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用人の身から隠居することになった三屋清左衛門の連作集。晩年の作品の特徴である明るさが、この作品でもにじみ出ていて、主人公清左衛門のコミカルとも言える日常が活き活きと描かれています。
当時の隠居は52歳なのかぁ。最初は寂寥感が・・・なんていっているけれど藩の陰謀など次々に事件に巻き込まれ結構忙しい日々。いい年なのに、人を見抜けず厄介な状況になったりと、おちゃめな感すらある清左衛門。
作者も57,8歳くらいの時の作品と思いますが、実体験らしきものも反映されているのではないでしょうか。なかなかその年でしか描けない、しみじみとした作品です。
はぁ、早く隠居したい。
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隠居して公務の忙しさから逃れた反面寂寥感も持った主人公、釣りや剣術、学問に力を入れる一方で、旧知と関わる中で、藩の抗争に巻き込まれる。
全編に登場するのは清左衛門と息子の嫁の里江、奉行の佐伯熊太。また、十五話それぞれに主だった人物が登場する。醜女にはおうめ、高札場には安富源太夫、零落には金井奥之助、白い顔には波津と多美、梅雨ぐもりでは末娘の奈津と杉村要助、川の音には野塩村のおみよ、平八の汗には旧友の大塚平八、梅咲くころには江戸屋敷の女中松江と安西佐太夫、ならず者には涌井のおかみであるみさ、草いきれには小沼惣兵衛と吉井彦四郎、霧の夜には成瀬喜兵衛、夢には小木慶三郎、立ち会い人には中根弥三郎と納谷甚之丞、闇の談合には用人の船越喜四郎、石見守信弘、朝田派の家老朝田弓之助、早春の光には遠藤派の家老遠藤治郎助。
藩の派閥抗争の解決に力を貸したり、旧知のその後の人生を知って自己のこれまでとこれからを彷彿したり、充実した隠居暮らしが描かれる。
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どうもこの作家のリズムと当方が合っていない気がする。
この作家の本領は本作のような凡人の佇まいの描写にあるのではと思う。言うまでもない上手い文章は決して歴史的事件、つまりはエンタテインメント的・スペクタル的要素を要する題材とは必ずしも融合しないかと。また、異物感を読者に投げかける訳ではなく、既視感を覚えさせ思いを巡らせる作風というのがここ最近何冊か読んだ上での当方の理解。
その意味で本作はこの作家の魅力を十分に堪能できよう。それでも今ひとつ読んでいて乗れないのだから致し方ないですわ。
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日残りて昏るるに未だ遠しー。家督をゆずり、離れに起臥する隠居の身となった三屋清左衛門は、日録を記すことを自らに課した。世間から隔てられた寂寥感、老いた身を襲う悔恨。しかし、藩の執政府は紛糾の渦中にあったのである。老いゆく日々の命のかがやきを、いぶし銀にも似た見事な筆で描く傑作長篇小説!。(1992年刊)
・醜女
・高札場
・零落
・白い顔
・梅雨ぐもり
・川の音
・平八の汗
・梅咲くころ
・ならず者
・草いきれ
・露の夜
・夢
・立会い人
・闇の談合
・早春の光
用人を辞め、家督を譲り隠居の身となった、三屋清左衛門。隠居生活に戸惑いながらも、生きがいをみつけ暮らしていく日々を描いた時代小説である。
仕事でそこそこの成功を収め、後継ぎにも恵まれた清左衛門は、隠居の身とはいえ、いろいろと頼りにされる様は、ある種、サラリーマンの定年後の理想像ともいえる。「涌井」といういきつけの店で、料理を喰らい酒を飲むシーンが多いが、読んでいるとしばし俗世間を忘れることが出来て心地よい。
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藩の上級職を勤めた人物の隠居後の色々な出来事を纏めた短編。
隠居前の人脈等を活用して、多くの事件を解決していくのは爽快。老いを客観視し、最期の時まで懸命に生きる。共感する点多し。
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藤沢周平初読み作品。 袂を分かった旧友との再会を通じ、若き頃の苦い過ちを振り返る『夢』『零落』が特に心に響いた。 隠居の生き様。老いの立場の受け入れ方など、 「不惑」を超えた先の人生においても尚、背負い続ける〝重し〟がある事に気付かされる。
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藤沢周平全集(第21巻)の1話目。
同じ巻に収録された、「秘太刀馬の骨」が目的だったのだけど、結果1話目のこちらの方が面白かった。
藩の執政の第一線から隠居して退いた後の暮らしぶりが書かれています。
張り合いを失った日々かと思いきや、日々事件の解決や藩のごたごたを相談されて、充実した毎日。でも、主人公の清左衛門がイイ感じに枯れているのが良かった。
よくできた嫁や、昔からの友人の人柄も良くて、楽しく読めました。
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北大路欣也さん主演のドラマを観ていたので筋書きは知っていましたが、原作も本当に面白かった。
多分藤沢周平さんの著書は初めてだと思います。
母が好きで何冊か持っているので他の著書も読んでみたいです。
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隠居後の生活に彩りを持たせる物は、やはり自身の心持ち。体の衰えは隠せずとも、現役感にはこだわって行きたいもんだ。時にすがり、時に胸を張る。爺さんになってもそんな現役感のある奴らと酒呑んでいたいもんだ。
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内容(「BOOK」データベースより)
日残りて昏るるに未だ遠し―。家督をゆずり、離れに起臥する隠居の身となった三屋清左衛門は、日録を記すことを自らに課した。世間から隔てられた寂寥感、老いた身を襲う悔恨。しかし、藩の執政府は紛糾の渦中にあったのである。老いゆく日々の命のかがやきを、いぶし銀にも似た見事な筆で描く傑作長篇小説。
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主人公である三屋清左衛門の幼馴染である町奉行熊太が赤蕪を食べるシーンも印象的だが、定年後の武士が己のペースで生きていく淡々としたシーンの連鎖が沁み込むように響く。
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久しぶりに藤沢周平読みました。
良いですねぇ。
日残りて昏るるに未だ遠し。
隠居した清左衛門は、老いと向き合う日々。
しかしいつの間にか、藩の紛糾の渦中に巻き込まれていきます。
連作短編集で、日常が描かれていきますが、背後には生きることへの深い洞察が見られます。
ーそうか、平八。
いよいよ歩く手修練をはじめたか、と清左衛門は思った。
衰えて死がおとずれるそのときは、おのれをそれまで生かしめたすべてのものに感謝をささげて生を終ればよい。しかしいよいよ死ぬるそのときまでは、人間はあたえられた命をいとおしみ、力を尽くして生き抜かねばならぬ、そのことを平八に教えてもらったと清左衛門は思っていた。 ー 436ページ
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内容紹介
日残りて昏るるに未だ遠し――家督をゆずり、離れで隠棲の日をおくる清左衛門は、日録を記すことを自らに課した。世間から隔てられた寂寥感、老いた身を襲う悔恨。しかし藩の執政府は紛糾の渦中にあった。老いゆく日々の命の輝きを、いぶし銀にも似た見事な筆で描く傑作長篇小説。
仲代達矢、北大路欣也主演による映像化も話題に。 解説:丸本淑生
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藤沢周平さんの初読み。周囲にもファンが多く、いつか読もうと思っていてなかなか手に取れなかった。
以前、宮城谷昌光さんの対談か随筆の中で、藤沢周平さんの本書と「蝉しぐれ」を絶賛されていたので、「読みたいリスト」には登録しておいたが、やっと本書を読むことができた。
江戸時代を舞台とした「時代小説」、つまり史実に基づく小説ではなく、その時代要素を取り入れたフィクションだ。史実というシナリオがもともとあるのではなく、著者はイチからストーリーを構築しないといけないということだ。
そういう意味ではとてもよくできた小説だなと思った。同氏の小説では架空の「海坂藩」が舞台となるそうだが、本書の舞台がそうであるかどうかはわからない。
ともかく読み始めたら即江戸の町に放り込まれる。
主人公三屋清左衛門は、藩主に仕える用人であったが、藩主の死去を期に、隠居したいと新藩主に申し入れ、それが認められた直後の隠居生活での出来事を描いた小説である。
隠居、悠々自適、そういう言葉が出てくる。現代で言えば勤め人が一仕事終えて、「さぁて、やっと仕事も勤め上げて、これからは自分の好きなことをやって余生を楽しむぞ~」みたいなシチュエーションである。
清左衛門も、城下町を好きな時間にぶらぶらしながら、時には鳥を刺し、魚を釣りと、そして時々美味いものを食ってと、そんな生活を望んでいたようだ。
ところがそういう予想に反し、藩内の様々な事件に巻き込まれていく。もともと用人という職は、人望熱く、主君の仕事を卒なくこなせる人物が適役のポジションだ。そのポジションについておれば、自然に中央には精通してくるし、人脈も広くなる。
そんな人物は、隠居しても、逆にフリーの立場と言う中立性からいろいろと相談ごとを持ちかけられる羽目になるようである。
大きなところでは藩内の派閥抗争にからむ事件の調査から、庶民が巻き込まれた問題の解決まで、次々と清左衛門のところに課題が持ち掛けられるのである。誠実な清左衛門は、その解決に奔走するのである。
事件性のあるストーリーは読者を飽きさせない。短編連作の形式で展開されるので、一話一話を楽しみつつも、全体でまた楽しめる展開となっている。
それにしても、どちらの派閥につくかで将来が左右されることを悩んだり、派閥抗争の裏側でドス黒い謀略が渦巻いているなど、江戸時代も今も全く変わらないと思わせるようなストーリー展開に、時おり現実と対比しながら読んでいる自分がいたものである(笑)。
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R2.2.8~3.1
(あらすじ)
日残りて昏るるに未だ通し――。
家督をゆずり、離れに起臥する隠居の身となった三屋清左衛門は、日録を記すことを自らに課した。世間から隔てられた寂寥感、老いた身を襲う悔恨。しかし、藩の執政府は紛糾の渦中にあったのである。老いゆく日々の命のかがやきを、いぶし銀にも似た見事な筆で描く傑作長編小説!
(感想)
ご隠居、三屋清左衛門の心持ちの変化が楽しい物語です。個人的には、第三話、「零落」のあたりから、面白くなってきました。社会との繋がりが薄れ、気落ちする自らに驚きつつも、隠居の立場で藩政の裏側に巻き込まれていく。
老いの心情、できる男の仕事の仕方、何かと学べる一冊でした。
ただ、これを読むと多少老いが怖くなりますね。
友達がいないと本当に孤独に苛まれそうです。