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秋田の隠れ里に暮らす「マタギ」を追った写真エッセー。
マタギとは、現在は職能集団ではないが、猟師として生きる人々のことだ。
熊、兎、鹿、川魚、キノコ類など山を狩猟採集して歩く。
動物を殺戮するのではなく命を頂くこと。山との共生の掟を守り先達から受け継いできたものを伝承していく集団。だからその時の猟に参加できなかった仲間にも、マタギ勘定として分け前を等分に渡す共生システムが存在する。
著者のカメラマンは、必死にマタギたちについて道なき道をいく。
仕留めた熊が大きすぎて沢で解体し肉を林道に留めたクルマまで複数回に分けて運ぶ。1日に山の中を40キロも歩く。
山は危険に満ちた場所だが、自称軟弱なカメラマン(そんなことはない。パワフルな方です)でさえ「なんと気分がよくなるところなんだろう」と心が広がるような場所でもある。
ほとんどが年配の男たちだ。
筆者が「師匠」と呼ぶ鍛冶屋さんはマタギの山刀「ナガサ」を作る。その銘は「又鬼山刀」だ。
なんともすばらしい機能的で美しい刀の姿に感動する。
これからマタギになる人はいないだろう。
消滅していく文化なのだけれど「矛盾なき労働と食文化」との副題がすべてを物語るように、自然界と人間との深いつながりがあったことを教えてくれる。
生きること、食べること、働くことが大いなる自然の循環の中で行われていた時代が失われていくことへの寂しい惜別の念が沸き起こる。
山の写真は美しい。
解体シーンの衝撃はけれど雪の上に載せえられた皮を剥いだ兎の筋肉の美しさに驚嘆。
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日本人は、自然を敬い恐れてきた。
決して自然を制服しようなどと考えず、その力をうまく利用し、折り合いをつけようとしてきた。
全てのものに人知の及ばない力を感じ、神として敬った。
おれは、日本人だな〜。
エコっていう言葉も、西洋っていうか、産業社会の文化なんだろぅ。
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タイトルから、マタギの話のマタギキ?とか、古老の伝聞を集めて論じたマタギ研究の書、と思って手にしたのですが、あにはからんや、秋田・阿仁地区に住む現役のマタギたちの猟や生活を、共に歩き・食べ・語り・撮ったカメラマンの16年間にわたる記録、フォトエッセイでした。
山とともに暮らすマタギの生活。彼らは熊を追うだけではありません。ウサギ、川魚、茸など、山からさまざまな恵みを頂いているのです。著者は現役マタギたちと猟や生活をともにし、一緒になって楽しみながら(これがよく、伝わってきます)、淡々と描いています。それだけに、これはいきいきとした、生の記録です。そして今後、ますます貴重になる、人の営みの記録です。
真冬、スコップだけで魚をとる「ジャガク」。試みること3度、4時間。獲たものは10cmほどのヤマメと小さなハヤ1尾ずつ。
そしてこのジャガクをできる人は62歳。伝えるべき人も、また、いない。今のマタギを知る象徴的な一文が、心に残ります。
無論、マタギの漁法や、熊の解体、ウサギ猟の仕方を知っても、多分、いまの田舎暮らしで役に立つことはないでしょうが…。デモね、この歳になってもなお、知らなかったことと、頁を繰るごとに次々と出会えるうれしさは格別です。
(H)
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今年読んだノンフィクションでベスト級の一冊。東北の山奥のマタギの村を14年間に渡って取材した著者によるルポルタージュだ。上段に構えず、ただマタギたちと歩いた経験をつづった筆致からは、失われていくマタギという人々への哀悼の念が透けて見え、エコや自然保護といった浅薄なものを越えて胸に迫る。掲載された写真も素晴しい。オススメです。
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週間ブックレビューで紹介されていて読んだみたいなと思い、購入しました。
マタギといえば、銃ひとつで熊と格闘する老人というイメージしかなかったのですが、この本で紹介されているマタギは良い意味でそんな私の先入観を裏切るものでした。勿論、熊は未だに獲るようですが、大地からの恵みとして畏敬の念を持って熊と接し、仕留めた後は、肉も、骨も、皮も全てを捨てることなく十分に活用する姿があったのです。
話しは変わりますが、欧米の環境保護団体はこういった昔ながらの生活に根ざした狩猟(イルカ漁や捕鯨など)に対し、単に、知能が高い生物の捕獲というだけで攻撃的な態度をとりますが、もう少し彼らの生活の背景、歴史について学んでほしいと思いました。
話しを戻しますが、マタギは熊以外にも、兎を獲ったり、山菜をとったりしていることに驚かされました。彼らは自然の恵みを十分に生かして生活しているのですね。ただ、彼らも、狩猟だけでは生活ができないので、最近はもっぱら兼業で生計を立てているとのこと。そして、今後、マタギの後継者がどんどん減っていくことなど、彼らを取り巻く環境は必ずしも明るいものではないようです。
豊富で貴重な写真の数々に触れ、一度、秋田県阿仁町に行ってみたくなりました。
読書期間: 2009.10.13~10.19
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マタギ集落に通ったカメラマンの記録。 生業としてのマタギはすでに存在せず、現代のマダギは仕事の休みをとって山に入り、ジムニーを駆って林道を進む。 そこには何の気負いもない。 漁法として毒薬流そうが発破かけようが川には魚が溢れていたが護岸工事をしたとたんいなくなった。
熊の解体過程の写真が印象的。
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気負わない田中さんの視点がよい。
現代のマタギの生き様が、よくわかり
感心した。
生まれ変わるなら、マタギになりたい。
山とともに生きる人々。
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秋田の山猟師、マタギについて書かれた本です。
内容としては、そんなに難しいことは書かれていないし、カラー写真を掲載しているので狩り部員と言わず興味があるなら幅広い年代の方でもすらすら読めます。
マタギは人でありながら山に民でもあります。著者は彼らを取材しながら、少子高齢化で跡取りを悩み、また同じマタギとしての道を歩む若者が少ないことを心配する彼らの姿に次第に焦点を置いてきています。
とにかく読んでみてください!
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シャトゥーンというヒグマパニック本があまりに怖かったので、
「マタギ!勇敢なる戦士よ、我らを守りたまえ!」
という気持ちで手に取った。
自分のマタギ観は全てが間違っていたことを学んだ。
ただ、真実の姿を知ってもマタギに対しての敬意は無くならなかった。
独自の慣習や文化があると思うのだが、それはまた別の著書を探すことにする。
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熊の皮を剥いだ生々しい写真が載ってる。著者の独善的な考え方にはあまり共感できなかったけど写真は良かった。
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すばらしい良書だった。
マタギとともに、息を切らしながら猟について廻り、「けぼかい」を見て、ともに飲む。
ともに行動することでマタギという人たちの姿を映しだそうという、この写真家さんの試みは完全に成功している、と思う。
マタギについての研究書も、マタギの人から聞き書きなんかもそこそこあるけど、どうにも読みにくくて、手に取りにくかったが、この本は読みやすくて、よくわかり、しかもおもしろかった。
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以前から、マタギには関心を持っていました。いわゆる[絶滅危惧」と呼ばれる方々、、です。ですが、北東北で生きていく人間にとって、その精神は相通ずるというか、そのもの、という気がしていました。呼んで、一層、その感を強くしました。
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文化の継承という意味で、こうした書物は貴重。
狩猟の後継者がいなくなった後は、自然との共生は後世にどう伝えていけばよいのだろうか。
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まず,タイトルで心が惹かれます。矛盾少なく生きることの大切さ,そしてその難しさ。読み終わった後に「ふぅ~~」と深いため息つきたくなる良著でした。「マタギ」という言葉は恐らく有名であるのに,「マタギ=狩猟民族」以上のことをほとんどの人が知らない。この本は「生き方」というアプローチからマタギを見てみようとした筆者による,マタギの本です。素敵なエッセンスがある本です。
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マタギの生活、というか主に猟に付いていった話、自然の恵みは素晴らしい、みたいな話ばかり。ちょっと不満だった。でも熊や兎の解体風景は普段見ることもなく、それに吸い込まれてなんとか最後まで読んでみると、山言葉や禁忌の話が出てきた。が、その部分でのアプローチに疑問があり、それだけでマタギは語れない、というものだった。学術的興味はない、一緒に山に入って楽しみたいのだ、と。たしかに本書もそういう内容。学術を勝手に期待した自分が悪いのか。
それで、もう一回読み直せば、確かに自然の恵みをいただく暮らしの紹介。タイトルの「マタギ」だけみると誤解するかもしれないが「矛盾なき労働と食文化」は、確かに内容を語っている。