紙の本
人間模様
2014/02/08 12:26
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投稿者:八犬伝 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間模様をさりげなく描いた
読みどころのある本。
紙の本
物語が、そのまま映画を撮る現場…という不思議な設定。そこがいい。
2020/11/16 15:57
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投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
テーマは、血縁を超えた家族…なんだと思うが、登場人物は、みなTVや映画にも出ている(いた)人気の役者というところが思い切ってる。
日本の映画界を支えてきた名優・笠松市朗、その息子も味のある名わき役といわれる俳優で、前妻でありかって女優だった女性も登場。笠松の二番目の妻との間に生まれた息子も今や人気俳優で、その恋人ですら、若手人気女優だったりもする。
物語は、いままで、バラバラに暮らしていた彼らが、山と海に囲まれた、とある町の古い日本家屋に一時同居して、映画を撮る。
大きな流れは決まっているモノの、台詞もほとんど決められていない、ただ偶然が支配する中で、名優・笠松市朗を中心に、ひとつの物語を綴ってゆく。
あっ、登場人物はもうひとり。影の黒幕のごとく、その存在だけが見え隠れする、この映画の監督紺田。
ひとつ間違うと退屈な話になりそうだなぁと思いきや、第一章からして、「これって、もしや、ノンフィクション?」とか思えるくらいのリアリティ。一緒に暮らせなかった家族が、なぜか同じシゴトを選んでるってところからして、嘘くさいと思って読み始めたモノのもう、これ以外ありえないだろうなと思う納得感でもありました。
この物語。本気で、ドキュメンタリーテイストの映画に撮ったら面白いんじゃあないの?
少なくとも私は見てみたいです。ああ、ただし、役者をすごく選びそう…ですが。
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家族を演じる俳優家族の話。
バラバラになってしまっても
気持ちが合えば時間を越えて戻れるのは
家族だからなのかな。
なんだかんだ幸せな家族の中で育ててもらったんだなと
感謝の想いでいっぱいです。
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東京バンドワゴンもそうだったけど、配役を妄想しながら読んだ。
皆のかかえる過去や現在の秘密(爆弾)が明かされつつ話が進む。
俳優一家の終の物語。
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さすが、小路幸也。登場人物のキャラもたっていて、彼らが織り成す家族の情景も美しく、物語中に挟まれる挿話も読み応えがあってすばらしい。王道「東京バンドワゴン」だけじゃない、少々癖のある家族の肖像を描かせても上手いなぁ、とうなってしまう。
と褒めちぎっておいて、落とすようなことを書く
読後、「この映画観たい。彼ら(登場人物)の演技を観たい」と思ったのもつかのま、ふと考えた。
自分たちの現在過去振り返り、役者として自分自身を演じる。そのことを彼らはなんだか高尚なことのように思っている節があるが、それってある意味多重人格にもなりうる逃避行動じゃないのか?
そりゃまぁ、彼らは根っから役者なんだからそれでいいのかも知れんが、そんなリ映像を観客に観せるってのは、それはそれでちょっとはしたない行為じゃないのか?
オモロい小説だと思う。小説だから良いのだと思う。こんな映画が出来たとして観に行くかどうか、観てオモロいかどうかはまた別問題だと思った。
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なんといっても舞台設定が最高にいい。
家族の微妙な機微を書くのはもともと得意な小路氏だけに、これだけの舞台が整えば面白くならない筈がありません。抜群の一冊でした。
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昭和の夏に一瞬吹く清涼な空気のようが雰囲気が感じられた。しかしストーリーには入り込めなかった。
昭和の名優が相次いで亡くなった。今は亡き長門裕之が痴呆を患い幼女の様に死んで行く南田洋子を支えるの姿が、ドキュメンタリーとして放映されていた。そのドキュメンタリーには苦しみ・悲しみと愛が映され、いつしか長門裕之と同化する自分がいた。
しかし本作では、誰しもがカメラを意識し、演技し、計算し、スマートな振る舞いしかしていない。登場人物の誰とも同化もできず共感も覚えなかった。
一郎、睦子、真理の過去を爆弾として仕込むことで家族の陰に仕立て言葉だけの恨みを述べるも、お互いを名優と持上げ、敬愛し合っている姿にドラマ性を感じない。はたして爆弾は上手く処理されたのか?みな不発弾だったのか?一郎、睦子、準一は設定に対し、若く書きすぎていないか?一郎は役に入り込むために人間関係を同じように築いたとある。映画は時間の進みの通り撮影されるわけでなく、時として役者でもストーリーの進みがわからなくなるほどにバラバラに撮影される。シーン毎のシチュエーションを理解しその場の人間関係を表現できて名優ではないのか?監督も親族かもの伏線はどこへ行った?
それとも期待し過ぎたのか?
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映画化を意識したのかなと思わせる作品でした。
とある家族が、ままの家族を演じる映画を取るという物語。
視点の切替わりはとても面白いが、全体としては内容がいまいち薄い。
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不思議な設定の小説です。
登場人物は五人。名優・笠松一郎、彼の最初の妻・四ノ宮睦子、二人の息子・園田準一、準一からみたら親子ほど年の離れた異母弟・岡本裕とその婚約者・二品真里。五人は全て非常に優れた役者です。
笠松は(多分)脳を患っており、普段はごく普通の生活が出来るのですが、突然見当識を失うことがあり、余命わずかです。笠松を主人公にした最後の映画を撮る為に、五人は笠松と睦子が新婚時代を過ごした古い日本家屋に集まります。
部屋に仕掛けられた固定カメラと、たった一人のカメラマン。与えられる脚本はごく簡単な、例えば「今日は買い物にでも行って見ませんか」といったもの。セリフは全てアドリブ。監督からは「それぞれが爆弾(発言)を準備しておいて、適切なタイミングで爆発させてください」という指示が出ている。
バラバラになった家族が、一つの家に住みながら演技なのか素なのか、ドキュメントともフィクションともつかぬ映画が撮られて行く。
もともと小説なんてフィクション。その中でドキュメントともフィクションともつかぬ話が進むのですから面白い。
小路さんが描こうとしたのは、一つの家族の世界やその繋がりなのかもしれませんが、奇抜なシチュエーションの下で行われる役者たちの虚々実々の駆け引きの面白さに引かれ、本筋が見えなくなってしまうのが欠点かもしれません。
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破天荒な私生活が故に家族は崩壊した名優・笠松市朗の最後の映画は、愛した家族の共演による『家族』の映画。各人が秘密にしていた真実の爆弾を抱えて撮影が始まる。現実と虚構が複雑に入り交じる家族小説。
本当の家族が映画の為に家族を演じるという設定が秀逸。ドキュメンタリーでもなくドラマでもなく、演じることが日常となる時間の経過が、とても貴重で美しく輝かしい。読み終えた後に深い余韻を残してくれる。