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疲れる。単行本は2008年刊。解説の吉田篤弘は「まいったな」~人口250人余りの美浜島に住む14歳の信之は唯一の同級生である美花と灯台守の爺さんからコンドームを買ってセックスをすることで頭が占められている。金魚の糞の様にまとわりついてくる輔が邪魔だが,父親の洋一から虐待を受けているのは誰でも知っているても,小さな島内で誰も止められない。美花の家は宿屋を営み,バンガローも持っているが,それが逢い引きの場であるが,客がいるときは使えない。嫌らしい目つきで美花を見る客が帰れば欲望を充たせるが,予定を延ばされ,学校の裏山にある神社で深夜に会う約束をしたが,暴力父が客を乗せて夜釣りに出掛けた輔が付いてくる。津波がやってきた。山にいた信之と美花と輔,船に乗っていた洋一と山中という客,灯台守の爺さんしか生き延びなかった。こんな状況でも山中は美花に言い寄り,遂に乱暴を働いている場面を見て逆上した信之は,カメラマンで芸能事務所を紹介するという山中の首を絞めて殺し,崖下に放り出して,島を離れた。二十年後,信之は高校を出て川崎市役所に就職し妻と娘を得た。美花は中堅女優だ。島を離れて以来,連絡先だけは伝えたから,困ったことが起こったら,報せて来るに違いない。輔はプレス工になって父親の許を離れて放浪しているが,兄と慕う信之に擦り寄りたい。新聞に載った記事を見つけて尾け回して,家を突きとめ,妻を尾行して,家庭生活にも不満を持っていると踏んで,幼児教室の待ち時間に接近して,アパートに誘うと,あっさりと関係が出来て,週に一度は通うようになってきた。信之に接触する手掛かりを掴んで連絡すると,信之の反応は薄い。幼稚園に通う椿という娘が変質者に悪戯されたからでもあるが,気持ちは美花の方にあるからだ。がっかりする輔の許に父親の洋一が現れ,灯台守の爺さんが山中を殺して偽装したのはお前の息子だという遺言を遺したからだ。暴力を振るうと,逆らえない輔は,あっさり信之と美花のことを話し,金を引っ張り出せと命令され,信之は美花から300万を預かっても,それを使わず,自分の預金を引き出して輔に与え,好きなだけ酒を飲ませ,睡眠薬も与えるように指示し,アパート階下の空き部屋に潜り込んで,殺す機会を狙う。墓穴を掘ったが,洋一は酒に溺れて自滅した。輔は洋一が換気扇に隠した手紙と写真を探り出し,保険の為に,付き合っている工場の女従業員の名前で,証拠を信之の妻・南海子に送っていた。穴が見たいという輔は階下で,信之に殴り殺され,シートに何重にも包まれ,スーツケースに入れられて埋められた。美花に報告に行き,1週間は共に過ごしたが,2週目に入ると美花が距離を取るようになり,美花の口から真相を告げられる。夫の犯行を知った南海子は失踪届を出して信之の出自を知り,輔の手紙で20年前の事件も知る。2週間後に帰ってきた夫は何事もなかったように,普段の生活に戻り,久し振りに美浜島近くを通航路が再開され,家族三人で島を眺める~こういう物語も書いていたんだねえ。大した妄想力だ。一の語り手は信之,二は南海子,三は輔,四は信之,五は南海子。なるほど,こういう語り口もあったかぁ。まだ続きがありそうな予感を残して終わっている
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自然災害によって、3人の人生が大きく変わる物語。タイトルとは反対に光がほとんどない。あっても気づけていない3人が切ないを
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理不尽な暴力と性を中心とした物語。
一度損なわれたものはもはや取り返しようがない、ということを抱え続ける人たちの物語。
最初の印象は三浦しをんさんは桐野夏生さんの本みたいな本も書ける人なんだ、というもの。
決して気持ちのいい読後感の本ではない。
しかし、それだけに読者を引き込み続ける力はある。
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はじめてこの人が書いた本を読んだ。
暗くて鬱々とした感じがちょうど今の私と合致しているから評価が高くなってしまったんだろう。
島の人ひとりひとりの感情の動きがあまり読み取れなかったのが残念。
特に美花とかどうしてあんな風になってしまったんだろう。
対照的に、海南子の心情がよくかかれていて、どこをメインにもっていきたかったのか不明だった。
でもとにかく鬱々としたところが気に入った。
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一気読みでした・・・しをんさんは、こんな小説も書くのか~!と驚きつつ読みました。重いし、暗いし、コワいし・・・でもそれらが、なんだか官能的で・・・子供っぽい無邪気さと、邪悪さがホントにコワくて、好きではないけど、非常に印象的な小説でした。いろんな意味で、ぜひ読んでみていただきたい1冊ですね。
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解説にあるとおり、どこまでも「容赦ない」。自然災害という理不尽に見える暴力から、個々の人間が逃れられない暴力性について、逃げずに見つめ、言及しているので読んでいて辛い。作者の容赦なさは、ストーリーの暗さ、卑屈さとは裏腹にかえって潔さを感じるほど。まだうまく、光、を咀嚼できていない。
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暴力は巡って戻ってくる。
怖いお話でした。
そして三浦さんの素晴らしい物語構成力のおかげで、さらに恐ろしさは増していました。
こんな暗い話を出張のお供に選んだ私は馬鹿で、かなり後悔しました。読みましたけどね。
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作中で描かれる、有形無形のあらゆる形の人の中に存在する暴力を見せつけられ、同時に誰の中にも同じものが確かに在ることを嫌でも思い知らされる。三浦さんの作品ということで、明るい話を期待していたところを、見事に打ちのめされた感じ。2008年の作品だが、東日本大震災の津波被害を思い起こさずにはいられない美浜島の惨状や、生き残った信之、輔、美花のそれぞれの心の闇が痛々しい。そして、それらを信之の妻である南海子の視点を交えて非情なまでに容赦無く抉り出す。南海子自身の闇も深く、信之との狭間に置き去りの椿が居た堪れない。
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日常を少しはみ出して止まらなくなった人がいる
そんな小説
私に想像力がないのではなく
リアルな世の中結構狂ってるから
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こういった暴力性や自己中心性を抱えているってことを自覚しなければってことを促された気がする。
自分の求めることに忠実になりすぎれば、他の何かを排除することになる。
大人や社会性とは、その排除するものの影響を受け止められるかどうかが、問われているのかもしれない。
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登場人物たちの外面とは全く異なる心の内の描写がエグい、というのが第一の感想。
抵抗しようのない圧倒的な暴力からくる動的なエグさと、それを経験したからこそ生まれた心の静的なエグさ。最後まで希望を持たせることなく貫き通したのは通好みではあるかもしれないけれど
、自分にはしんどい作品でした。
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しをんさん・・・
こんな狂気に満ちた暴力的な作品まで書いてたんですか。
「舟を編む」を読んだ後やっただけに、著者の作風の幅広さに感嘆。
そしてこの長編を3時間ほどで読み切らせる筆力。
東日本大震災前に、この津波の情景を書いたなんて。
“光がすべての暴力を露わにした。”ーp40
めちゃくちゃヘビーで暗い物語やのにタイトル『光』。
どう解釈したらいいねん。いや明快な答えなんてないんやろけど。
登場人物の誰の気持ちもその狂気も理解できない。
過去なんて一切関係ないところで生きられるのに、
自らを縛りつけて悲劇のヒロイン演じているだけやん。
そう思うのに、なんか人間らしくてかわいらしいなあと思う部分もある。
そこがこの小説の面白い部分やったんかも。
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『光』ってタイトルだけど、暗ぇ~お話。
途中で貫井徳郎作品か勘違いしそうになったくらい。
んでもって、あたしにとってはホラーものやった。
登場人物たちの裡に 奥に
なんだか【へび】が存在してるみたいなんだよぅ。
超怖ぇ~よぅ。
冷たくて 暗くて でも、強か。
■ ■ ■ ■ ■
ハートウォームなお話が多い三浦しをんさんポくないお話ではあるけど
輔のゆき兄への執着加減とかは、腐れボーダーで、いかにも感。(笑
■ ■ ■ ■ ■
で。
フィクションながら
余所ん家の子どもながら
椿ちゃんがどういうふうに育ってくのか
オバちゃん、すんごい心配。
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【あらすじ】
島で暮らす中学生の信之は、同級生の美花と付き合っている。ある日、島を大災害が襲い、信之と美花、幼なじみの輔、そして数人の大人だけが生き残る。島での最後の夜、信之は美花を守るため、ある罪を犯し、それは二人だけの秘密になった。それから二十年。妻子とともに暮らしている信之の前に輔が現れ、過去の事件の真相を仄めかす。信之は、美花を再び守ろうとするが―。渾身の長編小説。
【感想】
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信之はどのように育った人間なのか…
愛を感じることがなかったことで暴力を使うことができるようになってしまう、それを思うと椿が可哀想に思えてくる。
ありきたりだけど誰もがもっている可能性のある、暴力を使うか使わないかはそこにあるように思える。
三浦しをんさんを読んだのは初めてなのだけど、こんな感じのものを書くとは予想してなかったので読み始めてのどんより感が最後までずっと続いた、それでも最後まで一気に読めたのは不思議。