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紙の本
「太陽系形成論」から「汎惑星系形成論」へ
2001/09/02 23:32
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投稿者:森山和道 - この投稿者のレビュー一覧を見る
太陽系とは、そして地球とは、そもそもどのように誕生したのだろうか。
本書は、惑星形成論の現在の成果をコンパクトにまとめた本である。まず一般的な惑星系形成の話から始まり、そこから太陽系の形成論の現在、観測によって明らかになった実際の惑星系、意外なその姿、さらにそこから発展する惑星系形成理論の展開がまとめられている。その他、月形成の話、そして「地球」がどのくらい銀河系に存在しうるかなどなど、結構盛りだくさん。また太陽系形成論の発展の歴史も面白かった。文体が硬いのが気になるが(特に前半)、気軽に読める形式でまとまったのは嬉しい。月形成についてはページのはしに、パラパラマンガの形でシミュレーション結果がまとめられている。これはナイスアイデア。やっぱり動きがあるものは「動く」形で表現されないと分からないのだ。
現在の太陽系形成論にもまだいくつか難点がある。ダストから微惑星への形成過程や、ガス惑星形成の時間、原始惑星ができたあとの惑星形成過程とその後の円軌道への移行などなどのことだ。本書はその辺のどこがどう問題なのかということも淡々とではあるがちゃんと描かれているところが面白い。科学書一般に言える話だが、どこからどこまでが分かっていることなのか、そしてどこからは分からないことなのかということをきっちり描いてくれる本がやっぱり面白いのだ。そういう意味では、もうちょっと分かってないところや問題点を強調してくれると、個人的にはなお面白かったかも。
観測からの問題提起も面白いところである。理論の人たちは太陽系以外の惑星系も何となく太陽系みたいなものだろうと思っていたのだが、実際に発見されたのは恒星のすぐ近くを回る巨大なガス惑星とか大離心率を持った惑星系とか、「異形」の惑星系ばかりだったのだ。しかも、どうやらこれは特殊ケースではないらしい。だがその一方で、太陽系形成の「標準モデル」も間違ってはいないようだ。いったいどこがおかしいのか?
どうやら形成過程を考える上での仮定にある種の「思いこみ」があったらしい。惑星は中心星からの位置を変えずに成長するわけでもないし、必ずしも安定した状態で恒星の周りをぐるぐる回っているわけでもないらしいことが逆に分かってきた。こうして繰り返される再検証仮定を経て、太陽系形成論はより一般的なものに、そしてよりダイナミックで面白いものになりつつあるように見える。著者らの表現によれば「太陽系形成論」は「汎惑星系形成論」へと脱皮しようとしているのだ。
後半はジャイアント・インパクトのシミュレーションを中心とした月形成の話になる。そこはあちこちで紹介されているので省略するが、月がないと地球の自転軸が安定せず、その結果、安定した気候が保証されない、という話は何度読んでも面白い。月がなかったら地球に現在のような生態系はなかった可能性が高いのだ。天文の世界から見る生命観は独特である。
というわけで、基本的にはお買い得な本だと言えるだろう。パラパラマンガを見るだけでも楽しいし(笑)。
なお<ネットサイエンス・インタビュー・メール>で行った、著者の一人・井田茂氏へのインタビュー録がhttp://www.moriyama.com/netscience/Ida_Shigeru/index.htmlにあるので、興味がある方は参照して欲しい。
初出
http://www.moriyama.com/1999/sciencebook.99.12.htm#sci.99.12.24
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