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ある男が、ひょんなことから降霊会に参加して・・・
過去のいきさつを気にし続けても、しょうがないじゃんと思いつつも、この主人公の逃げっぷりには呆れるわ。
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ゆうちゃんという初老の男の夢に出てくる女性が
ゆうちゃんの心の奥底にある後悔や懺悔の思いを晴らすために
亡くなった人、さまよう人の霊を呼び語り合う
戦争が終わって、高度成長期のまっただ中の東京で
小学校に入ったばかりのゆうちゃんと
時代に置いて行かれたような家族におこったこと
ゆうちゃんが忘れようとしても忘れられなかったこと
学生運動の最中、東京生まれでドライな学生生活を送る
ゆうちゃんや仲間たちの間に突然現れてしまった
同じ年ながらも苦労して働きながら勉強する百合子
ゆうちゃんが忘れれない百合子と、ゆうちゃんの仲間たち
ゆうちゃんが忘れてしまったと思っていたこと
2つの昔話が、時代背景と共に悲しく切なく胸に迫る
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一晩にて読了。
霧の中に紛れて、何もかもうやむやになってしまいそうだけど、
でも、主人公、ゆうちゃんの中では気が付かないフリをしてた事や、辛すぎて心の奥底に感情を沈め、その上にどんどん蓋をして見ないようにしていた事に向き合い、自らの罪を悔悟する。
余りにも自由すぎた戦後の昭和。
心の耳を傾け、心の声で語りかければ霊魂には届くのだ。
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戦争を終えて復興を果たしたわりに復活しなかった道徳観のなかで生きてきた主人公と彼らの仲間は、世の中が豊かになったのにそれにふさわいほど幸福になってはいなかったのだろう。
また大人たちは同じように生まれてきても戦争との関わり合い方の違いでその人生は大いにちがってしまう。
生きている時には生きているからこそ口にできない言葉がある。死んで肉体を失ったからこそ見ることができる事実がある。
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雷の夜に助けた女性により降霊会に導かれた男は、そこで記憶の底に封印してきた過去と向き合うことになる。前半のキヨの話がすごくよかった。幼い彼が抱えていた苦悩と、沌とした戦後を生きた人たちの悔恨の独白。苦くて切なくて胸が詰まる。
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若い頃、なにも考えずにしゃべった言葉をずっと覚えられていて愕然としたり、虐められていたらしいのに全く気づいていなかったり、人間関係はつくづく難しい。降霊会が本当にあったら、いろいろ責められそう。
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昨年「週刊朝日」に連載されたものの単行本化。
来し方を さながら夢になしつれば
覚むるうつつの なきぞ悲しき。
という新古今の和歌を冒頭に掲げているのだが、この作品は罪の告解のようだ。
「 わたしは顧みる。すると驚くことに眼下には、私がかつて暮らし、捨ててきた街がひとつ残らずぎっしりと、
まるで重箱さながらに在りし日のまま犇めいているのである。
たちまち罰されぬ罪のくさぐさが押し寄せてきて、私は胸の重みを支えきれず路上に蹲る。」
古い別荘で雷雨の夜、いつも夢で罪を告げる女によく似た若い女性が訪れ、雨宿りのお礼にと私を降霊会に招待する。
最初の降霊会では、小学生の時の友だちで転校生だったキヨシが、父親から当たり屋をさせられて死んだ記憶が蘇る。
現れたのは、当たり屋を止めようとしていた当時若い巡査だった男の生霊と、父親の死霊、そしてキヨシの死霊。それぞれの思いを語り、慰めを得て去って行き、何もせず忘れようとしていたわたしの罪の想いも軽くされた。
昭和30年代、作者と同じ子供だった私には当時の貧さと豊かになりつつある社会の変化がわかる。実によくわかる。と思うところが多々あった。
第2夜は昭和40年代の学園紛争時代に訳もなく捨てた恋人の記憶が蘇るが、現れたのは遊び仲間で事故死した真澄の死霊だった。
真澄は私を愛していたが、私は気づかずに工場の寮に住んで定時制高校に百合子に溺れたため、真澄は育ったニューヨークに行き、精神を病んで帰国し高速道路を暴走して事故死した。しかし私は深くは気に留めなかった。第2夜
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降霊会を無しにして、前半と後半のお話を2冊に分けて別の小説にして、もっとずっと長い物語として読みたい。
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前半主人公の幼少時代であるゆうちゃんとキヨの
お話は衝撃的で深く重いもので心揺さぶられるものだったけど
後半青春時代の百合子や真澄とのことは
なんだか人事のようにつめたい主人公に
あまり共感もできず、ラストもよくありがちで残念。
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2012/05/04-05/06 ☆はじめに「来しかたをさながら夢になしつればさむる現のなきぞ悲しき」との古今和歌集の歌がある。過去と現実は連続しているはずなのに切り離して、「昔は・・・」と片付けようとする。過ぎ去った時をすべて夢とし、別物にしてしまったため、夢から醒めて帰る現実が無いことが悲しい。☆恋愛に胸をときめかした頃や子供だった頃の個人の思い出、抑留引き揚げや戦後のどさくさの日本の歴史を今につなげよう。☆捨てられた女よりかわいそうなのは、忘れられた女。もっとかわいそうなのは、愛されなかった女。☆人間の幸不幸には「さよなら」が必要だ。破滅と再生。別れと出会い。人生の節目で大切なのは「さよなら」です。
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面白かったけどなー。昔の作品には及ばず。ただ、高度成長期の日本の影の部分の描写にはぐさっとくるものがあったなー。
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一気に読み終わった。面白かった。
後半の話はちょっと飛ばして後から読んだが、
結末が気になって先を急ぐ気持ちに抗えなかったためだった。
前半の話は、
戦争の悲哀や昭和の風景に満ちている。
救われないこころとは裏腹に
キヨの言葉のその明るさによって
この家族の魂が救われたような気がした。
後半の話は、
聞き覚えのあるような三角関係の話。
まるで「秒速3センチメートル」のような結末。
そしてエピローグ。
まさに、和風怪談ファンタジー。
ごちそうさまでした。
おいしゅうございました。
特に印象的だったセリフは、ミセス・ジョーンズの
「……そうでも考え無ければ、わたくしもあの方たちも救われませんでしょう?」
読み終わると、いろんな意味に聞こえて来る。
降霊会という少し趣向の違うガジェットを持ち出してはいるが、これは所謂「こっくりさん」と同じもの。
それに幾つかの怪談の要素をミックスして、昭和の懐古と恋愛小説的エッセンスをうまく組み込んで出来ていて充分に秀作。
傑作か?というとちょっと微妙な気はする。
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前半のキヨの話と、後半の百合子の話。キヨの話だけでよかったなあ。前半はものすごく感動したのに。後半、しりつぼみになってしまった感じ。残念。
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徐々に霧が晴れてきて、最後に全体が現れたような作品の雰囲気がすごく良い。
主人公に語りかける、過去に繫がりのあった人達が、主人公の心の中の澱を撹拌し溶かしてくれる。すごく面白く思えたのは、自分の心を捕らえて止まない過去の出来事は、その中心人物によりほぐれるのではなく、思いがけない周囲の人達により、絡まった心をほどいてくれていた事。
不可解で不可解でどーしょうもないけど、面白かったー!
高地では、雷を横から喰らうという事を知り、雑学知識が一つアップ。
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浅田次郎の世界である。
前半と後半の2本立てであるが、主人公は同一。
三つ子の魂、百までではないが、主人公の決められない性格は治らない。ラストは少し怖い。
冒頭の新古今集の歌がきいている。
「来しかたを さながら夢になしつれば 覚むるうつつの なきぞ悲しき」
過去と現実は連続しているはずなのに切り離して、「昔は・・・」と片付けようとする。過ぎ去った時をすべて夢とし、別物にしてしまったため、夢から醒めて帰る現実が無いことが悲しい。