002)は、沖縄の世論の変化が視覚的に理解できて参考になる。
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【沖縄の歴史を学ばずして、基地問題は語れない】
本書は沖縄現代史の第一人者による2005年当時の沖縄現代史通史である。
第1章で、沖縄戦から1972年の沖縄返還にいたる米軍支配時代を記した前著『沖縄戦後史(1976)』が要約され、第2章以降では、沖縄返還以後の沖縄の歴史的歩みが整理されている。「沖縄の現代史を貫いているのは、構造的差別の上に成立する日米安保体制と沖縄民衆の闘い」である。反戦地主、自衛隊配備、米軍用地特措法、代理署名、振興計画、海洋博、米軍再編協議、辺野古新基地建設等々、沖縄の現代史は本土の戦後とは比較にならないほどに重たく、激しく、複雑である。
「日本はますます近隣アジア諸国から孤立し、これと対立を深めながら、超大国アメリカに寄り添い、沖縄を軍事的対立の最前線に置こうとしている。沖縄は、そして日本国民は、それを容認するのか、それとも拒否するのか、今そのことが問われている」。「あとがき」に記された、著者のこの問いかけは、16年の歳月を経てなお、我々がそれに直面することを促している。(吉村/本土に沖縄の米軍基地を引き取る福岡の会)