紙の本
奈良と三重の結びつきが唐突であった
2014/05/24 21:22
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投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は内田康夫の浅見光彦シリーズの1編である。時折、登場する奈良の寺に関する小説である。今までも当麻寺など、それほど名の知れた寺ではないが、浅見との接点を作っている。今回は尊宮寺という架空の寺が登場し、そこの養女がヒロインである。櫻香とはその養女の名前である。
尊宮寺とはいうものの、名の通った如意輪観音があり、法隆寺と隣接しているとあれば、もう中宮寺がモデルになっていると考えるしかない。中宮寺は門跡寺院で格の高い尼寺である。この寺の養女と、三重県の財閥との関連が徐々に露わになってくる。
この手の推理小説では、昔から血縁関係が不詳で、その謎を解き明かすことが読者の驚きと意外性を突くことが常套手段である。本書もその例外ではない。その点では古典的な筋立てと言えるのである。浅見光彦の兄も、地元警察の刑事たちもお決まりのように登場してくる。もう浅見の探偵としての名声?は、警察では有名になっているようだ。
しかし、ストーリーにはやや無理がある点が気になる。内田康夫のいつものスタイルであるが、最初に登場人物を登場させて、終末近くになると登場人物やそれに合わせてストーリーの辻褄を合わせるスタイルである。突然、登場する怪しげな人物や大物実業家の執事、秘書的な人物である。
慣れてしまえば、ストーリーの邪魔をするわけではないが、この養女との血縁関係がなんの前触れもなく明らかにされるところなどは、いささか強引な運びである。そういう点では本書は、浅見光彦シリーズ全体を凝縮したような趣がある。
すでにシリーズの大半を読んでいる読者にとっては、もう少し変化を付けるが、大どんでん返しをするか、たまには何か奇想天外な展開を期待したい。だが、初めて読む読者に、これが浅見シリーズだと思われるかも知れないというリスクと、読み始めて間もない読者の期待感を裏切ることになるので、出版社を含めてそういうこれまでのイメージを壊すようなことはけっしてしないであろう。誠に残念な話である。
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久しぶりに読んだ、浅見光彦シリーズ。
実在する奈良中宮寺を舞台にしたお話しで、ヒロイン櫻香の言葉から尼寺の教えの一端に触れられる。
和顔でいる。いつも優しい笑みを湛えているという意味だが、和というやわらかい言葉に顔という字の組み合わせは、いかにも尼寺での言葉と感じさせる。中学1年生の櫻香はあまりにできすぎた娘さんで、そんな子はどこにいるんだと思わんばかりですが、奈良、尼寺の雰囲気に浸れます。
全般は上流社会(昔の貴族社会)のストーリなので舞台を見ているような感じだが、楽しみながらさっと読める本だ。最後で、殺人犯を見逃していいのか?と思ったが、物語なので良いことにしましょう。
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5歳まで施設で育ち、尼寺に養女に迎えられた美少女・櫻香(さくらこ)。中学生になった彼女の周りに、次々に不審な出来事が起こる――。奈良、尼寺から始まった謎を追い、浅見光彦は、鳥羽へ向かうが……!? 平城京遷都1300年記念作品。
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尼寺や尼僧の話はとっても興味深かった。
話も途中まではよかったけど・・・
いつも思うけど結末がちょっとって思うものが多い。
犯人があの人で解決の仕方があれではミステリーとしてどうよってね^_^;
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奈良の中宮寺(本文中では尊宮寺)をモデルにした舞台で、尼寺の養女となった櫻香の出生の秘密を、例によって行きあたりばったり手掛かりに遭遇して解決していくというお話。
最近の浅見ものは、昔風のミステリ原則からすると、こういう結末は有り?というのが多く、本書もそうだったんですが、、、
テレビで浅見ものと言ったら、昔は水谷豊が演じていたのが記憶に残っているのですが、最近の彼が演じている「相棒」シリーズでは、犯人が同じような状況だったとして対照的な結末になるので、これまたどちらが良いんだか考えさせられます。
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奈良の由緒ある尼寺・尊宮寺の養女として迎えられた櫻香は、尼僧・妙蓮たちに大切に育てられた。尼になることに疑問を抱くことなく育った櫻香だったが、中学生になると不審な事件が相次ぐ。「櫻香を出家させるな」と書かれた差出人不明の手紙、突然声をかけてきた見知らぬ女性―。不安を覚えた妙蓮は、浅見光彦に相談を持ちかける。謎に包まれた櫻香出生の秘密を浅見光彦が解く。
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生まれてまもなく何者かによって捨てられた櫻香は、やがて尼寺に引き取られ養女となる。
聡明なうえに美しく育った櫻香は、いまの生活に何の疑問を抱くこともなく穏やかに生活していた。
しかし、見慣れぬ人たちが周辺に現れはじめてから様子は一変する。
母の知り合いだった尼寺の関係者より依頼を受け、光彦は櫻香に対する調査を開始する。
やがて櫻香に話しかけた胡散臭い男が殺され死体となって発見される。
事件は櫻香を中心におきていると光彦は思い始めるが…。
犯人を逮捕することが光彦の目的ではない。
これまでにも何度か光彦によって犯人と特定されながらも、警察に逮捕されなかった者もいる。
複雑な人間関係が絡みあったうえでの犯行。
櫻香の未来を思い、光彦は警察の介入を望むかどうか。
関係者たちの考えにゆだねることにする。
読みやすく、それでいてきちんと推理小説になっている。
浅見光彦のキャラクターも親しみやすく、母親との関係、兄との関係などもいつも通りで安心して読むことができた。
今回の舞台は奈良。
日本全国のあちこちで事件が起き、それぞれの物語からは土地の空気が感じられる。
そんなところも好ましい。
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浅見光彦シリーズのフォーマットは期待通り踏襲。今回の舞台は地元に近い鳥羽や名張なので(奈良が中心だけど)、なんと言うのか、うんうん(^_^)て読めた。
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名探偵、浅見光彦シリーズの最後の方の作品です。浅見光彦ものは原作は若いころに2冊くらい読んだ程度ですがテレビドラマは結構見てます。ドラマ版が面白かったので、久しぶりに原作を読んでみました。
この作品の魅力はなんといっても主人公の櫻香(さくらこ)ですかね。誰もがこの少女に魅かれると思います。テレビドラマでは志田未来さんが演じてました。あと尼寺という禁断の世界(これこれ)の事情もよくわかります。
探偵の浅見光彦は長身で清潔。甘いマスクで33歳の独身。名家(大金持ち)の次男坊。女性読者に人気が出る訳ですな。金田一耕助とも明智小五郎とも、だいぶタイプが違います。近いのは神津恭介ですかね。あっさり味ですが、とても読みやすく、そして面白いです。
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内容(「BOOK」データベースより)
奈良の由緒ある尼寺・尊宮寺の養女として迎えられた櫻香は、尼僧・妙蓮たちに大切に育てられた。尼になることに疑問を抱くことなく育った櫻香だったが、中学生になると不審な事件が相次ぐ。「櫻香を出家させるな」と書かれた差出人不明の手紙、突然声をかけてきた見知らぬ女性―。不安を覚えた妙蓮は、浅見光彦に相談を持ちかける。謎に包まれた櫻香出生の秘密を浅見光彦が解く!
令和4年3月23日~25日